21世紀社会科教育への提言1
問題解決学習の継承と革新

21世紀社会科教育への提言1問題解決学習の継承と革新

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戦後一貫して問題解決学習の必要性を説いてきた初志をつらぬく会が,今までの何をこそひきつぎどこは時代の要求に応えるべく革新するかを示す。


復刊時予価: 2,563円(税込)

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電子書籍版: なし

ISBN:
4-18-447201-X
ジャンル:
社会
刊行:
対象:
小・中
仕様:
A5判 160頁
状態:
絶版
出荷:
復刊次第

目次

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刊行のことば /上田 薫
まえがき /市川 博
T 21世紀の教育・授業への提言
1 授業の本質とカリキュラム
(1) 問題解決の過程と計画
カリキュラム概念の解釈/ 問題解決の過程と計画
(2) 価値多元化におけるカリキュラム
(3) 社会的課題と子どもの問題意識
2 動的カリキュラム論
(1) 個に即した問題解決のカリキュラム
(2) カリキュラム編成への具体的提言
3 教師の成長とカリキュラム
(1) 教師と子どもによる教育的経験の創造としてのカリキュラムの展開
カリキュラムを日常の教育実践のなかに取りもどす/ 子どもの可能性をめぐる授業と教科の関係を問い直す/ 私たちは子どもの成長の筋道のまわりに何を置けるか/ 単元展開の起点(もと)と結節点(節目)を子どもが作り出すおもしろさ―
(2) 教師に培われる柔らかいカリキュラム
(3) 教師の研修と授業
U 「社会科をつらぬく会」とは何か
1 社会科50年と今後の使命
(1) 初期社会科の性格
(2) 道徳教育と社会科
(3) 問題解決学習の力
(4) 動くものによって動くものを
(5) 危機到来をどう迎えようとするか
(6) 難問題に正対せよ
(7) 社会科は先兵たれ
《コラム》 長坂端午先生ご夫妻と初志の会
2 「社会科の初志」とは何か
(1) “社会科の初志”の原点――初期社会科の教育理念とその意義――
@初期社会科の教育理念/ A“初志”の源流―社会科の前史―
(2) 初志の会の発足と“社会科の初志”
(3) 「人間性回復の過程としての教育」と“社会科の初志”――子ども不在,教育内容中心の教育体制に抗して――
(4) 『個を育てる教師のつどい』と“社会科の初志”
(5) 激動する社会における“社会科の初志”
V 私たちの会がつくってきたもの
――その理論と運動――
1 初志の会の誕生と40年の経緯
第1期 社会科教育の原理の追究 (第1回〜第4回集会 1958年〜1961年頃)
第2期 社会科教育の各局面ごとの検討 (第5回〜第9回集会 1962年〜1966年頃)
第3期 間題解決学習と子どもの成長過程の究明 (第10回〜第15回 1967年〜1972年頃)
第4期 社会科における人間回復の探究 (第16回〜第25回 1973年〜1982年頃)
第5期 個としての子どもの深い理解 (第26回〜第34回 1983年〜1991年頃)
第6期 個が育つ問題解決学習の探究 (第35回〜現在 1992年〜1996年現在)
《コラム》 逆風の中の船出
2 初志の会の問題解決学習論の発展
(1) 問題解決学習における問題の意味
子どもの切実な問題/ 「切実性」のとらえ方のちがい/ 導入の間口は狭く,は可能か/ 初志の会の問題解決学習をめぐる諸問題
(2) 問題解決学習の原理と授業の方略
問題解決学習の原理の相対的性格/ よい授業のための手がかり/ 問題領域の定式化/ 問題解決学習をうながす教材の要件
《コラム》 発足10年目のころの初志の会
3 初志の会の子どものとらえ方の理論と方法の発展
(1) 授業記録の重視――「カン」「コツ」から技術へ――
(2) 「カルテ」の理論と方法
(3) 「カルテ」の実践―― 子ども理解を中心に――
「座席表授業案」/ 授業記録のとり方とその活用(a),(b)
《コラム》 カルテ,座席表による授業,30年
W 私たちの会と社会科50年
1 文部省社会科と初志の会
(1) はじめに
(2) 70年代以降の文教政策と社会科
(3) 個性尊重と問題解決学習への着目
(4) 能力主義の中での個性尊重と問題解決学習
(5) 社会科の改編と初志
(6) 教育の責任主体としての教師
(7) 個を育てる教師のつどい
(8) 剛直な個人主義と柔らかな個人主義
《コラム》 重松鷹泰先生と社会科の初志をつらぬく会
2 初志の会をめぐる社会科論争史――民間教育団体――
(1) 論争史を分析するための視点
(2) コアカリキュラムをめぐる論争――昭和20年代中盤――
(3) 低学年社会科をめぐる論争――昭和30年代前半〜中盤――
(4) 科学的認識をめくる論争
マルクス主義教育学との論争/ 森分孝治による初志の会の授業論批判
(5) 子どもにとっての「切実性」をめぐる論争――昭和60年前後――
(6) 社会科「解体」をめぐる論争――昭和60年代――
(7) まとめ
3 日本の社会科教育学の発展と初志の会
(1) 社会科の「民主化」への初志の会の貢献
@子どもの主体性の尊重/ A子どもたちの横のつながりの重視とその評価/ B学習の個別具体性の確保
(2) 社会科の「個性化」への初志の会の貢献
@「考える」ことの総合性から,社会をとらえたこと/ A「考える」拠点としての社会的な関心・態度の重視/ B「考える」ことの継続性とその保障
(3) 社会科の「公民化」への対応と貢献
@社会科の「公民化」への取り組みと初志の会/ A「公民」の育成を議論することの大切さ
(4) 社会科教育学が担うべきこと
@社会科のダイナミズムを支えること/ A初志の会のダイナミズム
あとがき

刊行のことば

   /上田 薫


 社会科の初志をつらぬく会が生まれてから半世紀の時が流れた。当時会を企画した人間として,すくなからぬ感慨を覚える。長い長い逆境の年月,よく保ってきたものだと思う。

 会が苦境でありつづけたのは,そもそもが始まったばかりの五十五年体制への容赦ない抵抗を使命としたからであった。今文部省が一転して推進する“個の尊重”“主体的な思考力育成”など,まさに私たちの当初からの主張の核だったのだが,それはごく最近まで無残なまでに孤立無援のままだった。

 現在問題解決学習への関心が高まっている。終始一貫それを軸としてきた会の思想とその足跡が注目に値するといっても,そう自賛とはいえまい。問題解決学習は単なる一指導法ではない。明確な教育観,人間観を根底とした教育実践であり,教師の真摯な生きかたに結ぶものである。

 冷戦後の世界はどうあるべきか。そこで人間はいかに生きるべきか。これまで戦後日本の改革を目ざしてきた私たちの初志は,来世紀へ向けての変革を推進する理念をもほぼ担いうると私は考えている。今日50年の歩みを改めて公にし,自らの反省の糧とするのはもちろんだが,また広く世の批正を仰ぐことを通じて,来るべき世紀のはらむ人類危機への対決に,いささかでも資することができればと,切に願わずにいられないものである。

 記念の出版として望むべきことがあまりに多く,編集は容易でなかった。しかしその任にあたった山根出版部長の苦心もあって,今日の読者の要望に応じうる内容になったと思えることを喜びたい。

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      明治図書
    • 社会科を学ぶ者として、初志の会の書籍から学べることがたくさんあります。是非とも読みたい本のひとつです!
      2025/10/12

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