社会科教育のニュー・パースペクティブ
変革と提案

社会科教育のニュー・パースペクティブ変革と提案

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21世紀社会科の創造をめざす

「変革と提案」をキーワードに,社会科の存在意義とあり方を問い直し,20世紀型社会科を脱構築する21世紀型社会科教育の新たな展開について,様々な側面から描き出す。


復刊時予価: 3,696円(税込)

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電子書籍版: なし

ISBN:
4-18-417918-5
ジャンル:
社会
刊行:
4刷
対象:
小・中・他
仕様:
A5判 320頁
状態:
絶版
出荷:
復刊次第

目次

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まえがき
T 二一世紀社会科の挑戦
§1 二〇世紀社会科の脱構築 /森分 孝治
1.はじめに/ 2.国家体制と社会系教科教育/ 3.社会体制と社会系教科教育/ 4.わが国における社会科教育の困難性/ 5.おわりに
§2 二一世紀社会科の実践課題 /岩田 一彦
1.二一世紀社会の特質/ 2.社会科で育てる子ども像/ 3.社会科の実践課題
§3 二一世紀社会科の挑戦 /片上 宗二
1.はじめに/ 2.二〇世紀社会科の挑戦性/ 3.二一世紀社会の諸相/ 4.二〇世紀社会科の限界/ 5.二一世紀社会科の挑戦/ 6.おわりに
U 新しい社会知にもとづく社会科
§1 市民社会科の構想 /池野 範男
1.定義/ 2.動機/ 3.原理/ 4.意義
§2 社会問題科の内容編成原理 /溝口 和宏
1.はじめに/ 2.「社会問題」を捉えるパースペクティブ/ 3.「社会問題科」の内容編成の諸類型/ 4.おわりに
§3 社会形成科の内容編成原理 /服部 一秀
1.社会形成科の学習展開例/ 2.反省的批判的社会探求としての内容編成/ 3.社会科改革の基本的方向性
§4 多文化社会科の内容編成原理 /森田 真樹
1.はじめに/ 2.多文化カリキュラムのパターン/ 3.多文化社会の特徴と社会科教育の課題/ 4.多文化社会科の内容編成とその特徴/ 5.おわりに
V 新しい科学知にもとづく社会科
§1 新しい社会科学科の構想 /棚橋 健治
1.二一世紀の社会科では民主主義を支える批判の自由≠ェ求められる/ 2.二一世紀社会の特徴とそこで求められる市民的資質/ 3.市民的資質の形成に社会科学科が果たす役割
§2 社会科学科地理のカリキュラム /草原 和博
1.なぜ社会科学科か、なぜ地理か/ 2.地理科学科のカリキュラム/ 3.社会科学科地理のカリキュラム/ 4.民主主義社会の形成者を育成する地理教育
§3 社会科学科歴史のカリキュラム /梅津 正美
1.社会科学科歴史の特質/ 2.カリキュラム編成の実際とその論理/ 3.市民的資質育成における社会科学科歴史の意義
§4 社会科学科社会のカリキュラム /桑原 敏典
1.はじめに/ 2.総合的社会科学研究から社会問題研究へ/ 3.市民的資質育成をめざした社会科学科社会のカリキュラム/ 4.おわりに
W 新しい学びにもとづく社会科
§1 新しい問題解決学習の構想 /今谷 順重
1.生き方・働き方のわからない若者たち/ 2.生きる力の原動力としての「人生設計能力」の育成/ 3.人生設計型の新しい人間発達・人間形成(ヒューマン・デベロップメント)の論理の確立を/ 4.二一世紀の教育は能力閉塞型人間から能力開花型人間への自己意識の変革をめざす/ 5.社会科における人生設計型学力モデルの設定と自己成長型の授業展開
§2 子どもが追究する社会科授業 /木村 博一
1.はじめに/ 2.旧タイプの学びとしての「理解」型の歴史学習と劇表現/ 3.佐藤健の授業「聖武天皇と奈良の大仏」の概要/ 4.歴史学習に劇表現を取り入れる意義と問題点/ 5.歴史学習において台詞を吟味し合う意味/ 6.おわりに
