- まえがき
- 第一部 社会科教育学の学問研究
- §1 社会科教育学論・研究方法論 /森分 孝治
- 1 学問論・方法論研究
- 2 社会科教育学構想論
- 3 社会科教育研究の科学化
- 4 社会科教育学研究方法論
- §2 社会科教育学の歴史 /市川 博
- 1 社会科の成立と学会の設立
- 2 社会科教育研究の「学」としての樹立
- 3 社会科教育学樹立への課題
- 第二部 社会科教育の研究
- §1 社会科教育の本質と原理の研究
- 1 わが国の社会科の本質・原理の研究
- (1) 本質論研究 /谷本 美彦
- (2) 原理論研究 /小原 友行
- 2 外国の社会科の本質・原理研究 /梅津 正美
- (1) 考察の視点と分析枠組み
- (2) 本質主義社会科の理論分析研究の展開
- (3) 実用主義社会科の理論分析研究の展開
- (4) 理論分析の反省研究の展開
- (5) 外国の社会科の本質・原理研究の課題
- §2 社会科カリキュラムの研究
- 1 わが国の社会科に基づいたカリキュラム研究
- (1) 社会科カリキュラム理論研究 /臼井 嘉一
- (2) 社会科カリキュラム構成研究 /木村 博一
- 2 外国の社会科に基づいたカリキュラム研究 /金子 邦秀
- (1) 外国の社会科カリキュラム研究の意義
- (2) 外国の社会科カリキュラム開発史(成立史)研究
- (3) 外国の社会科カリキュラム理論(原理)研究
- (4) 外国の社会科カリキュラム構成研究
- (5) 外国の社会科カリキュラム研究の課題
- §3 社会科学習指導の研究
- 1 わが国の社会科に基づいた学習指導研究
- (1) 社会科授業理論研究 /岩田 一彦
- (2) 社会科指導法研究 /中村 哲
- 2 外国の社会科に基づいた学習指導研究 /藤田 詠司
- (1) はじめに
- (2) 探究型社会科の論理
- (3) 探究型社会科の心理
- (4) 探究の諸類型
- (5) 市民的資質育成型社会科の論理
- (6) 市民的資質育成型社会科の心理
- (7) おわりに
- §4 社会科授業の研究 /今谷 順重
- 1 社会科授業研究および授業実践の科学化
- 2 社会科授業研究をめぐる論争点
- 3 社会科授業開発および授業分析の類型
- §5 社会科授業開発の研究 /原田 智仁
- 1 授業開発の概念と分析枠
- 2 体系的授業開発研究
- 3 授業開発の理論づくり研究
- 4 授業開発の事実づくり研究
- 5 授業開発の理論分析研究
- 6 授業開発の事実分析研究
- §6 社会科教科書の研究 /寺尾 健夫
- 1 教科書研究の分類
- 2 カリキュラムレベルの教科書研究
- 3 授業構成レベルの教科書研究
- 4 思考過程や認知構造レベルの教科書研究
- 5 教科書研究の課題
- §7 社会科の学力と評価の研究 /宮本 光雄
- 1 はじめに
- 2 社会科の学力論・学力観の研究
- 3 社会科の学力論・学力観の変遷の研究
- 4 諸外国の社会科の学力観の研究
- 5 「新しい学力観」と評価観の研究
- 6 諸外国の社会科の評価の研究
- 7 社会科の評価目標と評価方法の研究
- 8 社会科の評価とテスト問題作成の研究
- 9 おわりに
- §8 社会的認識・態度の発達,形成の調査研究 /有馬 毅一郎
- 1 社会的認識・態度の発達,形成の調査研究とは
- 2 心理学研究としての「調査研究」
- 3 教科教育学研究としての「調査研究」
- 4 発達・形成に関する調査研究の課題
- §9 社会科教師とその教員養成の研究 /松尾 正幸
- 1 良き社会科教師像の探求
- 2 良き社会科教師養成の探求
- 3 社会科教員養成研究の課題と展望
- 第三部 地理教育の研究
- §1 地理教育理論の研究
- 1 わが国の地理教育の理論研究 /草原 和博 /永田 忠道
- (1) 地理教育の理論研究とは何か
- (2) 応用諸科学研究としての理論研究
- (3) 教科教育学研究としての理論研究
- (4) 地理教育理論研究の課題
- 2 外国の地理教育の理論研究 /児玉 修
- (1) 外国地理教育研究の目的と方法
- (2) 地理教育理論の内部組成研究
- (3) 地理教育理論の比較対照研究
- (4) 地理教育理論の形成過程研究
- (5) 現実内在的方法による研究
- (6) 外国地理教育の理論研究の課題
