- はじめに
- 1 社会科「個別最適な学び」授業デザイン おさえておきたい10の指導技術
- 子どもに手渡す指導技術
- ―「自立的な学習者」を支える教師の専門性―
- 1 「条件」から技術の「具体」へ
- 2 「リアルな学び」を支える教師の技術という視点
- 3 技術は「子どもに渡すため」に磨かれる
- 4 自由進度学習・自己調整学習をめぐる位置づけ
- 5 現場の声から見えてきた「指導技術」を求める理由
- 6 指導技術はどのように磨かれ,手渡されるのか
- 7 技術は自立性を支える足場
- 8 10の指導技術の全体像
- 2 社会科「個別最適な学び」授業デザイン 10の指導技術と授業デザイン
- 1 問いをデザインする技術
- 1 子どもからさぐり,子どもとともに問いを見出す
- 2 「子どもの姿」を描き,学びの出発点を生む
- 2 問いの醸成を促す技術
- 1 教師も一緒に面白がること
- 2 子どもの違和感を問いに育てる
- 3 問いの連続性をもたせる技術
- 1 追究の火を見取り,薪を焚べる
- 2 子どもの問いを見取り,生かし,保障する
- 4 学習目標を明確化する技術
- 1 答えは子どもの中にある
- 2 学びの楔を打ち続ける
- 5 まとめと振り返りを明確化する技術
- 1 個人の記録と集団との共有を目的により使い分ける
- 2 単元を通し,単元を越えて使いこなすイメージをもつ
- 6 学習意欲喚起の技術
- 1 「この子」の姿から追究を考える
- 2 子どもの感動の感度を高める
- 7 資料収集,提示の技術
- 1 思考を揺さぶる資料を提示する
- 2 教師も「ともに」追究し続ける
- 8 指示・説明・助言を明確に行う技術
- 1 明確な提示と,柔軟なやりとりで広げる解釈
- 2 子どもをよく見て,「受けの指導言」を選び取る
- 9 対話・話し合いを構成する技術
- 1 対話・話し合いを構成するための教師の心構え
- 2 正解を判断せず,考え続ける状態をつくる
- 10 学習方法・方略を探る技術
- 1 「方法」を体験し,「方略」を育てる
- 2 「好き」「強み」に目を向けて肯定する
- 3 社会科「個別最適な学び」授業デザイン 10の指導技術と単元プラン
- 問いをつなぎ,学びを手渡す
- ―3年生「なぞとき!へんじんもっこ探偵団」の実践―
- 1 本章の位置づけと実践の概要
- 2 問いが生まれる〜@問いをデザインする技術とE学習意欲喚起の技術の統合〜
- 3 問いが育つ〜A問いの醸成を促す技術と見取りの工夫〜
- 4 問いがつながる〜B問いの連続性をもたせる技術の発揮〜
- 5 問いを追究する〜F資料収集,提示の技術と子どもの自力追究〜
- 6 具体から抽象へ〜Dまとめと振り返りを明確化する技術と概念形成〜
- 7 技術を手渡す〜「自立的な学習者」を育てる展望〜
- おわりに
はじめに
シリーズ5作目となりました。
理論編では,「個別最適な学び」とは何かを考えました。実践編では,それが教室の中でどのような姿として立ち上がるのかを描きました。事例編では,様々な先生方の実践を通して,その広がりや可能性を見つめました。そしてQ&A編では,現場の先生方が抱える迷いや問いに応える形で,もう一度この学びを整理し直しました。
一冊ごとに少しずつ角度を変えながら,同じ問いを考え続けてきました。
その問いとは,結局のところ,子どもが自分で学びを進めていくために教師は何をすればよいのか,ということです。
では,教師の「技術」とは,いったい何でしょうか。そして,その技術はだれのためにあるのでしょうか。
教師になったばかりの頃,私は発問,板書,話し合いの進め方など,授業の技術を必死に学ぼうとしていました。けれど経験を重ねるにつれて,「技術」という言葉にどこか違和感も覚えるようになりました。授業にとって本当に大切なのは,技術そのものよりも,教師の「観」や「あり方」ではないか。そう感じる場面が増えていったからです。
それでもやはり思います。子どもたちが自分の力で学びを進めていくためには,教師の技術が必要なのではないか,と。
教師の技術は,教師がうまく授業をするためだけのものではありません。最終的には,子どもに手渡していくものです。問い方を,資料の読み方を,考えを比べる視点を,振り返る方法を,自分の学びを調整するための道具を。
そうした技術が少しずつ子どもの中に入り,やがて子ども自身の学び方になっていく。今回の本で考えたいのは,まさにこの部分です。
私はこれまで,教師が示した見方や考え方がやがて子ども自身の「眼」になっていく姿を見てきました。
指導技術も同じです。教師だけのものとして閉じるのではなく,子どもが自分で学びを進めるための力として,少しずつ手渡していく必要があります。
ただし,「手渡す」といっても,簡単なことではありません。何を教え,何を任せるのか。どこまで支え,どこから見守るのか。どのタイミングで声をかけ,どのタイミングで黙っているのか。その判断は,いつも目の前の子どもの姿によって変わります。だからこそ指導技術はマニュアルではありません。子どもの反応を見ながら,その場で選び直していく教師の専門性です。
本書では,そうした教師の判断や働きかけを,10の指導技術として整理しました。特別な名人芸ではありません。日々の授業の中で,教師が何気なく行っている判断やはたらきかけです。しかし,その何気なさの中にこそ,子どもの学びを支える大切な意味があります。
第1章では,なぜ今,指導技術を考える必要があるのかを整理します。第2章では10の指導技術を具体的な授業場面から考え,第3章では一つの単元実践を通して,それらの技術がどのように関係し合うのかを描いています。本書は,「こうすれば個別最適な学びができます」と答えを示す本ではありません。むしろ,目の前の子どもを見つめながら,教師がどのように判断し,どのように技術を磨き,どのように子どもへ手渡していくのかを,一緒に考える一冊です。
本当に子どもを有能な学習者として見ているのか。教科の本質を見失っていないか。子どもに手渡すべき技術を,自分自身が磨けているか。
本書が,皆さんの教室で,子どもの学びをもう一度見つめ直すきっかけになればうれしく思います。
2026年6月 /宗實 直樹
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明治図書

















