- ◆ まえがき
- T章 新教育課程とこれからの社会科
- 1 改正教育基本法等とこれからの学校・社会科
- (1) 教育関連法規と学習指導要領との関連
- (2) 教育基本法の「教育の目標」
- (3) 学校教育法の「義務教育の目標」
- (4) これからの学校教育・社会科教育の課題
- 2 学校教育の基本理念とこれからの社会科授業
- (1) 学校教育の理念は「生きる力」をはぐくむこと
- (2) 社会科の教科としての役割を問う
- (3) 社会科における「わかる」と「できる」の構造
- (4) 新しい社会科の授業構造 ―「社会が見える・社会がわかる・社会にかかわる」―
- 3 学習指導要領「改訂の方針」の読み方
- (1) 平成10年版学習指導要領―その後の経緯
- (2) 社会科改訂の基本方針の読み方
- (3) 制度を変えれば学力は向上するか
- U章 学習指導要領改訂の注目点
- 1 学習指導要領改訂の基本的な考え方
- (1) 改訂の「基本的な考え方」に見る注目点
- (2) 基礎的・基本的な知識・技能の習得
- (3) 思考力・判断力・表現力等の育成
- (4) 学力向上に必要な授業時数の確保
- (5) 学習意欲の向上と学習習慣の確立
- (6) 豊かな心や健やかな体の育成
- 2 教育内容改訂のポイントと社会科
- (1) 社会科における言語活動
- (2) 伝統や文化に関する教育
- (3) 道徳教育の充実
- (4) 体験活動の充実
- (5) 教科横断的な教育課題への対応
- 3 社会の変化に対応した社会科の新しい課題
- (1) 社会の変化と新しい教育課題
- (2) 新しい教育課題と学習指導要領の記述
- V章 社会科改訂のポイントはどこか
- 1 社会科の「目標」はどう変わったか
- (1) 社会科の教科目標
- (2) 各学年の目標
- 2 社会科の「内容」はどう変わったか
- (1) 社会科の内容構成
- (2) 3年及び4年の「内容」はどう変わったか
- (3) 5年の「内容」はどう変わったか
- (4) 6年の「内容」はどう変わったか
- 3 社会科の「内容の取扱い」はどう変わったか
- 4 各学年の「授業時数」はどう変わったか
- 5 変わらない点は何か
- (1) 国家・社会の形成者の育成
- (2) 小学校4年間の内容構成
- (3) 「調べて考える」授業構成
- W章 社会科の「知識」をどう考えるか
- 1 学習の基盤となる基礎的な知識の習得
- (1) 知識をめぐる問題状況
- (2) 「こんなことも知らないのか」という指摘
- (3) 作業的な活動の工夫と教材の開発
- 2 「知識の構造図」作成のすすめ
- (1) 社会科で取り上げられる知識の特質
- (2) 「知識」はどのように構造化しているか
- (3) 「知識の構造図」作成の手順
- 3 社会科の「重点指導事項」とは何か
- (1) なぜ「重点指導事項」を取り上げるのか
- (2) 審議過程に見る重点指導事項
- (3) 知識に関する重点指導事項
- (4) 能力に関する重点指導事項
- X章 求められる社会科の授業力
- 1 「資料活用」の能力をどう育てるか
- (1) なぜ,「資料活用」が重要なのか
- (2) 「資料活用」の何が問題なのか
- (3) 「資料活用」の授業力をどう高めるか
- 2 「教材の開発と活用」の能力をどう高めるか
- (1) 教材と学習内容の違いと関連性
- (2) 地域教材の活用にかかわる課題
- (3) 教科書活用の役割
- (4) 教科書を活用した授業研究の視点
- 3 「学習活動」をどう構想するか
- (1) 社会科の「学習活動」とは何か
- (2) 学習指導案に見る問題点
- (3) 子どもの「学習活動」をどう組み立てるか
- 4 「生活への活用力」をどう育てるか
- (1) なぜ「生活への活用力」なのか
- (2) 「生活への活用力」を育てる指導
- ◆ あとがき
まえがき
平成20年3月,学習指導要領が改訂された。社会科にあっては,試案として示されて以降,八回目の改訂になる。一部改訂を含めると,さらに回数は増える。
学習指導要領が改訂されると,何が削除されたか。追加されたことは何かなど,どうしても何が変わったかということに関心が集中する。どこが変わったかを理解することは大切なことであるが,こうした理解だけでは授業を充実させることはできない。日々の授業の改善につなげるためには,どうして変わったのかを理解することが重要になる。改訂の背景や経緯を併せて理解することによって,これまでの授業のどこをどのように変えなければならないか,授業改善の視点や方向性が見えてくる。
このことは,新旧の学習指導要領を見比べてもわからない。学習指導要領の目標や内容等を解説した『解説書』にもここまで論及した記述はない。あくまでも学習指導要領の解説だからだ。どうして変わったのかといった改訂の背景や経緯を理解するためには,それまでの審議の経過やとりまとめられた答申などの内容と結びつける必要がある。解説を理解するだけでなく,授業の改善策が見えてくると,実践への関心や意欲も高まってくる。
本書『新教育課程と社会科の授業構想』は,こうした趣旨から緊急に企画され,まとめられた。今回の学習指導要領の本質を理解し,これまでの授業のどこを変えなければならないか。また変えてはならないことは何かについて解説したものである。
T章では,新教育課程の考え方とこれからの社会科について,改正された教育基本法や学校教育法との関連,社会科の教科としての基本的な役割,改訂の基本方針の読み方について論述した。新しい教育課程の考え方と結びつけて,これからの社会科を理解することができる。
U章では,社会科の学習指導要領改訂の注目点を「改訂の基本的な考え方」「内容に関する改訂のポイント」「社会の変化への対応」といった観点から具体的に解説した。これによって,改訂の背景や意図などの概要を把握することができる。
V章では,学習指導要領の目標,内容,内容の取扱い,授業時数についてどこがどう変わったかについて解説した。また,どうして変わったのか。これからの授業づくりの課題は何かについても触れた。ここから社会科改訂の全貌をつかむことができる。
W章では,特に「知識」に焦点を当てて,そのとらえ方を整理し,「知識の構造図」を作成することの大切さを提案している。併せて,答申が提案した「重点指導事項」について,その考え方を述べるとともに,知識と能力に関して重点指導事項の内容を提示した。
X章では,社会科の授業を構成している要素に改めて目を向け,教師の資料活用,教材・教科書の活用,学習活動の構想,生活への活用力などについて実践上の課題を整理するとともに,これらの能力を身につける方策について論述した。社会科の授業力向上に役立てていただきたい内容である。
本書に示した社会科の新しい考え方が授業でどのように具現化されたか。授業の実際については今後の課題として残し,本書では紹介していない。
社会科の教科としての役割は,社会科を学んだ子どもたちが現在及び将来社会のなかでどのような生き方やかかわり方をしているかをとおして評価される。本書が社会科授業のさらなる充実と活性化のために活用され,社会科の役割が十分に果たされることを切に望むものである。
本書の刊行に当たっては,明治図書出版の安藤征宏氏から企画の段階から趣旨や内容の構成について,懇切丁寧なご指導とご助言をたびたびいただいた。この場を借りて,心から感謝とお礼を申しあげたい。
平成20年6月 /北 俊夫
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- 明治図書