- §2 地理授業の研究 /武元 茂人
- 1 狭義の地理教育の授業
- 2 広義の地理教育の授業
- 3 地理授業の研究の課題
- §3 地理学習指導の研究 /高山 芳治
- 1 はじめに
- 2 教育内容に関する研究
- 3 教材・教具に関する研究
- 4 地理意識研究
- 5 地理指導方法に関する研究
- 第四部 歴史教育の研究
- §1 歴史教育理論の研究
- 1 わが国の歴史教育理論の研究 /溝口 和宏
- (1) 歴史教育理論の研究について論じること
- (2) わが国における歴史教育理論研究の特質
- (3) 応用科学研究としての歴史教育研究
- (4) 教科教育学研究としての歴史教育研究
- (5) 課題と展望
- 2 外国の歴史教育理論の研究
- (1) アメリカの歴史教育理論の研究 /戸田 善治
- (2) 諸外国の歴史教育理論の研究 /岩永 健司
- §2 小学校歴史教育の研究 /加藤 寿朗
- 1 はじめに―分析の視点―
- 2 授業構成研究の実際
- 3 評価研究,意識(発達)研究
- 4 おわりに―小学校歴史教育研究の課題─
- §3 日本史教育の研究 /谷口 和也
- 1 日本史教育研究の自己省察
- 2 歴史学と歴史教育の間
- 3 歴史学研究としての日本史教育
- 4 一般教育学としての日本史研究
- 5 日本史教育における授業づくり
- 6 日本史教育研究の今後
- §4 世界史教育の研究
- 1 世界史教育理論の研究 /有田 嘉伸
- (1) 世界史の内容構成理論
- (2) 世界史の成立史と学習指導要領の変遷史
- 2 世界史授業の研究 /岡明 秀忠
- (1) 分析の目的と方法
- (2) 世界史授業の研究に影響を与えたもの
- (3) 世界史授業研究の現在と未来
- §5 歴史学習指導の研究 /告川 幸男
- 1 歴史学習指導の研究とは何か
- 2 子どもの歴史理解の研究 A
- 3 歴史学習指導法の研究 B
- 4 歴史学習指導の分析・評価研究 C
- 5 歴史学習指導研究の確立と課題
- 第五部 公民教育の研究
- §1 公民教育理論の研究
- 1 公民教育理論の研究 /森本 直人
- (1) 公民教育理論研究の領野
- (2) 「公民的資質」概念についての研究
- (3) 公民的資質形成理論に関する研究
- (4) 公民教育の歴史研究
- (5) 公民教育理論研究の課題
- 2 公民諸領域の教育理論の研究 /福田 正弘
- (1) 研究の分類
- (2) 政治的領域の教育理論
- (3) 憲法・法的領域の教育理論
- (4) 経済的領域の教育理論
- (5) 社会的領域の教育理論
- (6) 今後の課題
- §2 中学校社会科公民的分野の研究 /工藤 文三
- 1 公民的分野の目的について
- 2 内容構成に関する研究
- 3 教材および教材構成に関する研究
- 4 授業構成に関する研究
- 5 おわりに―生徒にとっての公民的分野の授業
- §3 高校公民教育の研究 /猪瀬 武則
- 1 はじめに―「夢」があった―
- 2 エポックとなった高校公民教育の流れ
- 3 目標・内容・方法の探求
- 4 おわりに―見果てぬ夢か
- 第六部 社会科教育の歴史研究
- §1 戦前の社会科的教科教育の歴史研究
- 1 社会的教科の教育史研究 /河南 一
- (1) 社会的教科教育研究とは何か
- (2) 社会的教科教育研究の前提
- (3) 公民的教育研究
- (4) 地理教育研究と歴史教育研究
- (5) 社会的教科教育研究の課題
- 2 社会科的教科教育の歴史研究 /松井 政明
- (1) はじめに
- (2) 明治期
- (3) 大正期
- (4) 昭和初期
- (5) おわりに
- §2 わが国の社会科教育成立・発展史の研究
- 1 社会科成立史研究 /梅野 正信
- (1) 成立史研究の対象
- (2) 成立史の解明
- 2 社会科教育成立・発展史の研究 /池野 範男
- (1) 問題の所在
- (2) 社会科教育の歴史的研究へのアプローチ
- (3) 社会科教育成立・発展史研究の動向
- (4) 社会科教育成立・発展史研究の課題
- §3 外国の社会科教育成立・発展史の研究 /片上 宗二
- 1 はじめに
- 2 成立史と発展史の未分化型で包括的な紹介研究
- 3 外国の社会科教育成立史研究とその到達点
- 4 外国の社会科教育発展史研究の展開状況
