- はじめに
- Chapter1 体育授業の「言い換え」4つのポイント
- POINT01 言い換えの目的を明確にする
- POINT02 言い換えの分類を理解する
- POINT03 子どもの現状を見取り,仮説を立てる
- POINT04 仮説を基に,適切な指導や支援を探る
- Chapter2 目的別 体育授業の「言い換え」事例60
- Part1 伝わりやすくする言い換え
- CASE01 子どもが「課題」を見付けるときに
- 「自分の課題は何?」⇒「うまくいかなかったことは何?」
- CASE02 素早く集合させたいときに
- 「集合〜!」⇒「はい! では…5カウント以内に集合します! 5・4・3…」
- CASE03 説明を伝わりやすくしたいときに
- 「説明を始めます」⇒「1分で説明を終えます」
- CASE04 ゲームのルールを分かりやすく説明したいときに
- 「アルティメットは,パスだけでボールをつなぐゲームです」⇒「アルティメットは,3年生でやったポートボールのようなゲームです」
- CASE05 途切れかけている集中力をもう1度高めたいときに
- 「マットは必ず1人ずつ使いましょう」⇒「ここからが大事な話です。マットは必ず1人ずつ使いましょう」
- CASE06 安全に関するルールを徹底させたいときに
- 「ぶつからないように離れてね」⇒「腕1本分離れてね」
- Part2 安心感を生み出す言い換え
- CASE07 授業開きで関わりを増やしたいときに
- 「毎回違う人とグループをつくりましょう」⇒「できるだけ,たくさんの人と組めるといいね」
- CASE08 初めての技に挑戦をするときに
- 「どんどんやりましょう!」⇒「まずは見ているだけでもいいよ」
- CASE09 失敗を恐れずのびのびとプレーしてほしいときに
- 「シュートをたくさん入れよう!」⇒「シュートをたくさん外そう!」
- CASE10 みんなで楽しむ意識をつくり上げたいときに
- 「チームで勝ちを目指そう!」⇒「シュートを打つ面白さを味わおう!」
- CASE11 恐怖心を軽減したいときに
- 「勇気を出してやってみよう!」⇒「どれを使いますか?」
- CASE12 意見を言い合えるようにしたいときに
- 「いいと思ったことを書いていこう」⇒「否定せずにすべて書きましょう」
- Part3 信頼関係を築く言い換え
- CASE13 子どもが暴言を吐いたときに
- 「うざいと言ってはいけません」⇒「うざいって言いたくなるほど,悔しかったんだね」
- CASE14 子どもが遅れて外に出て来たときに
- 「遅いです。なぜ遅れたのですか?」⇒「遅かったね。何かあった?」
- CASE15 理由をつけて見学ばかりする子がいるときに
- 「このままだと△になってしまいますよ」⇒「着替えるだけでもいいよ」
- CASE16 子どもがけがをしたときに
- 「痛くない! 大丈夫!」⇒「痛かったね」
- CASE17 自分のことを見てくれていると感じてもらいたいときに
- 「みんなよく頑張っていたね!」⇒「○○さん,ボールをもらうときの動きがよくなったね!」
- CASE18 必要以上に叱ってしまったときに
- 「ちょっと強めに言ったけど,君のためだからね」⇒「あんな言い方しなくてよかったよね。ごめんね」
- Part4 やる気を高める言い換え
- CASE19 授業の始まりを早くしたいときに
- 「チャイムが鳴り終わるまでに整列しなさい」⇒「チャイムが鳴り終わるまでに整列するのは難しいよね?」
- CASE20 子どもがチームの目標を設定するときに
- 「自分たちで目標タイムを決めましょう」⇒「前に担任した5年生は○秒で走っていましたよ」
- CASE21 できていないところを伝えるときに
- 「最後の手で押すことができていないね」⇒「真っ直ぐ回れているね! いいぞ! あとは最後の手で押すだけ!」
- CASE22 子どもが技を成功させたときに
- 「次は○○をしよう!」⇒「やったね! ○○さんが頑張ったからだね」
- CASE23 お手本を見せるときに
- 「上手な○○さんにやってもらいます」⇒「今できるようになった△△さんにお手本をしてもらいます」
- CASE24 保健領域の学習をするときに
- 「今日はこのページを学習します」⇒「3時間で終えるように進めていきましょう」
- Part5 できるようになる言い換え
