中学校社会サポートBOOKS
PBL的社会科単元構成による中学地理の授業デザイン

中学校社会サポートBOOKSPBL的社会科単元構成による中学地理の授業デザイン

VUCA時代を生き抜く子どもを育てる新しい地理授業づくり

社会で起こっている事象の文脈に即して必要な知識を教師がしっかりと教えつつ、その知識を活用したりさらに必要な知識を獲得し、問題を的確にとらえ有効な解決策を考えることをゴールに設定するPBL的社会科単元構成の具体を、地理的分野で提案しています。


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PDF
ISBN:
978-4-18-399137-9
ジャンル:
社会
刊行:
対象:
中学校
仕様:
A5判 176頁
状態:
在庫あり
出荷:
2024年3月5日

CONTENTS

もくじの詳細表示

はじめに
Chapter1 PBL的社会科単元構成による地理的分野の授業づくり
01 PBLとは
02 PBL的社会科単元構成とは
03 PBL的社会科単元で取り組むプロジェクト[第1次]
04 プロジェクトのために知っておくべきことは[第2次]
05 再度プロジェクトに取り組む[第3次]
06 PBL的社会科単元構成と学習評価
07 学習をサポートするワークシート
Chapter2 「世界と日本の地域構成」の授業づくり
01[世界と日本の地域構成] 世界や日本の姿を説明する小学校社会科教科書の改善案を提案しよう
Chapter3 「世界の様々な地域」の授業づくり
01[世界各地の人々の生活と環境] 世界各地の人々の生活様式は変化するべきなのだろうか,評論文を書こう
02[アジア州]成長と変化 アジア州のスラム問題を解決する方法を提案しよう
03[ヨーロッパ州]多様性の中の統合,統合の中の多様性 EU域内の自動車工場建設を提案しよう
04[アフリカ州]支援と自立 アフリカの「健康と福祉」を実現する支援策を提案しよう
05[北アメリカ州]魅力の創造 アメリカ合衆国における雇用問題の解決策を考えよう
06[南アメリカ州]開発と環境 南アメリカ州(ブラジル)のグリーン成長戦略を考えよう
07[オセアニア州]結び付きと変化 オセアニアの島々は,今後どの国とより関係を深めていくべきか考えよう
Chapter4 「日本の様々な地域」の授業づくり
01[日本の地域的特色と地域区分] 日本の特色をもとに地域区分をしてみよう
02[九州地方]自然環境 九州地方の自然環境を活かしたサスティナブルツーリズムを提案しよう
03[中国・四国地方]交通・通信 中国・四国地方のストロー現象の解決策を提案しよう
04[近畿地方]人口や都市・村落 近畿地方の空き家問題解決策を提案しよう
05[中部地方]産業 中部地方のまちに,新たな地場産業振興策を提案しよう
06[関東地方]結び付き 大規模地震発生時の帰宅困難者問題の解決策を提案しよう
07[東北地方]伝統・文化 東北地方の伝統文化の衰退・途絶問題解決策を提案しよう
08[北海道地方]自然環境 「食と観光」を関連づけた北海道産食材を使った地域活性化案を提案しよう
09[地域調査,地域の在り方] 西宮市香櫨園地域において,台風高潮時に有効な避難作戦を提案しよう
おわりに

はじめに

◯予測困難な時代だから

 現代はVUCA(Volatility:変動,Uncertainty:不確実性,Complexity:複雑性,Ambiguity:曖昧性の頭文字をとった造語)の時代と言われています。先行きが不透明で予測が困難だということです。歴史の転換期なのでしょうか。こんな時代には,これまでのビジネスモデルが破綻したり,想像もつかなかったビジネスが急に台頭したりします。すでに終身雇用制は崩れつつあります。変化する社会に対応できる柔軟な適応力を身につけ,いざというときには転職できる力がないと長い人生を乗り切っていけないかもしれません。急速な変化の中ではテクノロジーを駆使して情報を収集したり,物事に対応したりすることも不可欠です。また,人生の途中で職を変わることが前提になったり,仮に同じ職場にいたとしても一生同じ仕事をし続けることはないかもしれませんので,職種が変わったときにも使えるスキルも重要になるでしょう。そんな力が誰にでも簡単につくでしょうか。

 これまでもそうだったのですが,このような時代には一層思考力や判断力が重要になります。AIやロボットなどのテクノロジーの進歩もめざましいものがあります。これも早くから言われていることですが,2045年がシンギュラリティ(singularity)(Kurzwell, 2006)という予測もありますので,これまであった多くの仕事が人間のものでなくなるかもしれません。この予測が正しいとすれば,今後は人間にしか考えられないようなことを考える力が重要になるでしょう。これもとても難しいことです。

 もちろん思考や判断のためには幅広い知識が必要です。思考力や判断力を核に,VUCAな時代を乗り切るために必要な授業とはと考えたときに,今回提案するPBL的な社会科単元の構成が少しは役立つのではないかと考えました。


◯授業観・学習観の転換

 中央教育審議会の議論を見ていると,授業観や学習観の転換の必要性が強調されています。授業観や学習観の転換の核心は,学習者観の転換だと思っています。学習者観に関する議論は,古くから行われています。例えば,学習者をタブラ・ラーサ(tabula rasa:文字の書いていない白紙状態)と見るものや,経験主義や,社会構成主義に基づいたものなど様々あります。

