- まえがき
- T 社会科の基礎・基本をどう考えるか
- 一 基礎・基本のとらえ方
- 1 「生きる力」のとらえ方
- 2 時代の変化をとらえるむずかしさ
- 3 何が基礎・基本か
- 二 基礎・基本の三条件
- 1 「応用がきく」ということ
- 2 基礎・基本は身につきにくいということ
- 3 個性的であるということ
- 三 個性的な調べ方
- 1 ユニークな調べ方をする子ども
- 2 資料がなくても調べる子ども
- 3 基礎・基本の条件
- 4 基礎・基本がなぜ個性的か
- U 基礎・基本は一八の学習技能だ
- 一 「はてな?」発見技能を育てる
- 1 「はてな?」発見技能が弱い
- 2 「はてな?」発見の体験例
- 3 授業の例
- 二 調べる技能(一三)を育てる
- 1 社会科固有の知識をどうするか
- 2 二種類の「調べ方技能」
- 三 書く(メモ)技能を育てる
- 1 ノートに書かせるには
- 2 どんな内容を書いたノートがよいか
- 3 ノートは板書の内容で決まる
- 4 板書と授業のあり方
- 四 話し合い・考える技能を育てる
- 1 「話し合い」から「調べる」
- 2 基礎・基本の徹底
- 3 調べて考える授業
- 五 表現技能を育てる
- 1 教師も順番でスピーチの練習
- 2 発言のしかたABCD
- 3 文章表現のしかたを鍛える
- V 地図指導の系統(到達目標)
- 一 地図指導にあたって考えること
- 二 地図指導の系統表八六
- W 歴史的な見方考え方の指導の系統(到達目標)
- 一 歴史的な見方考え方の指導にあたって
- 二 歴史的な見方考え方の指導の系統表
- X 社会科用語の到達目標
- 一 用語の到達目標について
- 二 社会科用語の到達目標分析表
- Y 歴史的な見方考え方の指導の系統(到達目標)
- 一 疑問を見つける時間に ――面白い教材が意欲を喚起
- 1 社会からの要求
- 2 三つの仕事をする
- 二 調べる力育成へ「支援」を ――ものと体験を組み合わせて
- 1 二つの調べ方
- 2 育てたい技能
- 三 公民としての基礎を培う ――感謝の念と思いやりを
- 1 人間性と学力磨く
- 2 見る目を育てる
- 四 歴史学習をもっと面白く ――興味引き出す教材の開発を
- 1 歴史学習で育てる力
- 2 なじみの昔話題材に
- 五 民主政治の基本は「選挙」 ――面白い発問で意味を学ばせる
- 1 政治学習を面白く
- 2 簡単に結論出さない
- Z 「大まかな時代の流れ」がわかる訓練ポイント
- 一 前の時代と比べてみる
- 二 各時代の典型的なネタを提示する
- 三 絵画資料の読み方の基礎・基本
- 四 「人物史と並行して学ぶ事件史」の試み
- 1 事件から人物史へ
- 2 鉄道建設の中心人物
- 3 歴史は繰り返す?
- [ 基礎学力を鍛える授業
- 一 ワークを使って歴史的な見方考え方を鍛える
- 1 歴史年表で歴史的見方を鍛える
- 2 歴史年表を国語辞典のように使わせる
- 二 地図資料を使って歴史的見方考え方を鍛える
- 1 ペリー来航の航路
- 2 黒船は固有名詞か? 普通名詞か?
- 3 ペリー来航の裏ばなし
- 4 北の黒船事件
- 5 ペリーの日本対策
- 6 ペリーが日本に来た目的
- 7 日米和親条約をめぐって
- 8 指導案――ペリー来航をめぐって
- 三 新内容・オリンピックを授業する
- 1 授業の契機
- 2 オリンピックの授業
- 3 小説的授業記録の書き方
- 4 前島康志氏の手紙
- 5 橘小学校研究会に参加して
- \ こんな内容をどう教えるか
- 一 水を巡る紛争、どう教材化する?
- 二 「果物王国」をどう教えるか
- 三 テスト問題でどう学習させるか
- 1 基礎的なことばのテスト
- 2 童謡の本当の意味は?
- 四 「はてな?」クイズに挑戦
- 1 「はてな?」クイズ
- 2 「はてな?」クイズの解説
- ] 社会科は「学習技能」の指導だけでよいか?
- 一 ネタは手段だが目的でもある
- 二 面白い内容は自然に覚える
まえがき
新しい学習指導要領は、吹き荒れる学力低下論を考えたのか、二〇〇一年一月以来「最低基準」ということになった。これまでの到達目標ないし標準という考え方をあらためたのである。学習指導要領が「最低基準」になったということは、学習指導要領を忠実に具体化している教科書も、必然的に「最低基準」ということになり、この内容を全児童に理解させなければならなくなった。
新しい学習指導要領は、基礎・基本の徹底と、考える力を育てることをめざしている。
ところが、何が基礎・基本なのかはっきりしない。これをはっきりさせなくては、授業の目標のたてようがない。
そこで、もちろん「私案」(試案)であるが、「社会科の基礎・基本をこのようにとらえたらどうか」というものを提案してみた。基礎・基本を三つの観点から考えると、「基礎・基本は一八の学習技能」ととらえられる。しかし、一八の学習技能は社会科だけで育てるものではない。社会科を中心に育てるけれども、社会科には社会科固有の知識が必要である。
最低限の知識(主として用語)がなくては、社会科の授業は成立しない。では、どの学年で、どんな用語が必要か。これを選定することは容易なことではないが、教科書をもとにしながら私の経験を生かして、独断と偏見で選定してみた。
しかも、この用語を「必修用語(基礎的基本的用語)」と「中級(これくらいは知っておいてほしい用語)」、それに「上級(このくらい知っておれば文句なしの用語)」の三段階に分類して提案してみることにした。
これは到達目標になりうるし、これを体得させる授業にしてほしいと願っている。つまり、基礎・基本をきっちり指導できる授業に改革してほしいのである。これが提案の第一点目である。
第二の提案は、地理的な見方考え方と歴史的な見方考え方を育てるために、それぞれ「系統表」をつくったことである。例えば、地理的な見方考え方(学習技能)を育てるために、学年ごとに「読図指導、描図指導、地図記号、方位」に分けて指導の系統表をつくってみたのである。読図指導をしながら描図指導を取り入れ、地図記号を教え、方位の見方を指導していくように工夫した。
歴史的な見方考え方(学習技能)指導の系統表は、学年ごと、単元ごとに、「今昔の相違」「時代相の見方考え方」「因果関係的見方考え方」の三つの観点に分け、それぞれ単元ごとに到達目標を表にして提示している。
これを目安にして到達目標をつくり、指導にあたれば、子どもに力がつくことは間違いない。なぜなら、この表の内容は、実践に基づき、子どもに具現することができたものであるからである。
第三の提案は、基礎学力を育てる授業はどうあればよいかということや、授業改革するために必要な指導技術についてである。「新しい指導法とはこんなものではないか」という提案である。
久しぶりに書く社会科の著書で、胸にときめくものがあった。社会科授業の改善に少しでもお役に立てば幸いである。
最後になったが、二冊同時に書く機会を与えて下さった明治図書編集部の江部編集長に厚くお礼を申し上げたい。
二〇〇一年一一月 /有田 和正
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- 明治図書