新授業づくり選書6
中学校社会科の新絶対評価問題

新授業づくり選書6中学校社会科の新絶対評価問題

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一筋縄ではいかない絶対評価用のテスト具体的に提案。

絶対評価への転換は評価基準に基づく評価問題の作成を求めている。本書は中学校社会科での評価問題づくりの方法と問題例を網羅した現在目を通しておきたい大切な1冊。


復刊時予価: 2,332円(税込)

送料・代引手数料無料

電子書籍版: なし

ISBN:
4-18-464117-2
ジャンル:
社会
刊行:
2刷
対象:
中学校
仕様:
B5判 128頁
状態:
絶版
出荷:
復刊次第

目次

もくじの詳細表示

まえがき
1章 絶対評価用のテスト問題作成のポイントと基礎作業
1 平均点,100点満点からの脱却
2 BとC,AとBを見分けるテスト問題
3 指導目標の明確化と評価基準の設定
4 単元の特質を踏まえた指導目標,評価基準の設定
2章 地理的分野の新絶対評価問題
第1節 「世界と日本の地域構成」の絶対評価
1 本単元の評価規準の設定と評価計画
2 本単元の絶対評価テスト問題
3 ペーパーテスト法以外による本単元の評価
第2節 「地域の規模に応じた調査」の絶対評価
1 本単元の評価規準の設定と評価計画
2 本単元の絶対評価テスト問題
3 ペーパーテスト法以外の本単元の評価
第3節 「世界と比べて見た日本」の絶対評価
1 本単元の評価規準の設定と評価計画
2 本単元の絶対評価テスト問題
3 ペーパーテスト法以外による本単元の評価
3章 歴史的分野の新絶対評価問題
第1節 「古代までの日本」の絶対評価
1 本単元の評価規準の設定と評価計画
2 本単元の絶対評価テスト問題
3 ペーパーテスト法以外による本単元の評価
第2節 「中世の日本」の絶対評価
1 本単元の評価規準の設定と評価計画
2 本単元の絶対評価テスト問題
第3節 「近世の日本」の絶対評価
1 本単元の評価規準の設定と評価計画
2 本単元の絶対評価テスト問題
3 ペーパーテスト法以外の本単元の評価
第4節 「近現代の日本と世界」の絶対評価
1 本単元の評価規準の設定と評価計画
2 本単元の絶対評価テスト問題
3 ペーパーテスト法以外による本単元の評価
4章 公民的分野の新絶対評価問題
第1節 「現代社会と私たちの生活」の絶対評価
1 本単元の評価規準の設定と評価計画
2 本単元の絶対評価テスト問題
3 ペーパーテスト法以外による本単元の評価
第2節 「国民生活と経済」の絶対評価
1 本単元の評価規準の設定と評価計画
2 本単元の絶対評価テスト問題
3 ペーパーテスト法以外による本単元の評価
第3節 「地方の政治」の絶対評価
1 本単元の評価規準の設定と評価計画
2 本単元の絶対評価テスト問題
3 ペーパーテスト法以外による本単元の評価

まえがき

 相対評価と絶対評価とではA〜C,5〜1の記号,数値の意味する内容が,大きく異なっている。しかし,現状では,A〜C,5〜1といった評価を導き出す過程が相対評価的になっているなど,この差異をあまり考慮しないままの不慣れな絶対評価の運用がめだつ。すなわち,かたちの上では目標の実現をめざして学習指導を展開し,評価規準を意識しながら評価する手続きをとっているものの,内実は,この生徒はよくできた,それに比べてこの生徒は…などというように,よくできる子を中心に序列化したり,平均点以上かどうかなどを見分けて,それに基づいて目標の達成状況を判断するような評価になっている。そして,それだからこそ,評価基準の設定が不明確であるにもかかわらずA〜C,5〜1の評価をすることができたり,逆に,A〜C,5〜1の記号,数値によって評価はできても,生徒や保護者にどんな能力がどの程度身に付いているかを説明することに悪戦苦闘したりするなどいった現象がみられるのである。

