- はじめに
- 序章 「いろはde歴史(R)」と学習ステップ
- 「いろはde歴史(R)」とは
- 「いろはde歴史(R)」48の歌紹介
- 「いろはde歴史(R)」学習の3ステップ
- 「いろはde歴史チャンネル」 動画の概要説明
- コラム1 京都は歴史の冷凍庫 熱い眼で見て溶かしてみよう
- 1章 歴史授業に「いろはde歴史(R)」を
- 歴史は覚えるもの?
- 「歴史が嫌い」で済ませていいのか
- 「いろはde歴史(R)」を切り札に!
- コラム2 「いろはde歴史(R)」誕生秘話
- 2章 歴史授業の基本的な流れと教材の関係
- 見出す→自分で取り組む→広げ深める→まとめあげる
- 最も大事なのは「見出す」こと
- 「楽しい」と感じるから「α→」が生まれる
- 「ザビエル」は,みんな知っている
- コラム3 広げ,深める方法「一人から始まる4人組の活動」
- 3章 「いろはde歴史(R)」の活用法
- 「いろはde歴史(R)」の考え方と48の歌(連結カード 表・うら)
- 「いろはde歴史(R)」活用法
- 「いろはde歴史(R)」授業略案と資料
- コラム4 昭和100年に想う
- 4章 「いろはde歴史(R)」を活用した授業展開
- 中学校の実践例(1) 楽しく学び,意欲を向上させる
- 中学校の実践例(2) 覚える内容を精選する
- 中学校の実践例(3) 絵や言葉を使って既存の知識を掘り起こす
- 中学校の実践例(4) 競わないカルタ大会 協働的な学びへのヒント
- 中学校の実践例(5) YouTube 「いろはde歴史チャンネル」とのコラボ
- 小学校6年生の実践例
- 外国人児童生徒の実践例
- 高校学び直しの実践例
- 在外教育施設などの実践例
- コラム5 「いろはde歴史(R)」が世界をつなぐ夢のオンラインカルタ大会
- 資料@「いろはde歴史(R)」関連Webサイト等
- 資料A「いろはde歴史(R)」ミニテストver.1
- 資料B「いろはde歴史(R)」ユニバーサル
- 特別企画「いろはde歴史(R)」マイスター証
- おわりに
はじめに
「探究学習」の重要性が叫ばれて久しい学校現場ですが,中学校現場では「探究」の質をあげていくことに苦労しているという声をよく耳にします。私自身,中学校社会科教師としてスタートして,教育現場で40年間勤務してきましたが,生徒自身が「問い」を持って学習することの難しさを常に感じていました。中学生にとっては,目の前に「受験」という高い壁があり,ほとんどの生徒はその壁を乗り越えるための「ツール」として社会科と向き合っていました。「テストで何点とれたか……」に関心を寄せても,「自分の持つ課題について探究したい」という姿勢で学ぶ生徒は少数派でした。このような状況ですから,テストで高得点をとれない生徒にとっては,社会科学習への意欲はどんどん下がります。テスト対策で頑張って「一夜漬け」した知識は,暫くすると消えてなくなり,将来に生きる学びにはなりません。
どうにかして,生徒の興味・関心を高める方法はないものか……。
これを解決する手段の一つとして,「いろはde歴史(R)」を開発しました。「いろはde歴史(R)」は,歴史の重要事項をいろは48の歌で時代順に詠んだものです。専用のカルタがあり,表が「うた」,うらは「上が言葉,下が絵」になっています。遊びを通して仲間とともに楽しみながら覚えられる教材です。遊びながら歴史の重要用語などに触れる機会が増え,「知らない」を「知っている」に変えて,「いろは順」に整理できて頭の中がスッキリします。社会科教師から管理職を経て,千葉大学に来てからは,小学校から大学院までの児童・生徒・学生を対象に多くの現場でこの「いろはde歴史(R)」を実践してきました。すると,どこの現場でも「楽しかった」という声が8割を超えました。今は,「このツールはポテンシャルがある!」と実感しています。
本書では,私が感じてきたような困り感への解決方法として,「いろはde歴史(R)」を活用した授業づくりを紹介します。昔の人は,「習うより慣れろ」という言葉をよく使っていました。変化の激しい時代で,慣れたらすぐ新しいものへと飛びつかねばならないのかと思ってしまいがちですが,幸いにも「歴史」は過去のものです。新しい発見によって解釈や理解が変わることはありますが,大きな流れは変わりません。まずは「遊び」から入って生徒と一緒に楽しみながら,児童生徒の興味・関心の扉を開くことで,生徒たちの背中を押してあげましょう。本書の前段では,「何のために学ぶのか」についても示しています。このサポートが,「探究」への道につながる「問い」を持てる生徒に育てていく近道になるのだと思っています。
2025年(令和7年・昭和100年)8月 /松井 聰
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