- 第1章 道徳授業観のアップデート
- 1 達成感のある授業 どうすれば,もっと達成感のある授業ができますか?
- 2 道徳授業のねらい どうすれば,道徳科の目標に迫る授業ができますか?
- 3 生徒の発言 どうすればねらいに近づくような発言をさせられますか?
- 4 意見の交流 どうすれば活発な意見交流のある授業をつくることができますか?
- 第2章 教材分析と授業づくりのアップデート
- 1 教材研究 指導書通りに授業づくりをしてはいけないのですか?
- 2 ねらい,主題,内容項目 授業のねらいと主題,内容項目はどう区別すればよいですか?
- 3 授業展開 ワンパターンの展開から抜け出すには,どうすればよいですか?
- 4 漫画,イラスト,写真教材 漫画やイラスト,写真の教材をもっとうまく扱うには,どうすればよいですか?
- 5 偉人教材 偉人を扱った授業は,どのようにつくればよいですか?
- 6 ローテーション道徳 ローテーション道徳をもっと有効に活用するには,どうすればよいですか?
- 第3章 発問のアップデート
- 1 発問の種類と使い方 内容の濃い授業をするためには,どのように発問を使い分ければよいですか?
- 2 中心発問 中心発問に対する意見をもっと引き出すには,どうすればよいですか?
- 3 視野を広げる発問 どうすれば,もっと話し合いの幅を広げられますか?
- 4 多面的・多角的発問 多くの生徒から考えを引き出すには,どうすればよいですか?
- 5 切り返し・問い返し発問 どうすれば道徳的価値を深めることにつながる切り返しや問い返しができますか?
- 6 深化発問 どうすれば生徒の心を揺さぶる発問ができますか?
- 7 自我関与させる発問 どうすれば,もっと道徳を自分事として捉えさせられますか?
- 8 生徒の問い 中心発問の意図と違う方向に議論が進んでしまうときは,どうすればよいですか?
- 第4章 授業展開のアップデート
- 1 導入 導入と展開をうまく結びつけるには,どうすればよいですか?
- 2 範読 授業の中で範読をどのように位置づければよいですか?
- 3 生命尊重・畏敬の念 生命尊重や畏敬の念の授業を深い学びにするには,どうすればよいですか?
- 4 問題解決的な学習 問題解決的な学習と,これまでの授業の違いは何ですか?
- 5 問題解決的な学習 問題解決的な学習は解決方法を中心に授業を進めてよいのですか?
- 6 現代的な課題 現代的な課題を扱った授業は,どのように進めればよいですか?
- 7 二項対立の授業 二項対立の授業は,どのように進めればよいですか?
- 8 意見の分類・整理 中心発問の後,生徒の意見をどのようにまとめ,次の発問につなげればよいですか?
- 9 振り返り 展開後段をもっと活性化するには,どうすればよいですか?
- 10 振り返り 授業の振り返りは,どのように行えばよいですか?
- 11 授業の終末 授業の終末をもっと充実させるには,どうすればよいですか?
- 12 変容の見取り どうすれば生徒の変容をもっとうまく見取ることができますか?
- 第5章 話し合いのアップデート
- 1 座席配置 話し合いのときの座席配置は,どうすればよいですか?
- 2 小集団学習 ペアや小集団での意見交流をもっと活発にするには,どうすればよいですか?
- 3 グループでの話し合い グループ活動をもっと活性化するには,どうすればよいですか?
- 4 指名 生徒の意見につながりが出るように指名するには,どうすればよいですか?
- 5 役割演技 役割演技を有効活用するには,どうすればよいですか?
- 6 ゲストティーチャー ゲストティーチャーを有効活用するには,どうすればよいですか?
- 第6章 板書,ワークシートのアップデート
- 1 板書の効率化 どうすれば,もっと効率よく板書することができますか?
- 2 構造的な板書 生徒の意見を分類したり整理したりするよい方法はありませんか?
- 3 心情円盤 簡易アナライザーなどの教具を使ったとき,どのように板書に反映させたらよいですか?
- 4 ワークシート 本当に効果的なワークシートとは,どのようなものですか?
