- はじめに
- 1 提案・キーパーソン型人物学習をこうつくる
- (1) 「大きな物語」を設定する
- (2) 「キーパーソン」を選ぶ
- (3) 何を「追体験」させるか決める
- 2 実践・近現代史のキーパーソンをこう教える
- 幕末のキーパーソン
- (1) 吉田松陰 「藩」から「国」への意識転換を教える
- (2) 高杉晋作 晋作が上海で見たアジアの現実を体験させる
- (3) 坂本龍馬 薩摩と長州を結びつけた一言を考えさせる
- (4) 西郷隆盛 西郷さんが倒幕のために西洋の力を借りなかった理由を話し合わせる
- 明治前期のキーパーソン
- (5) 大久保利通 「負けない国」にするためのつらい選択を実感させる
- (6) 大村益次郎 新しい軍隊は士兵か民兵か、を考えさせる
- (7) 福沢諭吉 「天は人の上に…」と「一身独立すれば一国独立す」を検討させる
- (8) 伊藤博文 明治憲法の誕生と国づくりの気概について考えさせる
- 明治後期のキーパーソン
- (9) 東郷平八郎 世界中の人々を歓喜させた日本海海戦の歴史的意義を教える
- (10) 与謝野晶子 二つの詩を比べて検討させる――『君死にたまふことなかれ』と『戦争』
- (11) 小村寿太郎 戦争をいかにうまくやめるか? 明治日本の外交について話し合わせる
- (12) 陸奥宗光 不平等条約改正への戦略を考えさせる
- 大正・昭和のキーパーソン
- (13) 原 敬 どちらを総理大臣にするか――新しい政治の方向を考えさせる
- (14) 吉田茂 全面講和か単独講和か、日本の独立について検討させる
- 3 近現代史教育はなぜ重要か?
- ──新学習指導要領を読む
- おわりに
はじめに
従来から小学校の歴史教育は人物中心がよいと言われてきた。文部省も平成元年の学習指導要領からは四十二人の人物を例示している。
ところが現場の授業が人物中心になる気配はいまだにない。
なぜだろうか。
これには理由がある。
ひとつは歴史教科書の記述の問題である。
小学校の歴史教科書はいまだに事実をただ羅列しているだけである。そこには歴史を主体的につくってきた人物の姿はほとんど見えない。この無味乾燥な教科書では、躍動感のある人物学習はとてもできない。とくに「読む」ことによって授業を進めることが多い歴史学習の場合、教科書の記述は決定的に重要な問題である。
もうひとつは、人物学習の有効なモデルが提示されていないことである。
一般的に、人物学習は粗く言って次の二つのモデルがあるように思う。
調べ学習型と伝記学習型である。
子どもが自分から進んで人物について文献にあたったり、フィールドワークする学習はとても大事だ。歴史に興味を持たせる上でも、生涯学習を見通して学習技能を高める上でも大いに奨励されるべきである。また、人物の伝記にまで学習を発展させ、その人物の人間性にまでふれるというのもすばらしいことだと思う。
だが、この二つのモデルはある欠点に陥りやすい。
その欠点とは「人物を」学習することが目的になりかねないということである。人物学習は「人物を」教えるのではなく、「人物で」日本の歴史を学習することが目的になるべきである。
このような既存の人物学習の問題点を克服し、よりおもしろく知的に自国の歴史を学ぶための人物学習の開発が必要である。
こうした問題意識から本書で提案したのが、キーパーソン型人物学習である。
これは日本の歴史の「大きな物語」を考え、その物語の「キーパーソン」を選び、そのキーパーソンの思考・行動を「追体験」させるという人物学習である。
また、本書では同時に歴史教育における近現代史教育の重要性も提案している。
幕末から明治・大正・昭和をどう教えるかということと、新学習指導要領のいう「国を愛する心情を育てる」ということは深いつながりがあるからである。
本書には二つの論と十四の授業実践が収められている。これが人物学習と近現代史教育という歴史教育の大きなテーマについての議論の材料になれば、と思っている。
/安達 弘
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明治図書















