- はじめに
- 第一章 伝統音楽の授業は誰でもできる! 理論編
- 1 ことば 響き 身体
- 2 にほんごは 音楽のすてきなおかあさん
- 3 ことばと音楽
- 4 うたを生み出すことばの力
- 5 うたで会話ー即興と掛け合い
- 6 フォークを箸に持ち替えて(方法論)
- 第二章 体験型で楽しく学べる!伝統音楽の活動アイディア75 レッスン編
- 1 ことばと身体
- 1 数えてみよう
- 2 ジャンケンで遊ぼう
- 3 うんとこしょ どっこいしょ
- 4 拍の感じを生かして歌おう
- 5 ウエ シタ
- 6 一本締め
- 7 点呼
- 8 拍子木で点呼
- 2 音楽になりたい声とことば
- 1 その声はどんな色?
- 9 あなたの声はどんな色?
- 10 友達の声は,どんな色? その1
- 11 友達の声は,どんな色? その2
- 12 友達の声は,どんな色? その3
- 13 声の表現の違いを楽しむ その1
- 14 声の表現の違いを楽しむ その2
- 15 声の表現の違いを楽しむ その3
- 2 ことばの響きを体感
- @ 日本語の発音体感
- 16 個々の音を楽しもう
- 17 擬音語,擬態語で遊ぼう その1
- 18 擬音語,擬態語で遊ぼう その2
- 19 擬音語,擬態語で遊ぼう その3
- 20 擬音語,擬態語で遊ぼう その4
- 21 響きを楽しもう
- 22 能の囃子を聴こう 唱えよう
- A 集団の響き
- 23 みんなでおしゃべり その1
- 24 みんなでおしゃべり その2
- 25 声明を聴こう
- 26 地謡を真似よう
- B ことばの表現法
- 27 今の気分はどんな声
- 28 私は誰でしょう
- 29 様式による声の表現 狂言
- 30 様式による声の表現 歌舞伎
- 31 様式による表現 義太夫節
- 32 様式による表現 様々
- 3 ことばから音楽へ
- 1 個々の響きを音楽へ
- 33 地域の祭り囃子を聴こう
- 34 唱歌でつくろう その1
- 35 唱歌でつくろう その2
- 36 唱歌で歌ってみよう
- 2 ことばのリズムや抑揚
- 37 ことばをつなげて遊ぼう
- 38 七五調で遊ぼう
- 39 抑揚を生かして
- 40 抑揚や間を工夫してリズミカルに
- 41 自己紹介をしよう
- 4 音楽になったことば
- 1 時間のとらえ
- @ 拍,拍のまとまり,拍の伸縮
- 42 拍をつかまえる
- 43 足し算の拍子1
- 44 足し算の拍子2
- 45 八拍のまとまり
- 46 拍の伸び縮み
- 47 拍の扱い
- A 間をとる
- 48 間をつかむ
- 49 間の性格
- 50 国語教材にも「間」がいっぱい
- 51 間でつくる
- B ノリ
- 52 ノリの良さとは
- 2 ふしのとらえ
- @ 息でうたう
- 53 息のリズム
- 54 売り声をつくる
- 55 息のリズムを聴き取る,感じ取る
- A ふしを飾る
- 56 小節・塩梅をつかむ
- 57 ふしを飾る
- B 自分の声の高さで
- 58 個々の声に合った音高
- 59 集団の響き
- 3 合わせる
- 60 息,呼吸,気配で合わせる
- 61 それぞれの合い方
- 5 内的に創られた音
- 62 音はいつ無くなる?
- 63 内なる音を聴く
- 64 先人の耳
- 6 「今」とつなげる
- 65 隠れている伝統をつかまえよう
- 66 謡の拍節法と日本の歌を比較し,関連性をとらえよう
- 67 ことばの性格を生かして歌おう
- 7 「国語科」とつなげる
- 68 おはよう
- 69 うたに あわせて あいうえお
- 70 あり えき いか おに うし
- 71 かきと かぎ
- 72 ねこと ねっこ
- 73 おむすび ころりん
- 74 かぞえて みましょう
- 75 とん こと とん
- 第三章 常時活動で「うたうこと」を取り入れる!伝統音楽の活動アイディア23 実践編
- 1 いろんなわらべうたで遊ぼう
- 2 拍子木で遊ぼう
- 3 ヴァリアンテをつくろう
- 4 いろんな言い方・歌い方があるよ
- 5 トントントンは何の音?