はじめに
「僕は嫌だ!」
この特徴的なセリフは,アイドルグループ・欅坂46の4枚目のシングル『不協和音』の中で印象的に叫ばれています。特徴的なダンスと強烈なメッセージ性をもった歌詞,そして魅力的なセンター・平手友梨奈さんの存在が相まって,象徴的に耳に残ります。
私には,「僕は嫌だ!」という言葉が,「道徳の授業を変えてほしい」という言葉に聞こえてきました。予定された答えを言わなくてはならない道徳授業,答えが1つしかない道徳授業への生徒や先生の心の叫びが「僕は嫌だ」という言葉に聞こえてきたのです。
予定調和的な協和音的道徳授業ではなく,多面的・多角的な考えに基づいた“不協和音”から生み出される新しい考え方,納得できる生き方を得られる「不協和音的道徳授業」を求める心の叫び声なのではないかと。
道徳が教科化され,小学校は4年目,中学校では今年で3年目になります。さて,道徳の授業はどう変わってきたでしょうか。
「自分の意図する答えが出てこなかったら,どうしたらよいのでしょうか?」
「生徒の多くの発言をどのようにまとめていったらよいのかわかりません…」
年間に30〜50本ほどの出前授業と研修会を務めさせていただいていますが,こうした学びの場では,必ず最後に質問タイムが用意されています。その際に,上のような質問が必ずと言ってよいほど出されます。
道徳が教科化されたことはわかっていても,どのように授業を変えていけばよいのかわからないままの先生がたくさんいらっしゃるのです。多くの若い先生は,「授業を変えたい」「もっと考え,議論できる授業をつくりたい」と考え,授業を実践するものの,どの方向に進んでよいかがわからないまま試行錯誤を重ねています。
私が主催する「AtoZ道徳学習会」には,休日にもかかわらず,毎月たくさんの先生が参加されます。若い先生だけでなく,中堅からベテラン,そして教頭や校長といった管理職の先生にも参加いただいています。教材研究や授業の進め方などについて道徳授業のABCから学んでいくと,「これまでモヤモヤしていたものがなくなり,自信をもって生徒の前に立つことができるようになりました」「教えなくてはという強い呪縛がありましたが,一緒に考えるという考え方に変えてから,生徒も私も自然体で授業に臨めるようになりました」といった感想を参加者の方がもたれるようになってきます。
教科化されてからの2年間は,これまでの道徳を大きく転換するために大きなエネルギーを使ってきました。どちらかというと理念が先行していたのかもしれませんが,多くの研究や実践を通して,道徳科のイメージがしっかりとでき上がってきました。
自動車に例えましょう。これまでとは違う道徳科という自動車のスタイルやエンジンの性能,環境への配慮などの完成イメージが固まりました。道徳科の目標や目指すべきところは十分に把握できました。さて,次に何が必要でしょうか。
次に必要なのは,タイヤやハンドル,シート,電気系統などのパーツを完成させ,質を向上させていくことです。 つまり,これからは,具体的な授業の進め方や教材研究の方法,対話や議論のさせ方などの方法論的な学びが必要となるということです。よく「ハウ・ツーものは…」と批判を受けることがありますが,理論的なことをしっかりと身につけたうえでの方法論ほど重要なものはありません。機は熟しています。今こそ授業方法に関する詳細な水先案内人が必要です。
本書『WHYでわかる HOWでできる 中学校道徳授業アップデート』は,そうした期待に十分応えられる内容となっています。
「僕は嫌だ」と叫んだ先生もそうでない先生も,ぜひ本書を手にとっていただきたいと思います。これまで,多くの学校現場でいただいた質問や疑問を系統的に並べ,「WHY(なぜなのか)」そして「HOW(どうしたらよいのか)」という2つの視点から,道徳授業をアップデートするための方途を示しています。第1章から第6章まですべての章において理論的な裏づけをしてあるので,道徳授業の本質から板書やワークシートまでを系統的に学んでいただける構成となっています。
欅坂46の『不協和音』の中で,調和だけでは危険であり,既成概念を壊して新しい世界をつくりだすことの大切さが語られています。本書を読み終えたときに,今までの既成概念に囚われた授業スタイルから,人間らしい生き生きとした新しい授業スタイルにアップデートしていただけると信じています。
すべては子どもたちの幸せのために。
2021年7月 /山田 貞二
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- 明治図書
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