社会科教育全書18
子どもの生きる社会科授業の創造

社会科教育全書18子どもの生きる社会科授業の創造

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学習活動の展開の中で子どもひとりひとりが生き生きと活動する社会科授業をどう創り出すか,計画から評価までその核心を具体例で示した労作。


復刊時予価: 3,245円(税込)

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電子書籍版: なし

ISBN:
4-18-423903-X
ジャンル:
社会
刊行:
16刷
対象:
小学校
仕様:
A5判 256頁
状態:
絶版
出荷:
復刊次第

目次

もくじの詳細表示

まえがき
第一部 社会科実践のどこに問題があるか
─社会科実践の病理をさぐる─
T タテマエ主義を何とかできないか
一 タテマエ主義を考える
1 ある結婚式と授業
2 タテマエ主義をどうとらえるか
(1) タテマエの典型「研究紀要」
(2)「地域性」という名のタテマエ主義
(3)「流行」という名のタテマエ主義
3 「形」はどこまで必要か
4 タテマエ主義をどう克服するか
二 研究会のあり方
1 バスと教育学説を追いかけていないか
2 研究会が帳面消しになっていないか
(1) 持ち回り研究会の功罪
(2) 理論家にふり回されていないか
3 研究者に考えてもらいたいこと
U 学習指導要領の改訂は社会科を前進させたか
一 寿命の短い指導要領
二 学習指導要領の受けとめ方はこれでよいか
三 主体的な受けとめ方はできないか
1 「指導要領違反」ということがあるのか
2 指導要領は「指導すべき事柄の要点」ではないのか
V 低・中・高学年の問題点をどう解決すべきか
一 低学年の問題点
1 低学年社会科にはどんな問題点があるか
2 問題点をどう克服すべきか
3 何を、どう学ばせればよいか
二 中・高学年の問題点
1 中学年社会科の問題点
2 中学年の問題点をどう考えるか
3 高学年社会科をどう考えればよいか
W 教科書の使い方に問題はないか
一 教科書使用の現状
1 教科書に頼りすぎていないか
2 教科書通り教えれば間違いないか
二 教科書は本当に頼りになるか
1 検定制度はよい教科書づくりに貢献しているか
2 教科書は内容の精選をしているか
三 教科書をどう利用すべきか
X 指導計画のたて方は今のままでよいか
一 ある対立
二 指導計画のたて方はこれでよいか
1 指導計画の具体例
2 指導計画の考察
三 教育実践のスケールは小さくないか
Y 教師の「学ぶ技術」に問題はないか
一 教師の「学び方」の問題
1 どんな授業でも「いい授業」か
2 「教える技術」から「学ぶ技術」へ
3 「あこがれ」をもっているか
二 教材研究のしかたの問題
1 教材をどうとらえるべきか
2 「教材」に問いかけをもっているか
3 どのように教材研究すべきか
4 教材研究と授業の関係
三 学習内容構成上の問題
1 学習内容(教材)をどう考えるか
2 どのようにして教材を構成していくか
3 教材を使ってどんな能力を引き出すか
Z 社会科研究はどうあればよいか
一 社会科授業観の変革を
1 社会科の「いのち」をどう考えるか
2 授業の「ねらい」をどこにおくべきか
3 子どもをどうとらえるべきか
二 実践的な研究法の開発を
1 社会科研究の動き
2 社会科の研究課題は何か
3 「実践の事実」を創造しその実践に学ぶ研究
(1) 実践の事実を創造する
(2) 実践記録を書く
(3) 理論化をはかる──社会科教育学の構築をめざして
4 日常的研究の必要性
第二部 子どもの生きる教材研究
T わたしの教材研究
一 授業研究の出発──具体的な目標をもつ
1 「授業」との出会い──わたしの目ざめた授業
2 実践研究の歩み──研究問題を求めて
3 「わたしの授業」を求めて──実践しながら考えていく
二 授業研究と教材研究
1 教師の追究心
2 一年生の見る目の変化
3 教材化への視点
三 「教材」の考え方
1 教材とはなにか
2 学習内容と教材のちがい
3 教材を開発するということ
U 子どもの追究心に火をつける教材の開発
一 子どもの発達の特性
1 追究のくせをさぐる
2 追究する子どもの特徴
(1) 低学年の追究する子どもの特徴
(2) 高学年の追完する子どもの特徴
二 一年生の教材開発
1 一年生の子どもと教材
2 単元「わたしたちの給食室」
(1) 展開計画
(2) 指導の実際
(3) 人の働きを見る目の深化
三 二年生の教材開発
1 二年生の子どもと教材
2 単元「店づくり」
(1) 店づくり
(2) 買い物ごっこ
(3) 個の追究
3 「ポストづくり」から「手っちゃんのたび」へ
(1)「ポストづくり」の導入
(2) ポストづくり
(3) 郵便ごっこ
(4) 「手っちゃんのたび」(紙芝居)づくり
四 三年生の教材開発
1 三年生の子どもと教材
2 地図のドッキング
3 米屋と家具店
五 四年生の教材開発
1 四年生の子どもと教材
2 なぜ一五回にもわけて種まきするのか──野辺山のレタスづくり
(1) 資料をつくるまで
(2) 問題の発見
3 水の足りない“水郷”?──福岡県大川・柳川市
(1) 海水から淡水(アオ)を取る
(2) 足踏み水車の出現
(3) 足踏み水車と大川の家具
4 「鳥取砂丘」は公害の産物?
5 その他の教材
六 五年生の教材開発
1 五年生の子どもと教材
2 どちらが専業農家か?
3 もうけの多い酪農経営は?
4 沿岸漁業はつぶれるか?
5 その他の教材
(1) 加工貿易はいつごろ始まったか?
(2) 伝統工業──野田の醤油が栄えたのはなぜか?
七 六年生の教材開発
1 六年生の子どもと教材
2 おもしろい歴史教材
3 銅鐸の絵は何をついているのか?
4 寝殿造にトイレはあったか?
5 「一寸法師」で戦国時代の学習
(1) 授業にあたって
(2) 一寸法師の授業
(3) 授業後の追究
6 「鎖国と開国」の授業
(1) 鎖国と開国はどちらがむずかしいか?
(2) ペリーはどうして大西洋からまわってきたのか
(3) ペリーはなぜ無理やり開国させようとしたのか
7「戦争一〇〇年史──第二戦国時代──」の授業
(1) 明治以降を何で追完させるか
(2) 問題が成立するまで
(3) 問題の追究
V 「わたしのカリキュラム」を求めて
一 子どもの側に立つ教材開発
二 「わたしのカリキュラム」づくり

