あなたの社会科授業は基礎・基本を育てているか

あなたの社会科授業は基礎・基本を育てているか

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社会科の役割を果たすための授業に必要なポイントを解説。

社会科の存続に対する危機感を社会科実践の充実に転化し、その役割を世に訴えること、すなわち社会科の責任を果たすことが求められている。本書は社会科の役割として求められている「公と私の問題」「資料活用能力」ほかのキーワードを抽出して構成した。


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ISBN:
4-18-409021-4
ジャンル:
社会
刊行:
5刷
対象:
小・中
仕様:
A5判 200頁
状態:
絶版
出荷:
復刊次第

目次

もくじの詳細表示

まえがき
T 社会科における「公と私」の問題をどう考えるか
〜改めて教科としての役割を問う〜
1 青少年の問題行動と社会科の役割
(1) 日本社会が変わった
(2) 問題行動は社会科と無関係か
2 子どもの親はどんな教育を受けてきたか
(1) いま子どもを育てていることの意味は何か
(2) 教育の「成果」はリレーされる
(3) 若者の勤労観、職業観の欠如―その原因の一つか―
3 「公意識」を考える新しい動き
(1) 教育雑誌に見る最近の動向
(2) 教育基本法の改正問題
(3) 法務省の法教育研究会の報告書
4 各地域での新しい取り組み
(1) 札幌市社会科教育連盟
(2) 東京都小学校社会科研究会
(3) 兵庫県小学校教育研究会社会科部会
(4) 長崎県小学校社会科研究会
U 子どもに資料活用能力は育っているか
〜能力低下の原因をさぐる〜
1 なぜ「資料活用能力」を取り上げるのか
2 「資料活用能力」低下には授業の実態が反映か
3 教科書や授業における資料活用の実態
(1) 教科書に見る「資料」掲載の傾向
(2) 社会科授業に見る「資料」活用の傾向
(3) ペーパーテスト調査に見る掲載資料の傾向
4 授業改善のポイント
V 社会の一般常識を身につけているか
〜朝学習の新教材〜
1 「こんなことも知らないのか」
2 社会科で身につけさせたい三つの知識
3 なぜ「一般常識としての知識」なのか
(1) 「県名が正しく書けない」という声
(2) 学習指導要領改訂の過程で出された声
(3) 知識は重層化していること
(4) 日常の生活を豊かにする知識
4 「一般常識としての知識」の内容とその指導
(1) 三つの一般常識としての知識
(2) 一般常識としての知識の具体的指導
W 地図を使いこなす学習技能の育成
〜「便利帳」としての地図帳〜
1 地図や地図帳は使われているか
2 「地図」をめぐるエピソードと課題
(1) 地図を描く能力は十分か
(2) 地図帳の活用能力は身についているか
(3) 社会科授業から地図が消える
3 地図に関する知識や見方の指導
(1) いつでも,どこででも指導する
(2) 教材にゲーム感覚を取り入れる
(3) 自己評価のための教材を開発する
(4) 各学年の指導事項を明確にする
X 人物を取り入れた小学校らしい歴史学習
〜歴史好きの子どもを育てる手だて〜
1 なぜ、人物中心の歴史学習なのか
(1) 小学校歴史学習の特色
(2) 人物を重視した歴史学習の取り組み
(3) 中学校との関係で考える
2 人物をどう取り上げるか
(1) 人物と歴史的事象
(2) 人物の扱いに時間的な軽重をかける
(3) 単元「日本の歴史」の指導計画(例)
3 人物中心の楽しい学習活動の組み入れ方
(1)  「室町文化」の授業から考える
(2) 楽しい学習活動の類型
(3) 多様な学習活動の組み入れ方
4 明治維新以降の歴史学習をどう充実させるか
(1) 明治維新以降の学習内容とその構成
(2) 人物の扱い方を工夫する
(3) 楽しい学習活動を工夫する
(4) 重視したいアジアの視点
5 学習指導要領に見る歴史学習の変遷
(1) 社会科成立以前
(2) 昭和22年版学習指導要領(試案)
(3) 昭和26年版学習指導要領(試案)
(4) 昭和30年版学習指導要領
(5) 昭和33年版学習指導要領
(6) 昭和43年版学習指導要領
(7) 昭和52年版学習指導要領
(8) 平成元年版学習指導要領
(9) 平成10年版学習指導要領
Y 社会科の発展的な学習をどう進めるか
〜「発展」の意味と内容を考える〜
1 発展的な学習の考え方
(1) 発展的な学習の課題は何か
(2) なぜ、発展的な学習なのか
(3) 学習指導要領に見る発展的な学習の扱い
2 基本の学習と発展的な学習との関連
3 「学習の複線化」に学ぶ発展的な学習の運営
(1) 「学習の複線化」と発展的な学習
(2) 発展的な学習の運営上のアイデア
(3) 発展的な学習を運営する際の要件
4 発展的な学習の視点とその事例
(1) 社会科での発展的な学習
(2) 社会科から総合的な学習への発展的な学習
Z 社会科の「小中連携」をどう考えるか
〜そのホップ・ステップ・ジャンプ〜
1 なぜ小中連携なのか
2 社会科の目標・内容はどう構造化されているか
(1) 社会科のねらい
(2) 社会科の内容構成
3 小中連携を図るための提言
―三つのステップ―
(1) ホップ〔はじめの一歩〕
(2) ステップ〔連携の充実期〕
(3) ジャンプ〔連携の発展期〕
4 小中連携にかかわるいま一つの課題
(1) 地域の社会科研究会の役割
(2) 総合的な学習をきっかけにして
あとがき

