- まえがき
- T なぜ、いま「学習問題」なのか
- 一 生きる力としての問題解決能力
- 1 通勤途中で遭遇したトラブル
- 2 人生は問題解決の連続である
- 3 生涯学習は人生の自由研究
- 二 確かな学力としての問題解決能力
- 1 文部科学省の示した学力の構造
- 2 企業から求められている問題発見能力
- 三 なぜいま改めて、社会科で学習問題なのか
- 1 「総合的な学習の時間」の創設
- 2 最近の社会科授業の実態から
- 四 社会科の学習問題を考える「問題」場面
- 1 茶色くなったリンゴ
- 2 「仏壇通り」の新聞広告
- 3 改めて社会科における「学習問題」について
- U 学習問題づくりの実践課題は何か
- 一 学習問題づくりは授業観の反映
- 二 学習問題づくりのどこに課題があるか
- 1 教師による無(ゼロ)からの提示
- 2 「どんなことを調べてみたいですか?」の問い
- 3 一人一人の学習問題を学級として集約すること
- 4 子どもに学習問題を言わせようとすること
- 5 学習問題を設定したら、すぐに調べさせる
- 6 毎時間学習問題をつくって調べること
- 三 学習問題にはどんな類型があるか
- 1 事実追究型
- 2 論理的追究型
- 3 探検型
- 4 意思決定型
- 5 作業・体験(的)型
- V 学習問題づくりのキーワード
- 一 解説・学習問題づくりにかかわるキーワード
- 1 「学習問題」と「学習課題」
- 2 学習問題の最低条件
- 3 学習問題をつくる・学習問題づくり
- 4 学習問題をつかむ・学習問題の把握
- 5 予想を立てる
- 6 調べる計画を立てる
- 7 意外な事実との出会い
- 二 学習問題づくりの学習過程 ―モデル化への試み―
- 1 事例・小単元「徳川氏の天下」の指導計画
- 2 学習問題を焦点化・具体化する場面の実際
- W 学習問題づくりの手順
- 一 指導計画作成能力をどう身につけるか
- 1 目標の分析・検討と「教材構造図」の作成
- 2 ねらいをキーワードで表す
- 3 ねらいを子どものことばで置き換えてみる
- 4 ねらいに導く学習問題を考える
- 5 学習問題に気づかせる教材と発問を工夫する
- 6 調べさせる事実を明らかにする
- 二 「学習問題」・実践の視点
- 1 授業研究におけるキーワードとしての学習問題
- 2 学習問題をテーマにした授業分析の視点
- X 学習問題のつくり方
- ――その教材・発問・子ども――
- 一 子どもはどんなとき問題意識をもつか
- 二 学習問題づくりの具体例
- 1 相矛盾する複数の資料を提示する
- 中学年「市のうつりかわり」/ 中学年「ごみのしまつ」/ 五年「とる漁業から育てる漁業へ」/ 六年「わたしたちのくらしと政治のはたらき」
- 2 子どもの考え(予想)を出させてから資料を提示する
- 中学年「みかんづくりのしごと」/ 中学年「火事をふせぐくふう」/ 中学年「和紙づくりのふるさと」/ 六年「大商人の力」
- 3 子ども同士の考えの違い(ズレ)を生かす
- 中学年「近所のこうえん」/ 中学年「玉川上水」/ 五年「国土の環境保全」/ 六年「板垣退助と自由民権運動」
- 4 身近な事実(具体物)と比較して、数量に対する驚きを生かす
- 中学年「市の人びとのくらしと水」/ 五学「雪の多い地域の人々の暮らし」/ 五年「自動車工業のさかんな町」/ 六年「聖武天皇と奈良の大仏」
- 5 子どもの素朴な感情に訴える
- 中学年「みかんづくりのしごと」/ 中学年「高原の人々のくらし」/ 五年「水産資源をふやす」/ 六年「発展途上国と国際連合のはたらき」
- 6 具体的な体験をとおして
- 中学年「古い道具しらべ」/ 中学年「水とくらし」/ 中学年「伝統的な工業のさかんな町」/ 六年「発展途上国と国際連合のはたらき」
- あとがき
まえがき
わたくしが「学習問題」とはじめて出会ったのは、教師になってまもなくの頃、地域での社会科研究会の場であった。当時、「なぜ、社会科の授業で『学習問題』が問題になるのか。算数でもないのに」と、率直にそう思ったものである。しかも、教師が問題を提示するのではなく、「子どもがつくる」ようにするというのである。相当のカルチャーショックを受けたことを最近のように思い出す。
それ以来、気づいてみると、自分の授業づくりの関心が学習問題に集中し、その難しさを自覚するようになっていた。学習問題づくりの場面の指導案や資料が自然に増えていったのである。
「子どもが学習問題をもつようになれば、その単元の授業は、ほぼ成功したと言える」
先輩教師がこのことを口にしたとき、何のことだか理解できなかったわたくしであったが、このことの意味が少しずつわかるようになったのは、その後相当時間が経ってからである。社会科における「学習問題」はじつに奥が深いだけでなく、授業そのものを左右する重要なキーワードあることを学ぶようになった。
教職に就いて二〇年目の頃、東京都で指導主事として指導行政に携わり、社会科の授業を参観する立場になったとき、それまでの実践・研究の成果を一冊の図書にまとめて刊行する機会を得た。それが、明治図書出版から出された『新社会科・学習問題づくりの授業技術』である。初版は、一九九〇年のことである。その後も幸いに版を重ねることができた。「学習問題」をキーワードにした図書がそれほど多くないことによるのだろう。
わたくしはいまも社会科の授業を参観する機会に恵まれているが、授業の前や後の授業検討会などで、必ずと言っていいくらい話題になることは、「問題解決的な学習をどのようにつくったらよいのか」「社会科の学習問題とはそもそも何なのか」「子どもが学習問題をつくるようになるためには、教師はどのように指導したらよいのか」「どんな資料を提示すると、子どもは問題や疑問をもつのか」など、社会科授業づくりの基本にかかわることである。それらは、いずれもかつてわたくしが悩んだこと、苦労したことである。
先輩教師が生み出した学習問題づくりのアイデア、わたくしが収集したアイデアをぜひ学んでほしいと願い、先の図書を紹介してきた。しかし、社会科の学習指導要領も改訂され、学習内容が一部学年間を移動したり、削除されたりしたこと、丁度この時期に絶版になったことなどから、「改訂版」の出版を勧めていただいた。
この機会に、全体的に見なおし、新たに今日的な視点から加筆修正を加えた。そして、書名を『社会科・学習問題のづくりのアイデア』として出版することとした。子どもが主体的に取り組む社会科の授業改善のために活用していただければ、わたくしにとってこれ以上の喜びはない。
今回も前回同様に、明治図書出版の樋口雅子編集長のお世話になった。この場を借りて、心からお礼と感謝を申しあげたい。
二〇〇四年八月 /北 俊夫
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- 明治図書