- まえがき
- T 21 世紀型社会科の新しい基礎・基本
- ―社会形成力を育てるために―
- 1 社会的要請と学習指導要領の内容
- 2 「社会が分かる」ことを目指す社会科の役割
- 3 社会の変化と新しい教育課題
- 4 新しい教育課題の社会的背景は何か
- (1) 金融教育
- (2) 法教育
- (3) キャリア教育
- (4) 起業家教育
- (5) 食育(食に関する指導)
- (6) 伝統・文化教育
- (7) 防災教育
- U 21 世紀の教育課題をひも解く教材と人材の開発
- 1 新しい教育課題をひも解くキーワード
- 2 教材開発・人材開発の視点
- (1) 法や司法に関する教育
- (2) 経済・金融に関する教育
- (3) キャリアに関する教育
- (4) 食に関する教育
- (5) 日本の伝統・文化に関する教育
- (6) 年金(社会保障)に関する教育
- V 教育課題に対応したモデル
- §1 「法や司法」に関する教育
- 1 「法や司法」に関する教育の考え方
- 2 小・中学校を視野に入れたカリキュラム開発
- 3 単元「法律や裁判について考えよう」(6年)のモデル指導案
- (1) 単元の目標
- (2) 教材の解釈
- (3) 単元計画の考え方
- (4) 指導計画
- (5) 毎時の指導案
- (6) 模擬裁判シナリオの作成について
- (7) 本プランを実践して
- 4 単元「私たちの生活と環境」(5年)のモデル指導案
- (1) 目標
- (2) 教材の解釈
- (3) 指導計画の考え方
- (4) 指導計画(全7時間)
- (5) 毎時の指導案
- (6) 本プランを実践して
- §2 「経済・金融」に関する教育
- 1 「経済・金融」に関する教育の考え方
- 2 小・中学校を視野に入れたカリキュラム開発
- 3 単元「商店街の人気の秘密」(4 年)のモデル指導案
- (1) 目標
- (2) 教材の解釈
- (3) 指導計画の考え方
- (4) 指導計画
- (5) 毎時の指導案
- (6) 本プランを実践して
- 4 単元「私たちの生活とお金」(6年)のモデル指導案
- (1) 単元の目標
- (2) 教材の解釈
- (3) 単元計画の考え方
- (4) 指導計画
- (5) 毎時の指導案
- (6) 本プランを実践して
- §3 「キャリア」に関する教育
- 1 「キャリア」に関する教育の考え方
- 2 小・中学校を視野に入れたカリキュラム開発
- 3 単元「わたしたちの町のしごと人」(3年)のモデル指導案
- (1) 目標
- (2) 教材の解釈
- (3) 指導計画の考え方
- (4) 指導計画
- (5) 毎時の指導案
- (6) 本プランを実践して
- 4 単元「世の中の仕事と自分の将来の仕事」(6年)のモデル指導案
- (1) 目標
- (2) 教材の解釈
- (3) 指導計画の考え方
- (4) 指導計画
- (5) 毎時の指導案
- (6) 本プランを実践して
- §4 「日本の伝統・文化」に関する教育
- 1 「日本の伝統・文化」に関する教育の考え方
- 2 小学校社会科における「日本の伝統・文化に関する教育」のカリキュラム構成 129
- 3 単元「地域の行事に参加してみよう」(3年)のモデル指導案
- (1) 目標
- (2) 教材の解釈
- (3) 指導計画の考え方
- (4) 指導計画
- (5) 毎時の指導案
- §5 「食育」に関する教育
- 1 「食育」に関する教育の考え方
- 2 小学校社会科における「食育」のカリキュラム構成
- 3 単元「野菜をつくる農家の仕事」(3年)のモデル指導案
- (1) 目標
- (2) 教材の解釈
- (3) 指導計画の考え方
- (4) 指導計画(10 時間)
- (5) 毎時の指導案
- §6 「年金(社会保障)」に関する教育
- 1 「年金(社会保障)」に関する教育の考え方
- 2 社会保障制度の概要について
- 3 小学校社会科における「年金(社会保障)」に関する教育
- 4 単元「年金について考えよう」(6年)のモデル指導案
- (1) 目標
- (2) 教材の解釈
- (3) 指導計画の考え方
- (4) 指導計画
- (5) 毎時の指導案
- 5 単元「私たちのくらしを守る日本国憲法」(6年)のモデル指導案
- (1) 目標
- (2) 教材の解釈
- (3) 単元計画の考え方
- (4) 指導計画(8時間扱い)
- (5) 毎時の指導案
- あとがき
まえがき
子どもの学力議論が盛んに展開されている。ところが,「学力とは何か」といった基本的な部分の共通認識がないままに,学力向上の取り組みがなされていることに違和感をもつ。またそれは「基礎・基本」のとらえ方と一体になっているように思われる。基礎・基本の内容は一般に狭義と広義の観点から説明することができるが,現実には狭い意味の基礎・基本に関心が集中し,広くとらえることが欠落しているのではないかと感じる。
また,基礎・基本はとりわけ社会科において,「不易と流行」の観点から整理することができる。社会が変化しても変わらない基礎・基本と,社会が変化するとそれに伴って必要となる基礎・基本がある。なぜならば,社会科は社会を対象にして学ぶという教科の特質をもっているからである。その社会はつねに変化しており,その変化にともなって,社会科の学習内容や教材も変わらなければならない。本書では後者を「新しい基礎・基本」と名づけた。
いま社会は,少子高齢社会が進行し,自由化と規制緩和,地方分権などのキーワードのもとに,政治,経済,社会,生活などあらゆる分野において改革が加速している。それに伴って,国民の意識改革,適切な選択と判断と自己責任が問われる。これからは誰でもこうした新しい社会を生きていかなければならない。将来の社会人を育てる学校においても,こうした新しい時代や課題に対応した教育が求められている。例えば,金融教育,法教育,キャリア教育,起業家教育,食育(食に関する指導),伝統・文化教育,防災教育などである。このほかにも,消費者問題や社会保障などの課題に対応した教育が提起されている。これらの教育課題は全教育活動をとおして推進されるが,主として扱われる教科は社会科である。その意味で,本書ではこれらの教育課題をとおして学ぶことを「21世紀型の新しい基礎・基本」と名づけた。
本書では,社会科授業において「法や司法」「経済・金融教育」「キャリア教育」「日本の伝統・文化」などについて,それぞれ指導のためのモデルプランが提案されている。それぞれの課題について,小学校社会科において実践する際の考え方や,ヒントを「モデル授業」として提案している。
現行の学習指導要領の内容に十分位置づかない教育課題については,社会科の発展的な学習として,また総合的な学習の時間を活用して実践することが考えられる。その際,小学校段階における学習内容の設定,子どもがそれを学ぶための教材の開発,学習活動の構成,さらには中学校の特に公民的分野との関連などが実践上の課題になる。
本書が,21世紀を生きる子どもたちの教育のために些かでも参考になればこれ以上の喜びはない。
最後に,本書の刊行に当たっては,明治図書出版の樋口雅子氏から貴重なご指導をいただいた。この場を借りてお礼申しあげたい。
2006年8月 /北 俊夫 /廣島 憲一郎
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- 明治図書