§3 学びの共同体を育成する社会科の授業 /寺尾 健夫
1.問題の所在/ 2.歴史カリキュラム「生きている歴史」の授業構成原理/ 3.学びの共同体を育成する社会科授業の原理
§4 子どもの発達を促進する社会科の授業 /加藤 寿朗
1.問題の所在/ 2.子どもの社会認識の発達を捉える視点/ 3.子どもの社会認識の発達的特徴/ 4.子どもの社会認識の発達を促進する授業と課題
X 新しい内容知にもとづく社会科
§1 二一世紀社会科の内容の変革 /金子 邦秀
1.二一世紀社会科の内容知/ 2.二一世紀社会科の内容の変革へのエンパワーメント/ 3.二一世紀社会科の内容の醸成は新たな革袋のなかで
§2 社会科におけるジェンダー学習 /松尾 正幸
1.二〇世紀社会の総括と二一世紀社会への展望/ 2.教育とジェンダー/ 3.社会認識教育諸教科(生活科、社会科、地理歴史科、公民科)におけるジェンダー・フリー教育/ 4.イギリス社会認識教育におけるジェンダー・フリー教育
§3 社会科における環境学習 /猪瀬 武則
1.はじめに/ 2.号砲は鳴らされた・レイモンドの経済教育批判/ 3.藁の人形とおもちゃの紙でっぽう・反論と反駁/ 4.何を学ぶか・経済教育の意義/5.おわりに
§4 社会科における多民族学習 /原田 智仁
1.多民族学習の概念/ 2.社会科における多民族学習の意義/ 3.多民族学習へのアプローチ/ 4.多民族学習としての歴史カリキュラム
§5 社会科における新時代の国家・社会学習 /谷本 美彦
1.はじめに/ 2.揺らぐ国民国家と国家・社会学習の見直し/ 3.二つの国家・社会学習の授業構成/ 4.国家・社会のシステム思考型学習の学習方法原理
Y 新しい方法知にもとづく社会科
§1 二一世紀社会科の方法の革新 中村 哲
1.はじめに/ 2.二一世紀社会科の鍵概念/ 3.二一世紀社会科の学習指導方法の性格と形態/ 4.二一世紀社会科の学習指導方法/5.おわりに
§2 インターネットを活用した社会科授業 /森本 直人
1.なぜ「インターネット活用」か/ 2.学習観変革の必要性/ 3.協調学習としてのインターネット活用
§3 シミュレーション・ゲームにもとづく社会科授業 /福田 正弘
1.はじめに/ 2.社会科教育におけるシミュレーション・ゲーム研究/ 3.社会認識方法としてのゲーミングシミュレーション/ 4.シミュレーション・ゲームを用いた社会科授業/ 5.おわりに
§4 ディベートにもとづく社会科授業 /戸田 善治
1.はじめに/ 2.教室ディベートにおける二つの役割/ 3.社会科でめざす望ましい市民像と教室ディベート/ 4.おわりに
§5 社会参加学習を取り入れた社会科授業 /岡明 秀忠
1.はじめに/ 2.参加とは何か/ 3.社会参加をめざす社会科授業構想とはどのようなものか/ 4.おわりに
Z 生涯学習としての新しい社会認識教育
§1 生涯学習としての社会認識教育の開発 /小原 友行
1.問題の所在/ 2.生涯学習施設における社会認識教育/ 3.活字メディアにおける社会認識教育/ 4.映像メディアにおける社会認識教育/ 5.地域社会における社会認識教育/ 6.生涯学習としての社会認識教育実践開発の方向性
§2 博物館における社会認識教育 /藤田 詠司
1.はじめに/ 2.博物館における社会認識教育の類型/ 3.おわりに
§3 活字メディアにおける社会認識教育 /吉川 幸男
1.社会認識教育における活字メディアの二重性/ 2.活字メディアの「ことば」と読者/ 3.活字メディアにおける社会認識への「教育」
§4 映像メディアにおける社会認識教育 /谷口 和也
1.映像メディアの特質/ 2.社会科授業の補完としての映像メディア/ 3.社会科授業の学習対象としての映像メディア/ 4.市民教育としての社会科教育と映像メディア
§5 地域社会における社会認識教育 /宮本 光雄
1.はじめに/ 2.社会認識・資質の育成と地域社会のもつ教育的意義/ 3.地域社会の変化とこれからの社会科教育
執筆者一覧

