- はじめに
- T 社会科で総合的な学習授業づくりのポイント
- 1 社会科と総合的な学習
- 2 教師の役割
- 3 国際理解,情報,環境,福祉・健康
- U 授業実践
- ─国際理解,情報,環境,福祉・健康を見据えた学習課題
- 国際理解
- モロヘイヤで国際貢献 :高学年
- アメリカの印象・日本の印象 :高学年
- 環境
- おいしい水マップをつくろう :中学年
- 川の汚れを調べよう :中学年
- 森林ボランティアの方を招待しよう :高学年
- いろんな素材で紙づくり :中・高学年
- ケナフを育てよう :高学年
- 生ゴミリサイクルを体験しよう :中・高学年
- 酸性雨を調べよう :高学年
- 自分の地域のエネルギー事情の学習から省エネルギーの学習へ :中学年
- 地球温暖化とエネルギー :高学年
- 省エネ住宅を建てよう :高学年
- 待機消費電力調べ :高学年
- わが家の省エネ大作戦 :高学年
- 情報
- コンピュータで学校のまわりを絵地図に描こう :中学年
- インターネットで調べる邪馬台国のヒミツ :高学年
- 遠くの学校とメールで交流 :高学年
- 福祉
- 車椅子に乗ってみよう :高学年
- 町のやさしさ調べ :高学年
- V 授業実践
- ─子どもたちの興味関心に基づく学習課題
- 縄文土器を作ろう :高学年
- 縄文料理を食べよう :高学年
- 市長さんに電子メールを送ろう :高学年
- インターネットで環境クイズ :高学年
- 火鉢でおもちを焼こう :中学年
- さとうきびであべかわもち作り :中・高学年
- 昔のあそびを教えてもらおう :中学年
- お年寄りと一緒にお店を出そう :中・高学年
- W 授業実践
- ─地域や学校の特色を生かした学習課題
- 地域の伝統工業製品づくりに挑戦 :高学年
- コンピュータで町自慢をしよう :高学年
- ぼくらは地区たんけんたい :中学年
- 小学校の先輩から聞く昔の学校生活 :中学年
- 児童センターへ行こう :中学年
- おじいちゃんおばあちゃんに聞いた戦争の話 :高学年
- おわりに
はじめに
総合的な学習における教師の役割とは何でしょう。
私は,子どもたちに問題意識を持たせることだと考えています。
これは,ただ問題を提示することではありません。子どもたちがその問題について調べてみたい,自分の考えを述べてみたいという学習意欲を引き出すことです。
そのためには,かなり緻密な計画が必要です。
いきあたりばったりでやれるはずがありません。
総合的な学習については,いろいろな解釈があります。
例えば,一番よく耳にするのが,子どもたちから出てきた問題を課題として学習を組み立てるという考え方です。
私は,この考え方についてはきわめて懐疑的です。授業で何時間もかけて追求することのできるような課題を子どもたちが発見できるものでしょうか。また,一人の子が見付けてきた課題が学級全体の課題となりうるでしょうか。
学習指導要領の総則「第3 総合的な学習の時間」では,総合的な学習の時間のねらいを次のように述べています。
(1)自ら課題を見付け,自ら学び,自ら考え,主体的に判断し,よりよく問題を解決する資質や能力を育てること。
(2)学び方やものの考え方を身に付け,問題の解決や探究活動に主体的,創造的に取り組む姿勢を育て,自己の生き方を考えることができるようにする。
子どもたちが見付けた課題で,学習を組み立てていくという解釈は,ねらいの(1)の「自ら課題を見付け」のところから出てきたものと考えられます。
しかし,(1)のねらいをよく読んでみてください。文末は「資質や能力を育てること」となっています。つまり,自ら課題を見付けることのできる資質や能力を育てればいいのです。
それには,教師側がテーマを準備してもいいのです。
いや,子どもたちの学習意欲を引き出すことのできるテーマを見付けることができるのは教師だけなのです。このことを考え違いしてはいけません。
さて,総合的な学習には,もう一つ大きなねらいがあります。
それは,現代社会が抱える問題に対応する授業をつくり出すということです。指導要領では,例示として「国際理解,情報,環境,福祉・健康」をあげています。
これについては,あくまで例示だとする解釈も存在します。
しかし,私はそのようには考えていません。環境問題のように,これまでの教科では対応が難しい領域を扱った授業をつくり出していくことが,総合的な学習のもう一つのねらいだからです。
本書は社会科の授業から総合的な学習へと発展させていくことができる授業例を33集めました。環境問題,情報,国際理解,福祉などは社会科と深い関係を持っています。
社会科の授業からスタートして,子どもたちの問題意識を高め,子どもたちの主体的な活動を引き出す。そのための手だてを満載しました。
そして,このような学習活動を通して子どもたちが「自ら課題を見付け,考え,判断する」力が育っていくよう配慮しました。
本書に紹介した実践が,総合的な学習の授業づくりのお役に立つことを願っております。
福井教育サークル代表 /吉田 高志
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