- 6 楽器とおはなし
- 7 となりのおばさ〜ん 行けない理由は?
- 8 うたの変身!
- 9 声のおみせやさん
- 10 うたでおはなし1
- 11 うたでおはなし2
- 12 自分のつくった子もりうたで歌いかけよう
- 13 いろいろつくろう「ほたる」のうた
- 14 ことばのリズムと抑揚を生かして
- 15 呼び出しごっこをしよう
- 16 音頭一同形式で遊ぼう
- 17 うたの伝言ゲーム
- 18 賢治とともに
- 19 七と五でつくろう
- 20 ふしでつくろう
- 21 掛唄に挑戦
- 22 うたのまわりっこ
- 23 うたで伝え合い
- おわりに
- 音源・映像/引用・参考文献・映像/初出・構成
はじめに
◆日本の伝統音楽の授業はどうしていいかわからない
「子どもたちに日本文化のすばらしさを伝えたい。伝統音楽のおもしろさを共有したい。でも,とても難しそう。だからどうしても避けてしまう」といった声をよく耳にします。本書はそうした先生に贈るコロンブスの卵的提案と方法論です。
結論を先に述べるならば,次のようになります。
「心配することは少しもありません。私たちの毎日の生活は,伝統音楽のエキスであふれています。日本語を話しているあなたの身体には,日本の伝統的な音楽性が染み込んでいるのです。そしてこれは子どもたちも同じ。大切なのは,そのことに気付くこと,そしてそれを授業に生かすことです。」
◆先生自身が伝統――身体化された音楽の特性
日常のちょっとした例をあげてみましょう。
夜,疲れて帰宅し,自宅の椅子に腰掛けるその時,思わず「どっこいしょ」と言ってしまうことがありませんか。身体にむち打って夕飯の準備に立ち上がるその時にこれまた思わず「よっこらしょ」が口をついて出てくる。
運動会前日,職員総出で準備にかかるとしましょう。重いマットや跳び箱を運ぶその時,みんなで声を合わせるそのかけ声は,「せーの!」。身に覚えはありませんか。
無意識な行為としての「どっこいしょ」や「せーの!」ですが,これが実に日本的なのです。音楽的な「拍」の点からとらえると,前者は,「ドッコイ|ショ」,後者は,「セー|ノ」と二分され,二拍でひとまとまりとなります(「ドッコイショ」は,ゆっくりやれば「ドッ|コイ|ショ|○」と二拍二つ分にとらえることも可能です)。
ちなみに,「ドッコイ|ショ」と繰り返し言いながら手のひらを上下に動かして,どんな拍感になるか体感してみましょう。「ドッコイ」で下方へ,「ショ」で上方です。おそらく手はそれぞれの拍で一旦停止し,バウンドを嫌います。「イチ|トー」「ニィー|トー」といった感じですね。こうした前後の拍は,伝統的に「表間」「裏間」などと名付けられてきたもので,西洋音楽のビート感とは異なります。そしてこの拍の感じには,「こきりこ節」や「ソーラン節」がピッタリ合うのです。ちなみに,「イチ|トー」「ニィー|トー」の拍感にのって,これらの曲を歌ってみてください。
もうおわかりでしょう。日本語で毎日「どっこいしょ」と言っているあなたは,すでに伝統音楽の世界にどっぷりと浸かっているのです。日本の伝統音楽の授業は,ここを出発点にするといいと思っています。
2019年3月 /伊野 義博
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- 明治図書
- 日本伝統音楽のうち、言葉やうたに焦点を当てていて、ちょっとした指導のアイデアが書かれていて大変参考になりました。2020/3/2940代・高校教員