- はじめに
- 第1章 新しい学習評価
- 1 観点別評価を行うための基礎知識
- 1 学習指導要領の改訂の概要
- 2 評価とは
- 2 「知識・技能」「思考・判断・表現」「主体的に学習に取り組む態度」の評価
- 1 目標と評価規準の対応
- 2 多様な評価方法とその実際
- 3 内容のまとまりごとの評価の具体例
- 第2章 豊富な実例でよくわかる具体的な評価方法
- 「知識・技能」の評価方法と工夫
- 1 物理領域
- 1 思考・判断・表現の基礎となる知識・技能
- 2 知識を身につけさせる方法と評価問題例
- 3 技能を身につけさせる方法と評価問題例
- 2 化学領域
- 1 化学領域における知識に関わる指導と評価
- 2 化学領域における技能に関わる指導と評価
- 3 生物領域
- 1 知識に関わる指導と評価―事実的な知識から概念的な理解まで
- 2 技能に関わる指導と評価―習得から活用まで
- 4 地学領域
- 1 身につけたい知識
- 2 知識の問題例
- 3 技能の問題例
- 4 パフォーマンステストの実施
- 「思考・判断・表現」の評価方法と工夫
- 1 第1学年 物理領域 光の反射・屈折
- 2 第1学年 物理領域 凸レンズによる像
- 3 第1学年 物理領域 音の大きさや高さ
- 4 第1学年 化学領域 赤ワインの蒸留
- 5 第1学年 化学領域 状態変化
- 6 第1学年 化学領域 溶解度と再結晶
- 7 第1学年 生物領域 脊椎動物 体のつくりと食物
- 8 第1学年 生物領域 生物の分類
- 9 第1学年 生物領域 花のつくりと果実
- 10 第1学年 地学領域 地震の伝わり方と地球内部の働き
- 11 第1学年 地学領域 大地の変動
- 12 第1学年 地学領域 火山
- 13 第2学年 物理領域 電流と回路
- 14 第2学年 物理領域 電流と磁界
- 15 第2学年 物理領域 電気の正体
- 16 第2学年 化学領域 酸化還元
- 17 第2学年 化学領域 質量保存の法則
- 18 第2学年 化学領域 化学変化と物質の質量
- 19 第2学年 生物領域 光合成
- 20 第2学年 生物領域 消化
- 21 第2学年 生物領域 感覚器官
- 22 第2学年 地学領域 日本の天気の特徴
- 23 第2学年 地学領域 雲や霧の発生
- 24 第2学年 地学領域 海陸風
- 25 第3学年 物理領域 浮力
- 26 第3学年 物理領域 力学的エネルギーの保存
- 27 第3学年 物理領域 等速直線運動
- 28 第3学年 化学領域 化学変化とイオン
- 29 第3学年 化学領域 化学電池
- 30 第3学年 化学領域 酸,アルカリとイオン
- 31 第3学年 化学領域 化学変化と電池
- 32 第3学年 生物領域 遺伝の規則性と遺伝子
- 33 第3学年 生物領域 生物の種類の多様性と進化
- 34 第3学年 生物領域 遺伝の規則性
- 35 第3学年 生物領域 有性生殖と無性生殖
- 36 第3学年 地学領域 月や金星の運動と見え方
- 37 第3学年 地学領域 年周運動と公転
- 38 第3学年 地学領域 惑星と恒星
- 39 第3学年 生物領域 自然と人間(第7単元)
- 「主体的に学習に取り組む態度」の評価方法と工夫
- 1 授業での見取り・行動観察
- 1 主体的に学習に取り組む態度の行動観察による評価の特徴
- 2 行動観察による評価の考え方
- 3 行動観察による評価の実際
- 4 おわりに
- 2 ワークシート・ノート
- 1 評価手段・材料としての「ワークシート・ノート」
- 2 「ファイル・ノートチェック」の落とし穴
- 3 形成的評価と総括的評価
- 4 単元末のファイル・ノートチェック
- 3 レポート
- 1 レポートの特徴
- 2 授業で行う学習活動のレポートの評価―探究活動と振り返り
- 3 家庭学習課題のレポートの評価―自由研究・調べ学習
- 4 ポートフォリオ
- 1 ポートフォリオを「主体的に学習に取り組む態度」の評価に生かす場面について
- 2 ポートフォリオを活用した評価と活用事例
- 3 おわりに
- 5 相互評価・自己評価
- 1 「主体的に学習に取り組む態度」の相互評価・自己評価による評価の特徴
- 2 相互評価・自己評価による評価の場面
- 3 相互評価・自己評価による評価の実際
- 4 おわりに
はじめに
平成29年の学習指導要領の改訂の作業は,これまでとは異なる流れの中で進んだ。従来は,校種や教科ごとに目標や内容を決め,それを積み上げていたのだが,教科ごとの話し合いを後回しにしたのだ。学びの主体者である児童生徒にどのような力が必要であるかを押さえることを教育課程全体の中で先にしたのである。