 それは,また,単元の終了時や中間,期末テスト問題をみると,一層よくわかる。すなわち,多くが100点満点で問題を作り,採点結果を合計して平均点を出す。そして,どの問題が解けてどの問題が解けなかったかなどといった各問ごとの解答状況よりも,各生徒が100点満点で何点とれたかの合計点を重視し,それに基づいてA〜C,5〜1の評価をしている。実は,そうした処理の仕方などはいずれも相対評価用のNRT(集団準拠テスト)の考え方によるものであり,絶対評価用のCRT(目標準拠テスト)に立脚したテストになっていないといえる。

 テストをめぐる問題点はそうした処理の仕方のレベルにととまらず,むしろテストに出題される問題そのものをみると,より一層深刻であることがわかってくる。すなわち,単元の終了時や中間,期末テストに出題されている問題をみると,まだまだ知識を問う問題が多く,このためテストからは,観点別でみると「知識・理解」に関する能力の評価資料しか得られない状態となっている。それだけに,目標に準拠する絶対評価では,作問技術の向上を図り,“覚えていないと解けない,覚えているだけで解ける問題”から,“覚えているだけでは解けない問題”への転換を図るなどの工夫改善が必要となっている。

 もちろん,テスト法だけに依存する必要はなく,むしろ他の評価方法を取り入れ,適切に組み合わせて運用するよう工夫,努力することが大切である。しかし,それだからといってテスト法が「知識・理解」専用にとどまることには,テストの位置付け,役割などを考慮すると,問題があり,テスト改革が必要不可欠であるといえよう。

 このように考えると,絶対評価においては,NRTからCRTへの転換を図るとともに,この機会を生かしてテスト問題づくりも見直し,作問技術の研修,向上を図ってテスト改革を推進していく必要があるといえよう。今,実践段階は,評価規準づくりから,それを実際に運用しつつより望ましい絶対評価を行っていくための工夫改善を検討する段階に入っている。それだけに,今こそ創意工夫し,先生方の英知を結集してこの課題解決に正面から取り組むことが期待,要請されている。

 本書はそうした現状に鑑み,指導目標,評価規準・評価基準の設定を踏まえつつ特に難題になっているテスト問題に焦点をあてて,具体例を提示したものである。絶対評価用のテスト問題の作成に当たっては,その前提条件として評価規準を見直し,評価基準の設定を試みる必要がある。そのためには指導目標を見直し,その一層の具体化,明確化を図る必要がある。また,同時に,目標,評価基準を適切に反映することを可能とするペーパーテストの作問技術を開発し,身に付けることも必要である。さらに,そのためには,そもそも古い学力観から新しい学力観,生きる力へと,学力観そのものを転換する必要がある。古い学力観に立って知識を過度に重視し,知識偏重の学習指導を展開していたら,テストが知識を問う問題のオンパレードになるのは当然のことだからである。

 このように考えると,絶対評価用のテスト問題づくりは一朝一夕にはいかない課題であることがわかる。それだからこそ,現段階で例示をすることの意味があり,本書の例示を手がかりにして絶対評価用のテスト問題の手続きや作問の工夫改善などについて検討し,より望ましい絶対評価の運用に工夫,努力することが望まれる。なお,本書は『中学校社会科の絶対評価規準づくり』『中学校社会科絶対評価の方法と実際』の姉妹編に位置付くものである。したがって,執筆者も重なっており,合わせて読み,活用していただければ幸いである。

 最後になりましたが,多忙な中で難しい要請に果敢に挑戦し,例示に工夫,努力してくださった執筆者の先生方に感謝申し上げます。また,本書の刊行にご尽力いただいた明治図書の安藤征宏氏をはじめ編集部の関係者の皆様に深甚の謝意を申し上げます。


  2003年8月   編者 /澁澤 文隆

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      明治図書

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