- まえがき 板書の魔力
- 1章 板書を豊かにする鍵
- 01 板書は写すためではなく思考を促すためにある
- 02 板書の役割を捉える
- 03 板書計画と実際の板書の関係性
- 04 めあてはどうするの問題
- 05 字の丁寧さと思考の速さの話
- 06 言葉を短く切るコツは子どもにあり
- 07 「映える板書」より「見心地のよい板書」
- 08 一緒につくるからこそ面白い
- 09 「言葉の繋がり」が「思考の繋がり」を生み出す
- 10 具体と抽象の行き来をせよ
- 11 図解思考を取り入れてみる
- 12 イメージの可視化〜桃太郎トレーニング〜
- Column1 図解思考になったわけ
- 2章 8つの型でつくる道徳板書
- 01 板書の8つの型の分類
- 02 板書の8つの型診断ツール
- 03 心情曲線型
- 04 葛藤型
- 05 対比型
- 06 比較型
- 07 イメージマップ型
- 08 過去未来型
- 09 吸い上げ型
- 10 壁乗り越え型
- 11 ネームプレート活用型
- 12 挿絵構造的活用型
- 13 思考深掘り型
- Column2 授業が始まる前の心の準備
- 3章 実例でよくわかる道徳板書
- 01 同じ教材でも板書は変わる
- 02 クラスの実態に応じて板書の手法を変えてみる
- 03 徹底解説!「自分たちでつくる板書」とは
- あとがき 黒板は一枚のキャンバス
まえがき 板書の魔力
突然ですが,質問です。道徳の授業における「板書」の役割は何でしょうか。このように問われると,様々な考えが思い浮かぶはずです。
「思考を整理する役割」
「思考を可視化する役割」
「考えを広げたり,深めたりする役割」
「多面的・多角的に考えられるようにする役割」
パッと思いついたことを書き出してみました。それだけでもたくさんの役割が出てきます。これらの項目を眺めてみてください。これらにはとある共通点があります。それは……「思考」という要素です。ここで一つ,板書の「思考」に関するエピソードを紹介しましょう。
コロナ禍のことでした。4時間目の道徳の授業。子どもたちからは,本当にたくさんの意見が出ており,黒板に子どもたちの思いがあふれていました。なかなかよい話し合いができたなと思いつつ,授業が終わったので黒板の字を消そうとすると……。
「先生! 黒板を消すのはもったいない! どうせ,給食は黙食でしゃべることができないんだから,黒板を見てじっくりと考えながら給食を食べたい!」
子どもからこんな声が上がりました。これほどまでに嬉しいことがあるのだろうかと心が震えたのは今でも記憶に新しい出来事です。
たかが板書。されど板書。板書一つで,こんなにも子どもが熱くなるなんて,まるで魔法のようです。ここに「板書の魔力」を感じました。
こんな話を聞くと,「どれほど素晴らしい板書だったんだろう」と興味が湧いたかもしれません。ですが,そのときの板書はお世辞にも「見た目の美しさ」とはかけ離れていました(その分,子どもたちの思いはあふれていましたが)。
ところで,校内研究授業の事後研究会で「この板書は,後から教室に来た人でもパッと見で内容がわかる素晴らしい板書だ」という意見を耳にすることがあります。
ここでいう「素晴らしい」とは,誰目線の「素晴らしい」なのでしょうか。後から教室に入ってきた人(教師)がパッと見でわかるということが素晴らしいということなのでしょうか。
私はそうとは思いません。板書はいつだって,「子どもたちのため」にあるものだと思っています。そう考えると,見た目の美しさや体裁を整えるよりも,「子どもたちがワクワクして,思わず考えたくなるような板書」にしていく方が大切ではないでしょうか。
本書では,「子どもたちがワクワクして,思わず考えたくなるような板書」になるためのコツや型について紹介しています。1章では,板書のコツをお伝えします。2章では,「板書の8つの型+α」を実例とともに紹介します。3章では,実際の板書について,細かいポイント解説も交えながら,じっくりと考察していきます。
いずれの章も実際の板書の写真をもとに,丁寧に解説をしていきますので,最後までお付き合いいただけたら幸いです。
/森岡 健太
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- 明治図書
- 板書の具体例が書かれていて分かりやすかったです2024/10/420代・中学校教員
- よかった2024/8/1030代・小学校教員