まえがき

 わたくしが文部省(当時)の教科調査官になったのは,1992年(平成4年)のことであった。平成元年版の学習指導要領が完全実施された年である。まもなく,わたくしは一つの質問にたびたび遭遇することになる。

 「社会科はなくなるのですか?」

 当時,省内はもとより,審議会においてもそのような動きはまったくなかったにもかかわらずである。この質問は,その後もなくなることはなく,引き続いている。いまもその不安を感じている人が少なくない。次のようなさまざまな状況を見ると,危機感をもつのも無理はない。

 ある時期から,社会科という教科の存続を心配する声が増幅する。「ある時期」とは,平成元年版の学習指導要領において,社会科に関連して二つの大きな動きがあったときである。一つは小学校低学年の社会科を廃止して「生活科」が新設されたこと,いま一つは高等学校において,社会科が「地理歴史科」と「公民科」に再編されたことである。中学校においては,すでに分野ごとの学習になっていることから,社会科の名称は教科の看板になっているに過ぎない。社会について総合的に学ぶ場は,いまや小学校の四年間だけになっている。こうした動きを見ると,小学校の社会科にもメスが入れられるのではないかという不安をもつのは否めない。

 文部科学省は,学習指導要領の基準によらない先進的な研究開発ができる仕組みをつくっている。研究開発学校である。これまでの取り組み状況を見ると,教科構成のあり方を研究対象にする学校が多く,社会科を廃止して新教科を開発する研究が多く見られた。

 そして,平成10年版学習指導要領で創設された「総合的な学習の時間」である。小学校中学年においては,社会科と総合的な学習の教材や学習活動に共通性や類似性がある。総合的な学習の時間が提唱されたころ,「おいしいところが総合的な学習にもっていかれる」「社会科が草刈り場になる」などと盛んにいわれた。

 一方,学校の現場に目を向けると,社会科はどうも指導しにくい教科のようである。生活科や総合的な学習によって,いわゆる社会科教師の減少も課題になっている。社会科は子どもにも人気がない,好かれていないという現状がさまざまな調査から明らかになっている。

 こうしたさまざまな現状や課題が見られるのは,社会科が本来の役割を十分に果たしていないからではないかと考える。現在の青少年の行動実態を検討したり,社会科がこれまで目指してきたことを改めて確認したりすると,いまこそ社会科本来の役割を発揮する重要な時期ではないかと思われる。社会科の存続に対する危機感を社会科の実践の充実に転化し,社会科の役割を世に訴えること,すなわち社会科の責任を果たすことが求められているといえそうである。

 本書『あなたの社会科授業は基礎・基本を育てているか』は,わたくしのこうした問題意識にもとづいてまとめられたものである。いま社会科の役割を果たすために求められていることとして,「公と私の問題」「資料活用能力」「社会常識としての知識」「地図の学習技能」「歴史学習」「発展的な学習」「小中連携」の七つのキーワードを抽出して本書を構成した。

 本書が各学校や教室において日々の社会科授業に生かされ,社会科をさらに元気づけることにつながるとともに,社会科の大切さを学校内外の多くの人たちに認識されるようになれば,これ以上の喜びはない。

 本書の企画に当たっては,今回も明治図書出版株式会社の樋口雅子編集長から多大のご指導をいただいた。この場を借りて,お礼を申しあげたい。


  2005年2月   /北 俊夫

著者紹介

北 俊夫(きた としお)著書を検索»

1947年(昭和22年),福井県に生まれる。

東京都公立小学校教員,東京都教育委員会指導主事,文部省初等中等教育局教科調査官を経て,現在岐阜大学教授。

※この情報は、本書が刊行された当時の奥付の記載内容に基づいて作成されています。
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      明治図書
    • 「生きる力」を育成すると言うことが言われてもう何年にもなる。社会科が果たすべき役割は大きいことが言われ続けてきた。研究会などで見られる授業は,やはりよく考えられており,基礎基本が育てられていると言うことが分かる。
       しかし、私自身を含め,普段の授業では,「これでいいのか」と思う授業がたくさんある。北氏が言われている「資料活用能力」「社会常識としての知識」そして,「地図の学習技能」は、教師自身が十分理解できず、授業を行なってしまっている.
       北氏がTで述べている「公と私の問題」については、おそらくどの教師も思うことであり、嘆いているところであると思う。しかし、その原因あるいは解決を自分自身の社会科の授業に見つけている者はどれだけいるだろうか。「あなたの社会科は…」と問われて、心苦しいところがあった。
       「生きる力」を考えるとやはり社会科の責任は大きい。「社会科は難しい…」そう感じている教師は是非読んで欲しい。
      2005/5/14bigt

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