社会科で育てる新しい学力2
伝統・文化の継承と発展

社会科で育てる新しい学力2伝統・文化の継承と発展

新社会科における「伝統・文化」の学習を示す

授業の実際として、「伝統・文化」の学習を生活文化、食文化、芸能文化というカテゴリーに分け、授業のねらいや概要について具体的に示している。伝統・文化の継承と発展をめざす授業づくりの基礎トレーニングをはじめ地域の人・施設を生かした授業例を掲載。


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ISBN:
978-4-18-450222-2
ジャンル:
社会
刊行:
対象:
小学校
仕様:
A5判 160頁
状態:
在庫僅少
出荷:
2018年12月14日
新学習指導要領解説書籍
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もくじ

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解  説
はじめに
T 伝統・文化の継承と発展をめざす社会科の授業
一 今なぜ伝統・文化の継承と発展をめざす授業が求められるのか
二 どんな授業モデルを求めているのか
1 伝統・文化の学習で育てたい力
2 伝統・文化の内容
3 伝統・文化の授業モデル
U 伝統・文化の継承と発展をめざす授業づくりの基礎トレーニング
一 どんなことから始めたらよいか
1 教科書を見ながら自分たちの住んでいる地域を考える
2 事前のアンケートで子どもや地域の実態把握
3 子どもの発想を大切にした「発信型」アンケート
4 「国民文化祭」は、教材開発の玉手箱
二 伝統・文化の継承と発展をめざす教材開発の10のヒント
1 地域の名所の写真を写す
2 地域の歴史家の方とコンタクトをとる
3 市場や漁港でどんなものが集まっているのか見学する
4 自分たちの地域の歴史年表をつくってみる
5 旧暦を調べてみる
6 地図に昔の街道を書き込んでみる
7 学校の沿革史を調べてみる
8 地域学習の副読本を全学年で活用してみる
9 わが町の自慢のアンケートを実施してみる
10 行政の観光課、公民館、歴史資料館を訪問してみる
V 伝統・文化の継承と発展をめざす授業の実際
一 生活文化
1 店で働く人々〜個人商店を通して(三年)
2 郷土をひらいた人々〜岩崎想左衛門に学ぶ(四年)
3 やまぐち伝統工芸品・元気伝説(四年)
4 ふるさとの宝を探そう! 伝えよう!〜地域の発展に尽くした先人(四年)
5 外国の友達が我が家でホームステイ! 一週間のスケジュールを立てよう(六年)
二 食文化
1 ジャガイモ作りを通して農家の仕事にせまる(三、四年)
2 山口まるごと弁当を作ろう〜わたしたちの住む県(四年)
3 日本の水産業〜ふくを通して下関の漁業にせまる(五年)
三 芸能文化
1 わたしたちの町はどんな町?(三年)
2 江戸の文化をつくりあげた人々(六年)
W 地域の人や施設を生かした授業のノウハウ
一 地域づくりマップ
1 こんなマップをつくってみたい
2 マップでバージョンアップ
3 地域づくりマップの発展
二 地域の人材活用
1 人材活用のねらい
2 授業と人材活用の実際
3 国民文化祭でのパフォーマンス
三 郷土の偉人に学ぼう
1 人間の生き方を学ぶ社会科
2 周防大島(山口県)の民俗学者、宮本常一
3 宮本常一の手法を生かした学び
X 伝統・文化の精神を学級づくりに生かす
一 茶の湯の心を学級経営に生かそう
1 和の文化はあいさつから
2 相手を思いやる心
3 茶の湯でエンカウンター
4 いろいろなきまりにもちゃんとした意味がある
5 興味を持ったらトライ
二 江戸しぐさ
1 江戸しぐさとは
2 学級づくりに生かす考え方
3 学級づくりの実践
三 伝統・文化の継承と発展を学ぶクイズ
1 初級コース
2 中級コース
3 上級コース
おわりに

解説

 「伝統・文化の継承と発展」とは、むずかしいテーマである。藤本浩行氏と電話で話しているとき、「どうしてもこの巻を書かせてほしい」といった。「むずかしいですよ」といったら、「むずかしくても、ふだんの生活でやってることでしょ。生活の見直しにもなるので――」ということで、二巻は藤本氏のグループに決まった。書きはじめる前から意欲的であった。