- 5 外国の社会科教育成立・発展史研究の課題
- 第七部 外国の社会科教育の研究
- §1 アメリカの社会科の研究 /棚橋 健治 /桑原 敏典
- 1 はじめに
- 2 成立期社会科から新社会科までを対象とした研究
- 3 新社会科を対象とした研究
- 4 新社会科以降の社会科を対象とした研究
- 5 おわりに
- §2 諸外国の社会科の研究
- 1 ヨーロッパの社会科の研究 /服部 一秀
- (1) ヨーロッパ社会科研究の動向
- (2) ヨーロッパ社会科研究の今後の課題
- 2 アジア・オセアニアの社会科の研究 /木全 清博
- (1) アジアの社会科研究の動向
- (2) オセアニアの社会科研究の動向
- 第八部 社会科関連教育の研究
- §1 国際理解教育・グローバル教育の研究 /田渕 五十生
- 1 はじめに
- 2 国際理解教育の実践上の歩み
- 3 国際理解教育の多様な実践とその課題
- 4 国際理解教育からグローバル教育へ
- 5 おわりに
- §2 関連教育の研究 /佐長 健司
- 1 生活科教育の研究
- 2 環境教育の研究
- あとがき
- 執筆者一覧
まえがき
全国社会科教育学会は,2001年12月に創立50周年を迎える。本書はこれを記念して,刊行されるものである。
わが国で社会科教育学が成立して半世紀,この間,教員養成大学・学部における社会科教育関連の学科・専攻の充実,大学院の開設,学位授与体制の整備などにより,社会科教育学の専門研究者の養成がなされるようになり,研究者が増加してきた。また,社会科教育学関係学会,関連する諸教育学会の創設もあって,年間相当数の研究発表がなされ,成果が積み上げられてきた。学問として堅実な発展をしてきたといえるのではなかろうか。しかし,それが一つの学問として,科学として,正常に発展し,社会的役割を果たしてきたかといわれれば,大いに疑問がある。55年体制下,学習指導要領による法的規制が強化され,教育実践に枠がはめられ,教師が試行錯誤しながら教育の真実を求め実践していくことはできなくなった。教師が子どものよりよい成長を求めて実践し,研究者がそれを記述,説明,一般化し,さらに,教師がそれを批判し生かし実践していく。こうした実践と研究の本来あるべき関係が断たれてしまった。その結果,そうした体制下の社会科教育を対象化し,説明,批判する研究もなされたが,研究の多くは,学習指導要領社会科の枠内でのテクニカルなものか,あるいは,それに反対する民間の特定の教育研究団体の社会科教育論にくみした理論的実践的なものか,さらには,こうした政治的な現実への関わりを避け,アカデミックではあるが今日的意義の明確でない,歴史上の,あるいは,外国の社会的教科教育を分析,説明するもの,になっていった。1989年に55年体制が崩壊したが,保守的政党による教育支配は一層進み,教師の教育の自由はますます狭まり,それだけ教科教育学研究は閉塞していった。
とき,あたかも21世紀元年。経済から始まったグローバル・スタンダード化は,政治や社会,そして,教育にも及んでくるのではないか。その一つの表れか,学習指導要領と教科書の意味と位置づけが変わった。達成し習得すべき目標,内容を示すものが,学習の基礎・基本,最低ラインを示すものになった。それらを基盤とし,それらを超えて指導することが可能となり,要請されることになった。教科教育実践の新たな地平が開かれ,実践と研究の関係が大幅に回復され,教科教育学への期待も高まっていこう。
本書は,過去半世紀の社会科教育学研究の成果と方法を整理し,これまでの研究の展開の方向と到達点を示し,今後の研究の礎となることを目指して,学会が総力をあげて企画・編集したものである。本書が社会科教育研究者だけでなく,社会科教育に関心をもつ多くの方々に活用され,わが国の社会科教育とその科学的研究の充実・発展に寄与できることを願っている。
最後に,本書の編集・刊行に尽力された編集委員会の委員各位,および,編集の趣旨を理解し快く出版を引き受けていただいた明治図書・樋口雅子編集部長に厚くお礼申し上げたい。
2001年4月10日 全国社会科教育学会会長 /森分 孝治
社会科教育学を学ぶには必須の一冊なのに、なぜ絶版になったのかわかりません。復刻お願いします。
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