- CASE25 回転スピードを高めたいときに
- 「勢いをつけよう」⇒「どっちが速く回れるかな?」
- CASE26 歩数が合わせられないときに
- 「バーから遠い足で跳ぶことを意識しよう」⇒「「1・2・123」でいこう!」
- CASE27 かがみ跳びの姿勢を指導するときに
- 「足を前に振り出そう!」⇒「足の裏が見えるかな?」
- CASE28 け伸びの姿勢を指導するときに
- 「できるだけ長く伸びよう!」⇒「ミサイルが飛ぶみたいに伸びよう!」
- CASE29 踏み切る力が弱いときに
- 「足の裏で強く踏み切ろう!」⇒「パン!という音を出しましょう」
- CASE30 投げる力が弱い子がいるときに
- 「線の手前に左足を置いて半身で投げてみよう」⇒「片足は線を超えて投げてみよう」
- Part6 思考力を高める言い換え
- CASE31 正しく課題を選ばせたいときに
- 「自分の課題を選びましょう」⇒「グループで課題を確認しましょう」
- CASE32 課題の解決の方法を選ぶときに
- 「解決方法を考えましょう」⇒「解決方法を選びましょう」
- CASE33 知識と思考を結び付けたいときに
- 「何度も練習をしよう!」⇒「ポイントは何でしたか?」
- CASE34 保健領域で子どもの思考を見取りたいときに
- 「テストをします」⇒「パフォーマンス課題に取り組みます」
- CASE35 学習方法を工夫させたいときに@
- 「タブレットで自分の動画を観ましょう」⇒「どの学習方法を使いますか?」
- CASE36 学習方法を工夫させたいときにA
- 「分かったことを書きましょう」⇒「学習内容と学習方法の振り返りをしましょう」
- Part7 戦術を深める言い換え
- CASE37 ゲームの戦術を深めたいときに@
- 「練習して上手なパスができるようにしよう!」⇒「ゲームをしよう!」
- CASE38 ゲームの戦術を深めたいときにA
- 「高学年なんだから,公式のバレーボールをやろう」⇒「キャッチバレーをしよう」
- CASE39 ゲームの戦術を深めたいときにB
- 「必ず3球目で返球をしましょう」⇒「3回以内に返球をしましょう」
- CASE40 ゲームの戦術を深めたいときにC
- 「ゴールの横に行ってパスをもらいましょう」⇒「どこでパスをもらえばシュートがしやすいですか?」
- CASE41 ゲームの戦術を深めたいときにD
- 「ゲームをやった後に考えを書きましょう」⇒「やる前の予想はどうですか?」
- CASE42 ゲームの戦術を深めたいときにE
- 「ルールは絶対です」⇒「困ったことはありますか?」
- Part8 態度を育てる言い換え
- CASE43 いつもふざけている子がまじめにやっているときに
- 「お! 今日は真剣にやっているね!」⇒「○○さんは真剣にやれる人だね!」
- CASE44 役割を果たす力を高めたいときに
- 「一人一人がしっかり準備をしましょう」⇒「○番〜○番は,5段の跳び箱を準備します」
- CASE45 お手伝いを積極的にしてほしいときに
- 「お互いに補助をし合おう!」⇒「お節介をしよう」
- CASE46 ルールを守る態度を育てたいときに
- 「ルールを守りましょう」⇒「ルールを守るとみんなが楽しく安全に運動ができます」
- CASE47 保健領域で援助要請の力を高めたいときに
- 「困ったらどんどん人に聞きましょう」⇒「今の方法とペースで間に合いそうですか?」
- CASE48 仲間のミスを責める子がいるときに
- 「頑張ったんだから,そういうこと言わないの」⇒「仲間がミスをしたときに,どうしますか?」
- Part9 価値を広げる言い換え
- CASE49 自己の体格や運動能力に合った記録に挑戦するときに
- 「5年生は○○くらいを目指そう」⇒「自分の目標記録を目指そう」
- CASE50 技能差がある中で競走をするときに
- 「一生懸命走って1位を目指しましょう」⇒「順位によって,スタートの位置を変えます」
- CASE51 マットの多様な楽しみ方を感じさせたいときに
- 「できる技を増やしていこう!」⇒「どう進化できるかな?」
- CASE52 なわとびの多様な楽しみ方を感じさせたいときに
- 「8の字跳びでできるだけ長く跳ぼう!」⇒「長なわで遊ぼう!」
- CASE53 勝ち負けにこだわる子がいるときに
