- はじめに
- 本書の使い方
- 地理的分野
- 01 背中の国名当てゲーム
- 授業開きオリエンテーション
- 02 地球不思議紀行Google Earth
- 六大陸,三大洋の分布
- 03 地球トレジャーハンター
- いろいろな国の国名と位置
- 04 国名当て早押しクイズ
- いろいろな国の国名と位置
- 05 緯ンディ・経ンズ
- 緯度と経度
- 06 世界の略地図 絵描き歌
- 世界の略地図
- 07 気候・衣食住ドンジャラ
- 世界各地の人々の生活と環境
- 08 EU加盟or脱退ゲーム
- 世界の諸地域(ヨーロッパ州)
- 09 モノカルチャー経済脱出ゲーム
- 世界の諸地域(アフリカ州)
- 10 都道府県宝探し
- 日本の地域構成(都道府県と県庁所在地)
- 11 地方別ご当地ゆるキャラグランプリ
- 日本の諸地域
- 12 怪盗Xからの挑戦状
- 身近な地域の調査
- 歴史的分野
- 01 原始古代歴史タイカンすごろく
- 小学校の復習・原始古代の予習
- 02 かな文字ボディランゲージ
- 新しい仏教と国風文化
- 03 人狼ゲームで勘合貿易
- 室町幕府の成立と勘合貿易
- 04 パネルクイズで室町文化
- 室町文化
- 05 パズル&クロスワードで南蛮・桃山文化
- 桃山文化
- 06 坊主めくりで4つの窓口
- 江戸時代(鎖国下の4つの窓口)
- 07 国難を乗り切れ!レッツEDO改革
- 江戸の幕政改革・導入
- 08 班別対抗 紅白短歌合戦
- 近代のまとめ
- 09 大正はじめて物語
- 大正文化
- 10 心を合わせて 漢字一字を当てろ
- 現代の日本・単元まとめ
- 11 時代順大富豪
- 歴史の流れ・時代順の復習
- 公民的分野
- 01 未来の○○型ロボットコンテスト
- 現代社会・単元まとめ
- 02 法案審議シミュレーション
- 国会のしくみ
- 03 三権対立ゲーム
- 三権分立
- 04 ミニミニ経済体験ゲーム
- 経済分野・導入
- 05 景気七転び八起きすごろく
- 景気変動・導入
はじめに
本書が目指す授業
新しい学習指導要領が始まろうとしている。
社会科においては,「社会的な見方・考え方を働かせる力」「課題の追究・解決力」「広い視野に立ってグローバルに考える力」「主体的に生きる力」など,新しい時代において求められる資質・能力を育むことが教育現場での大きな課題となっていることだろう。
しかし,本書ではそうした資質・能力を育むことのみに重きを置いていない。なぜならば,そうした能力が育まれる土台には,「社会科そのものに対する興味・関心」「社会科の授業が面白いと思えること」すなわち「学びに向かう態度」がなければ,どんな資質・能力を育もうとしても,育たないと考えるからだ。
根っこ(学びに向かう態度)がしっかりしていなければ,良い幹(基礎知識・技能)や枝(思考力・判断力・表現力)は育たないのと同じである。
なぜ授業にゲームを取り入れるのか
今の子どもたちは,スマホやテレビゲームなど,個人で楽しむゲームの経験しかしたことのない子も多い。確かにスマホゲーム内でも,ネットワーク通信を使って複数人でコミュニケーションをとりながら取り組むものも多々ある。
しかしそうしたコミュニケーションではどうしても学べないのが,直接顔を合わせて同じ場所・同じ時を共有することで生まれるコミュニケーションである。すなわち,言葉や文字だけではない「表情や視線,声のトーンなどからしかわからないノンバーバル(非言語)コミュニケーション」の学びである。
本書でとりあげる授業では,「ドンジャラ」や「すごろく」,「トランプゲーム(ババ抜き・大富豪)」「坊主めくり」「カルタ」など,読者ならばほとんど経験したことのあるような古典的なゲームをベースとしているものが多い。これらのゲームは,お互いの顔を合わせながら,友達同士や家族の間でよく行っていたものであろう。
しかし,「スマホネイティブ」と呼ばれる今の子どもたちにとっては,友達同士でも家族の間ででも経験したことのないゲームも多い。ゲームに勝ったうれしさ,負けた悔しさはスマホ上でもあるが,相手がどんな感情になっているか,自分が相手の表情を見てどう感じるかといった「感情の交流」は,学校現場という集団の中でこそ大いに学べるものと考える。
オンライン授業やリモート授業など,インターネット全盛時代だからこそ,できる授業もある。一方で,学校に子どもたちが集まるからこそできる授業もある。学校の授業でゲームを取り入れる意義の一つがここにあると考える。
教師の授業への面白さの追究=料理人の美味しさの追究に似たり
なぜ子どもはスマホやゲームに夢中になるのか。答えは簡単,面白いからである。面白ければ時間を忘れて夢中になり,夢中になった時の記憶は忘れずに残るものである。読者ご自身の記憶をたどってもらえれば,過去の出来事で記憶に残っているのは,感情が動かされた出来事ではなかろうか。その中でも面白かった記憶が多いのではないだろうか。
本書では,生徒の感情がゆり動くような教材,特に面白さを感じるようなゲーム教材を用意した。ゲーム教材は,勝負の中で勝った喜び,負けた悔しさという感情が動くのとともに,ゲームが終わった後に面白さが残る教材として最適である。また,感情を共有・交流するのにもふさわしい。
だが,ただ面白いゲームであれば,バラエティ番組のゲームの方が面白い。ただ面白いのではなく,「そのゲームを通して,社会科に求められる資質能力を育む」もしくは「ゲームを導入として,社会科の学習内容にせまる」ような教材をできる限り用意した。
ただし,あくまで私自身が面白さを追究した結果の教材である。学校事情や読者の個性に合わせてぜひアレンジしていただきたい。「美味しい料理」には「苦み」「辛み」「甘み」などさまざまな美味しさがあり,絶対の正解がないように,「面白い授業」もつくる教師,受ける生徒の関係性や環境によって左右されると考える。目の前にいる生徒にとって,最も面白い(美味しい)と思える授業(料理)をぜひ提供していただきたい。
「面白い」の語源は,「面」は目の前を意味し,「白い」は明るくてはっきりしていることを意味しているそうである。つまり「目の前が明るくなる状態」を指す。
多様な価値観が存在し,未来に向かっていく際に先がみえにくいご時世である。そんな時代だからこそ,この社会科ゲームを通して,子どもたちが社会科の楽しさを学び,資質能力を育み,「目の前(未来)が明るくなる状態」になることを期待する。
最後に,企画から刊行まで,関わってくれた皆さまには大変お世話になりました。そして本書のような授業実践を積み重ねることができたのは,何よりも,今まで私の授業を受けてくれた生徒のおかげです。生徒あっての教師であることを肝に銘じ,心より感謝いたします。
2021年2月 神奈川県横浜市立鶴ケ峯中学校 /黒木 寛久
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