 原稿を一読して、「さすがだ」と思った。「自分の住んでいる地域を愛することから、伝統文化の精神を育てることができる」という三浦朱門氏のことばが生きている本である。わたし自身は、「地域をみつめ、地域に学び、地域にかえす」ことが「伝統・文化の継承と発展」になると考えている。地域に学ぶことまではやっているが、「地域にかえす」ことがないから「継承と発展」ができないのである。

 最後に、「伝統文化の継承と発展を学ぶクイズ」が、初級コース・中級コース・上級コースの三段階に分けて出題されているのも面白い。読者の方は、まず、このクイズをやって、それから本文を読むのも一つの方法だと思う。

 本書は、大きく五つの章に分かれて記述されている。中心は第V章であるが、それぞれの章の内容が面白く、読み出したら止まらない。新しい「教育基本法」にも「伝統と文化を継承し、新しい文化の創造を目指す教育を図るため……」と、前文にあることから、この内容を取り上げることに心強く思ったようだ。教育は「不易と流行」の両面が必要だ。不易を生かしながら、新しい文化を創造していく必要がある。


 第T章は「伝統・文化の継承と発展をめざす社会科の授業」である。ここでは、「我が国や郷土の歴史や文化・伝統を学び、それらに対する誇りや愛情・理解を培うことにより→広い視野をもって異文化を理解し、異なる文化や風習をもった人々と共生していくことができる」ということを基本として考えている。

 問題は、伝統・文化の学習で育てたい力をどう考えるかである。本書では、次の三つを考えている。「@伝統・文化について理解する力 A伝統・文化について体験を通して学ぶ力や、伝統・文化に関する資料を活用する力 B伝統・文化の学習で学んだ見方や考え方を生かしたり、伝統・文化を継承したりしていく態度や能力」である。

 また、「伝統・文化の内容」として、「生活文化、食文化、芸能文化」の三つの文化を考えている。

 「伝統・文化の授業モデル」として、「地域密着型追究モデル」「活動・体験モデル」「地域貢献モデル」「文化創造モデル」の四つのモデルを予想しながらも、実践にあたってはダイナミックな展開をすることを心がけるという。

 第U章は「伝統・文化の継承と発展をめざす授業づくりの基礎トレーニング」である。この章の中核になる提案は、「伝統・文化の継承と発展をめざす教材開発の10のヒント」である。どんな角度から教材開発をめざすかという視点ともいうべきことを10個示しているのはすごい。

 @地域の名所の写真を写す、ことも教材開発になる。わたしが面白いと思ったのは、D旧暦を調べてみる、G地域学習の副読本を全学年で活用してみる、などである。こんなところにヒントがありそうだ。子どもにあまり関心のない旧暦を調べることによって、農業との関係や地域の祭りとの関係などがわかってくるだろう。

 第V章は「伝統・文化の継承と発展をめざす授業の実際」で、本書の半分くらいのスペースを占めている。

 内容は、「生活文化」「食文化」「芸能文化」の三分野に分けて、具体的な授業例を、同じスタイルで述べているので、読みやすい。@単元のねらい、A単元の目標、B授業計画、C授業の概要、というスタイルがそれである。もちろん、Cの授業の概要が詳しく書かれてることはいうまでもない。生活文化の具体例として五つ示されている。

 なかでも「5 外国の友達が我が家でホームステイ! 一週間のスケジュールを立てよう(六年)」のようなことをきちんと計画的に行い、しかも、実施していることが面白いと思った。日本の文化をどのようにして外国人にわかってもらうかということで、衣食住を中心に、名所・遊び・スポーツ・マンガ・アニメなど、幅広く子どもたちも考えている。

 「二 食文化」では、自分たちで作ったカレーを外国人に食べさせる、といったことを考えればよいのに、と思った。食文化が外国人に一番わかりやすいからである。「山口まるごと弁当を作ろう〜わたしたちの住む県(四年)」では、山口らしい特色ある弁当を作り、外国からきた人と日本の他地域からきた人に食べてもらうなど、「食」と他の分野との交流を目指したら、もっと面白くなったと思う。今のままでもよいが、担当が違うため、交流がうまくいかなかったのかなと思った。でも、これだけの内容を、交流をはかることまで考えたら大変だろうとも思った。

 下関といえば「ふく」である。「ふぐ」とにごらないで、「幸福」を連想させるように、必ず「ふく」という。ふくのことを調べ、「下関はふくだけか?」と、他のものへ追究を進めている。明太子に注目したグループや、イカに注目したグループなど、「あれ? こんなものもあったの?」というものを導き出している。わたしにとっては、ふくの次は「うに」なんだけど、子どもはちょっと違うなあと思った。