- 「勝つことばかりにこだわらないでね」⇒「勝つこと以外の楽しさは何ですか?」
- CASE54 ゲームで大差がついているときに
- 「次は頑張ろう!」⇒「どのアイテムを使いますか?」
- Part10 不適切な行動を減らす言い換え
- CASE55 興奮状態になっている子がいるときに
- 「みんなに迷惑がかかるから,落ち着こう」⇒「話ができるようになるまでここにいよう。いつでも戻っておいで」
- CASE56 暴力行為をしてしまう子がいるときに
- 「暴力はいけません。約束です」⇒「叩きたくなったらマットを叩こう」
- CASE57 体育館から逃げ出した子がいるときに
- 「待ちなさい!」⇒「落ち着いたら戻っておいでよ!」
- CASE58 自分勝手な行動を始めたときに
- 「○○さん,しっかりやりましょう」⇒「△△さんがしっかり話をきいていて,話がしやすいな」
- CASE59 友達の運動をばかにする子がいるときに
- 「やめなさい!!」⇒「言われた相手は悲しい気持ちになるし,先生も聞いていてつらいな」
- CASE60 複数の子どもが自分勝手な行動をするときに
- 「やりたくないなら,やらなくていいですよ」⇒「どっちが早くできるかな?」
- おわりに
- 参考文献一覧
はじめに
「ルールを説明したはずなのに,理解していない子どもが多い」「励ましたいのに,うまく言葉が出てこない」「叱った後に,あれでよかったのかと悩む」「言っていることは合っているのに,なぜか上達しないことが多い」
こんな経験は,どの先生にもあるのではないでしょうか。授業はすべて言葉でできています。「説明」「指示」「発問」「ほめる」「叱る」「励ます」など,言葉を使う場面を挙げれば,授業のほぼすべてと言っても過言ではありません。言葉について考えることは,授業そのものを考えることにつながります。
本書の趣旨である言い換えとは,その名の通り言葉を換えることです。しかし,ただ言葉を置き換えるだけでは意味がありません。書店には,さまざまな“言い換え本”が並んでいますが,目的を意識せずに“フレーズだけ”を追いかけても,その場しのぎにしかならないからです。このため,私はまず「何のために言い換えるのか」という目的から考え始めました。
私が言い換えをする究極の目的は,子どもに“昨日よりちょっとだけ体育を好きになってもらう”ことです。
「クラス全員を体育好きにする」など大それたことは考えていません。私一人の力で体育嫌いを好きにできるとも思いません。強い理想は,時に教師を焦らせ,子どもを追い詰めてしまうこともあります。
それでも,私は体育の授業が好きです。だからこそ,力を抜いて,まずは昨日より少しだけ体育を好きになってほしい―そのために言葉にこだわり,授業にこだわりたいのです。これは本書全体を貫く,私の根っこにある思いです。
例えば,昨日まで見学の多かった子が,今日は1度だけコートに入ってみたり,苦手な運動で失敗した後に「もう1回やってみる」と小さくつぶやいたりする。そんな一瞬に立ち会うたび,私たち教師のたった一言が,子どもの背中をそっと押すことがあるのだと実感します。
Chapter1では,言い換えのポイントを示しました。先の目的を実際の授業に落とし込むための具体的な10個の目的や,言い換えで気を付けることを説明しています。読むことで,「どんな目的でどのように言葉を換えていくべきか」が明確になるはずです。
Chapter2では,目的別に場面を設定し,NG例とOK例を示しました。NG例は「どう見てもNG」ではなく,「よさそうに見えるけれど実はNG」「やりがちだけれど実はNG」といった“実は…”をくすぐる内容にしています。OK例には,言い換えの目的がしっかり詰まっています。同じ授業が別の章に登場することもありますが,目的別に章立てを行うことで,読者の方が自身の授業の困り感と照らし合わせやすい構成にしました。
このような構成上,最初から通して読んでもらっても,気になるところから拾い読みしてもらっても問題ありません。読み終える頃には,明日の授業で子どもにかける最初の一言が,少しだけ楽しみになっているはずです。
本書が体育授業で悩むたくさんの先生方の手に届き,少しでも役に立てることを願っております。
2026年3月 /中原 修平
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明治図書

