まず,教科横断的に目標及び内容が,育成を目指す資質・能力の3つの柱(「知識及び技能」「思考力,判断力,表現力等」「学びに向かう力,人間性等」)に沿って再整理された。評価では,4つの観点が3つになった。
次に,各教科等でどのような資質・能力の育成を目指すのかを明確化し,これにより,「子どもたちにどのような力が身についたか」という学習の成果を的確に捉えることとした。
さらに,主体的・対話的で深い学びの視点からの授業改善を図る,いわゆる「指導と評価の一体化」の実現を求めた。その際,教育課程の実施状況を評価してその改善を図っていく際に,学習評価を基に教育課程の改善・充実を図るというPDCAサイクルを確立することが重要だとした。
こういうことが,全教科にわたった。すなわち,教育基本法→学校教育法→学習指導要領の改訂とつながる演繹的な進め方がなされた。結果的に,学習指導要領及びその解説を通じて,教える内容や指導の仕方まで,法のアプローチが及ぶようになりつつある。授業改善を組み立てる際の基本となるような価値・規範が,学校に大きな影響を与えてきている。
いずれにしても,児童生徒が「理科の見方・考え方」を自在に働かせて,主体的・対話的で深い学びを実現し,科学的に探究するために必要な資質・能力を身につけられるような,そんな授業が求められている。
一方で,学校は渦中にある。ほとんどの学校は,令和2年3月から約3か月間,臨時休業し,児童生徒は外出自粛を求められるという困難な状況を経験し,その後,事態の収束が見通せない中,授業を続けている。「学び」を止めるわけにはいかない以上,感染拡大を防止しつつ,観察・実験や話し合いなど,人と人とのつながりを維持する授業を工夫している。
その中で,1人1台の情報端末が普及してきている。単なる道具にすぎないかもしれないが,双方向性がある情報端末は,授業の進め方,学習評価の在り方を大きく変える可能性をはらんでいる。すでに,教師も児童生徒も新たな学習の可能性に気づき始めている。使い方次第ではあるが,旧来型の知識を再生産するだけのペーパーテストは遠くかすんでしまう。そして,授業改善への帰納的な変革の可能性を秘めている。
新しい学習の道具である情報端末の活用は興味深い。思いがけない使い方をしている場面を見かけることがある。
・グループ内で役割を分担し,台車の運動を動画で撮影して,そこから速度を割り出す計算をしている。
・「今後,プラスチックは使われない社会が当たり前になる」という仮説に,「科学的に正しいといえるのでしょうか。自分で判断してください」という先生の指示で生徒が条件を選択する。その選択結果が電子黒板に表示され,学級の全生徒の傾向がリアルタイムで視覚的に共有されている。
・家庭学習の課題となったレポートの提出状況が一覧表で提示されている。レポートのまとめ方について生徒からの質問が寄せられている。それに「結果と考察は区別して書きましょう」と先生が個別に解説をしている。
・電子ドリルアプリを用いて「気象のところを15分以上」という家庭学習の課題の出し方をしている。その取り組み状況の点検をして,次の授業で「○○さんはえらいですね,60分も取り組みました」というほめ方をしている。
・自分でつくった質問を任意の相手に出題させるアプリを用いて,元素記号や理科用語の自作クイズを出し合っている。
いずれにしても,これらは情報端末が1人1台になるまでは,思いつかなかったことである。1人1台の情報端末で,授業でできることの幅が広がってきている。
今後,評価の在り方の幅も広がるのは間違いない。
本書が,すでに教壇に立っている先生方はもちろん,授業の支援や指導助手の役割を担う方々や,これから教師を目指している方々にとって,理科の授業力の向上の役に立てば,幸いである。
令和3年6月 /山口 晃弘
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- 明治図書
- 新しい観点での評価の考え方や方法について理解を深めることができる内容だった。2023/4/2930代・中学校教員
- 本校では定期テストではなく、単元が終了後、単元テストという形で、特に思考・判断・表現の項目のみを評価する「思考力テスト」を実施しています。その際に本書に掲載されている問題を参考にさせていただいております。2021/8/1330代・中学校教諭
- 内容が具体的でわかりやすかったです。高校で勤務していますが、参考になりました。2021/6/2540代・高校教員