 ブルーナー(Bruner, J. S.)は,4つのフォークペダゴジーで,模倣する者,無知な受容者,思考する者,知識の運営者という子供(学習者)の見方を示しています(Bruner, 1996,岡本ほか訳,2004)。これまでの学校教育では,子供を必要以上に模倣する者や無知な受容者として位置づけてきたのではないでしょうか。この傾向は,小学校よりもむしろ中学校で,さらに高等学校で顕著だったかもしれません。一方,高等学校では,近年になって探究の授業が重視され,私が勤務する県内でも多くの学校が探究型の授業に取り組んでいます。大学の入試でも,総合型選抜が注目されるようになり,探究型の学習の成果が発揮できるような入試も実施されてきています。フォークペダゴジーに話を戻しますと,学習者観の転換は,模倣する者や無知な受容者から,思考する者や知識の運営者に180度転換するようなものではありません。思考するための知識は重要ですので,4つのフォークペダゴジーのバランスの問題です。

 VUCAな時代に必要な力が,人間にしか考えられないようなアイデアを生み出す力や,それを実行する企画・実践力だとすれば,先生が教え生徒が答えるというTeach→Studyよりも,生徒が考え先生がサポートするLearn→Coachのほうが有効でしょう。コーチングでは,「可能性や答え,それらを見つける力は全てクライアント(コーチングを受ける人)に具わっているという前提に立ち,クライアントの力や可能性を引き出し行動化を促すこと」(曽余田,2011)という考え方をしています。もちろん,すべてが生徒に備わっているわけではありませんから,よりよいアイデアを引き出すために必要な知識や技能をつける手助け(つまり教えること)も必要です。なにより学習指導要領に即して授業を実践することが求められている学校現場では,生徒が獲得すべき知識もたくさんあります。

 学習者中心の授業が求められていますが,学習者中心とは何も教えない授業ではありません。教えたほうがよいこともあります。Learn→Coachという社会構成主義的な授業観をベースにしつつ,Teach→Studyという客観主義的な授業観を組み込んで単元を組み立てることが大切でしょう。社会で起こっている問題を的確にとらえ,有効な解決策を考えるためには,当然知識が必要なのです。社会で起こっている事象の文脈に即して,必要な知識を獲得する,そしてその知識を活用して,問題を的確にとらえ,有効な解決策を考えることこそ大切なのではないかと考えています。本書ではこういった考え方に基づいて,PBL的社会科単元構成を提案しています。


○PbBLを含んだPjBLによる単元構成

 本書で提案しているPBLは,本編でも述べていますが,プロブレム・ベースド・ラーニング(Problem-Based Learning:PbBL)を含んだプロジェクト・ベースド・ラーニング(Project-Based Learning:PjBL)を想定しています。また,本書で提案するPBLに「的」という言葉をつけているのは,学習者の問いに完全に依存することがない点で,いわゆるPjBLの定義とは異なっていることを示しています。PBL的な単元構成を提案するのは,社会で起こっている事象に即してその解決策を考えることをゴールに設定し,そのために必要な知識を構造化し,獲得・活用させたいためPbBLを組み込んでいます。PbBLは医学部の教育で用いられてきた方法で,教員が学生に症例のシナリオを示して,それについて徹底的に事実を調べ,可能性のある仮説を複数立て,グループで共通認識をもてるようにする学習方法です。

 本書で提案している単元プランは,単元全体としてはPjBLになっていますので,単元の最初からプロジェクトに対する成果物(product)を要求しており,パフォーマンス課題(performance task)のような位置づけになっています。解決のためのプランをよりよいものにするためには,少なくとも事象に関連した事実のチェックが必要です。そのうえで,プランが本当に実行可能なのか,また,実行したとしてどの程度問題を解決するのか,実行することにより弊害は発生しないのかといったことについても考えながら,成果物をよりよいものに「作り替える」プロセスを設定しています。問題をよりよく解決するプランにするためには,どのようなことに目配せをしなければならないか,つまりどのような知識が必要なのかを,生徒が協働して考えることが重要だという考えから作成しています。さらに,「作り替える」という作業が知識とのさらなる対話を生み出し,自分自身の今を,事実や知識に反射させることによってメタ認知することにもつながります。このような省察を繰り返しながら,社会科地理的分野で学習する知識が,社会の問題解決のために活用できるという実感をもたせたいと思っています。


   /編著者 吉水 裕也

著者紹介

吉水 裕也(よしみず ひろや)著書を検索»

1962年大阪府生まれ。兵庫教育大学理事(副学長),大学院学校教育研究科教授。兵庫教育大学大学院連合学校教育学研究科教授。博士(学校教育学)。中・高教員などを経て,現職。専門は社会科教育学,地理教育論。

※この情報は、本書が刊行された当時の奥付の記載内容に基づいて作成されています。
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      明治図書
    • ぜひ他分野のものも出してほしい
      2024/1/2820代・中学校教員
    • 地理の授業で、単元を貫く問いや単元構成を考える上で参考になった。
      2023/12/1330代・中学校教員
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