 「三 芸能文化」では、「1 わたしたちの町はどんな町?(三年)」が、地域の文化的な内容をうまく取り上げ、追究を深めている。三年生らしく、昔話からその舞台となった場所を追究しているのは面白い。なぜなら、今の町と結びつかないから、歩きまわり、調べまわるから学習の価値がある。三年生は、「足で考える学年」といってよいくらいである。体験しないと考えられないところがある。体験すれば、その通りに考える。つまり、考えて行動するというよりは、行動した通りに考えるのが三年生である。このあたりの特色を生かして実践しているのはすごい。

 最後は、「おとぎ話のせかいからとび出そう」ということで、昔話の魅力と地域の特色が詰まった神秘的な地図が完成したという。これを発表し、地域の魅力をつかんだようである。やはり、地域教材はあつかい方によっては、魅力満点の教材になる、ということがわかる。

 第W章は「地域の人や施設を生かした授業のノウハウ」で、大きく三つの柱でまとめられている。

 「一 地域づくりマップ」「二 地域の人材活用」「三 郷土の偉人に学ぼう」というのがそれである。

 一では、地域に残っている遺跡や文化財など文化的遺物や言い伝えや民話など、昔を感じる古くから残っているものをフィールドワークや資料館、図書館などで調べ、地図に書き込んでいく。これを生活文化や食文化に広げると、より地域に密着したマップづくりとなる。「ふと発見した目に見える事実など、目や耳で確認できる形あるものについて、当時の人々の願いや思いなど、形では表せないものを地図に記していく。このように、昔のかおりがただよう形のあるものと形のないものを探る」というステキな文章が目にとまった。昔と今と将来を、一枚のマップの中に表現していくというのである。

 「二 地域の人材活用」「三 郷土の偉人に学ぼう」のところでは、「人間の生き方を学ぶ社会科」ができることを教えてくれる。なかでも、民俗学者・宮本常一は山口の出身で、氏の生き方に学ぼうとしている。氏は「あるく・みる・きく」という調査方法をとっていたという。歩いた距離は約地球四周半、撮った写真四万枚という。徹底して自分の足で歩き、疑問を自分の目や耳で確かめていくという発見の旅、問題解決の旅であり、これは社会科の本質であった、と述べている。肝に銘じておきたいことばである。

 第X章は「伝統文化の精神を学級づくりに生かす」というユニークな内容である。

 三つに分かれていて、「一 茶の湯の心を学級経営に生かそう」「二 江戸しぐさ」「三 伝統・文化の継承と発展を学ぶクイズ」という見出しがついている。「茶の湯の心を学級経営に生かそう」というのはユニークな内容だ。「和の文化はあいさつから」ということで、あいさつや礼儀のあり方を、茶の湯に学ぼうということである。茶の湯から、思いやりの心も芽生えるというのである。「気配り」なども、お茶をおいしく点てることから学べる。

 「茶の湯でエンカウンター」という見出しもみえる。「一期一会」という古くて新しいことばもみえる。

 茶の湯には、いろいろなきまりがある。そのきまりにも、ちゃんとした意味があることを子どもたちに学ばせる。このことによって、学級づくりへ発展するというのである。すばらしい視点である。

 「江戸のしぐさ」は、みんなが気持ちよく平和に暮らすための心得だという。これを学級づくり、仲間づくりに生かそうというのである。「しぐさ」ということばは死語になりかけている。これに命を与える試みである。


 「社会科で育てる新しい学力」として全六巻、一度に出版するようにとりはからってくださった明治図書の江部満編集長に、厚くお礼を申し上げたい。ありがとうございました。


  二〇〇八年一月   /有田 和正

著者紹介

山口GENKI教育サークル著書を検索»

山口GENKI教育サークル,「元気社会科」をめざし活動中!

G lobal グローバルな社会科授業をめざし

E nergetic エネルギッシュに

N etwork ネットワークを張って人と関わり

K ey キーとなる教材を開発するために

I dea アイディアを交流し合おう!

有田 和正(ありた かずまさ)著書を検索»

1935年 福岡県生まれ

玉川大学文学部教育学科卒業

福岡県の公立校,福岡教育大学附属小倉小学校,筑波大学附属小学校を経て愛知教育大学教授

1999年3月 愛知教育大学定年退官

※この情報は、本書が刊行された当時の奥付の記載内容に基づいて作成されています。
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