まえがき

 二〇世紀型社会科を脱構築し、二一世紀型社会科に新たな挑戦性を付与したい。私たちは、このような強い願いに立って、本書を企画いたしました。

 周知のように、わが国に社会科が誕生したのは二〇世紀の中葉ですが、その当時とは、社会も科学・技術もそして子どもの意識等々も大きく変わってしまいました。当然、二一世紀を生きる子どもたちの発達課題も変わってこざるを得ないといえましょう。従来の社会科、つまり二〇世紀型の内容や方法や形態などの社会科であってよいはずはありません。社会科の衰弱は、二一世紀を迎え、今を生きる子どもたちの新しい発達課題に、今日の社会科が挑戦し得ないところまで追いつめられていることの証とも言えましょう。折しも、新教育課程が実施に移され、「総合的な学習の時間」の全面展開がはじまっております。今こそ私たちは、新しい状況をも踏まえて社会科の存在意義とあり方を問い直し、「変革と提案」をキーワードに社会科教育のニュー・パースペクティブを描く必要性に迫られていると考えます。

 私たち社会認識教育学会は、これまで、『社会認識教育の理論と実践─社会科教育学の原理─』(葵書房、一九七一年)、『社会認識教育の探求─社会科教育学の展開─』(第一学習社、一九七八年)、『社会科教育の二十一世紀─これからどうなる・どうするか─』(明治図書、一九八五年)、『社会科教育の理論』(ぎょうせい、一九八九年)、『社会科教育学ハンドブック─新しい視座への基礎知識─』(明治図書、一九九四年)の五巻を編み、社会科教育を原理的に考察し現状を分析するとともに、あるべき姿を究明してまいりました。本書は、これまでの研究を踏まえるとともに、冒頭に述べた問題意識に立って、社会科教育のニュー・パースペクティブを様々な側面から展開したいと思います。

 Tでは、二一世紀社会科の挑戦性を多様な観点から考察し、UからYまでは、新しい知や学びの形成をめざす社会科の創造という観点からアプローチし、Zでは様々な観点から生涯学習としての社会認識教育を追究しております。読者の方々が、新しい社会科の必要性をご理解下されば、これに勝る喜びはありません。

 二一世紀社会科の創造をめざす本書は、森分孝治教授が広島大学大学院教育学研究科を二〇〇三年三月をもってご停年退官されるのを記念して企画されました。先生は、アメリカ合衆国の社会科成立史や社会科教育論の研究でパイオニアの役割を果たされるとともに、我が国初期社会科や現代の社会科教育実践等々についても鋭く分析され、社会科教育学研究のパラダイムを提起するという形で、つねに社会科教育学界をリードしてこられました。本書が、先生が進めてこられました社会科教育の本質的で基礎的原理的な研究の延長線上に位置づくものであればと願うものであります。

 最後になりましたが、本書の刊行は、明治図書出版の樋口雅子編集長のご理解とご支援をたまわりました結果であります。記して感謝申し上げます。


  二〇〇三年二月

   社会認識教育学会編集委員会 /片上 宗二 /小原 友行 /池野 範男 /棚橋 健治 /木村 博一

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      明治図書
    • 先行研究にあたるためにぜひ復刊してほしいです。よろしくお願いします。
      2022/5/5

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