まえがき

 これまでの日本の教育は、多少の起伏はあったが「教える」ことが主流で、子どもを「育てる」という面が欠けていたといえる。主体性とか、自主性などを研究テーマに掲げながら、授業では「教える」ことに終始し、子どもの生きる授業にしようとする姿勢が弱かったといえよう。教育研究も「教え方の研究」が中心で、いかに能率よく教えるか、いかにわかりやすく教えるか──と、「理解させる」ための研究が主流であった。

 これでは、これからの社会や自分の生活を切り開いていく人間を育てることは困難ではないか、という反省がなされるようになってきた。そして、子どもがいかに主体的に学ぶように指導すべきか──と、子どもの「学ばせ方の研究」がなされなくてはならなくなってきている。特に、覚えさせ、記憶させることが中心になってきている社会科指導は、改善の必要に迫られているといえる。にもかかわらず、教師の社会科に対する姿勢が変わらないのはどうしてだろうか。そこにはどんな問題点があるのだろうか。教師のタテマエ主義という古いカラや、伝統という名の旧来のろう習などにとらわれている面があるのではないだろうか。

 また、十月〜十一月などは、各地で大変な数の研究会が行われているが、子どもの生きる授業をつくり出したり、社会科を改造するところまで高まらず、帳面消し研究会や出世主義の研究会になっているのではないかと考えられる点もある。その他、学習指導要領や教科書の受けとめ方、対応のし方にも多くの問題が感じられるし、指導計画のたて方などにも大きな問題がありそうである。教師は、教えることに一生懸命で、自分の学び方・研究のし方に関心を持っていないのではないかと思われる面もある。

 このような社会科教育や社会科教師についての問題点を洗い出し、これにどう対応すべきか、社会科を前進させるために今後どのように研究を進めるべきか──などについて、わたしの目にうつったことや考えていることを率直に書いたものが本書の第一部である。

 第二部は、第一部の問題に対応するものとして、わたしが近年実践し、子どもの主体的な追究心に火をつけ、社会科らしく展開できたと思われるものを取り上げ、検討を加えたものである。

 ある教材を開発し、子どもの実態にマッチした方法で提示できたとき、子どもたちの目が輝き出し、体が躍動して身をのり出し、自分の力で思いきり追究したり、わたしに体当たりしたりして、「子どもの生きた授業」になり得た──という実感を持てた時、少し自信がわいてきた。それで、これをもとに新しい教材を開発して新しい実践をつくり出し、「わたしの社会科理論を構築したい」と願うようになり、次々と実践を重ねてきた。

 苦心を重ねながら実践した数多くの単元の中から、子どもの生きた追究がなされたものを取り上げてまとめたものが第二部である。だから、ここにはわたしの現在までの社会科観や教材開発例・指導法、子どもの追究の実態などが具体的に表れており、これを世に問おうとするものである。

 第二部に提示した教材を、しかるべき方法で子どもにぶつけると、どんなクラスの子どもでもある程度の追究をし、活動するはずだ──と考えている。それだけの一般性があるものだと考えているがどうであろうか。

 子どもの「発達の特性」にしても、一〇年来の実践の積み重ねの中からとらえたもので、ある程度の客観性はあるものと考えているが、この点についてもご批判をいただければ有難い。

 ともあれ、本書は、わたしが社会科や社会科教師(自分も含めて)に感じている問題点に対するわたしなりの答案であり、社会科研究の足跡である。しかし、極めて未熟な内容であるだけに、果たしてどこまで通用するかはなはだ心もとない。多くの方々のご批判ご指導を賜りたいと思う。

 なお、本書の第一部は、一九八〇年四月から一九八一年三月まで『教育科学/社会科教育』誌に「社会科実践の病理をさぐる」というテーマで連載したものを整理しなおしたものである。今読み返してみると言い足りないことや書き変えたいことが多々あるが、第二部に紙幅をとりたいこともあって、あえて加筆しなかった。

 本書の出版にあたっては、連載当時から今回の刊行まで明治図書編集部の樋口雅子氏に多大なご支援とご指導をいただいた。ここに厚くお礼申し上げたい。


  一九八一年十一月   /有田 和正

著者紹介

有田 和正(ありた かずまさ)著書を検索»

1935年 福岡県に生まれる

1958年 玉川大学文学部教育学科卒業

福岡県田川郡川崎町の小学校教論,福岡教育大学附属小倉小学校教論を経て

現在,筑波大学附属小学校教諭

※この情報は、本書が刊行された当時の奥付の記載内容に基づいて作成されています。
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    • いつも講演会やセミナーでお世話になっている宗實先生のおすすめの本ですので、ぜひ勉強したく思います。復刻を強く希望します。
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