- はじめに
- 本書の使い方
- Chapter1 スローラーナーのつまずきを克服する指導のポイント
- 1 スローラーナーとは
- 2 中学生のつまずきを克服する16のポイント
- 3 スローラーナーを支えるICT活用法
- Chapter2 スローラーナーのつまずきを克服する指導アイデア40
- 1 音声のつまずき
- Scene 1 文字を読むことができない
- Scene 2 音を聞き取ることができない
- Scene 3 音の聞き分けをすることができない
- Scene 4 発音の真似をすることができない
- Scene 5 単語のアクセントの位置がつかめない
- Scene 6 リズムよく発音することができない
- Scene 7 母音の発音をすることができない
- Scene 8 子音の発音をすることができない
- Scene 9 単語を読むことができない
- Scene 10 英文を音読することができない
- 2 文法のつまずき
- Scene 11 英文を読むときにSVがわからない
- Scene 12 ことばのまとまりがわからない
- Scene 13 例文の暗唱ができない
- Scene 14 書いたり話したりするときに正しい語順で文が作れない
- Scene 15 英語の時制がわからない
- Scene 16 文法例文に興味を持てない
- Scene 17 文脈の中で正しく英語が使えない
- Scene 18 文法の復習で何から行えばよいかわからない
- Scene 19 文法導入の説明が伝わらない
- Scene 20 後置修飾を含む英文の理解や文を作ることができない
- 3 動機づけのつまずき
- Scene 21 教師との関係がよくない
- Scene 22 友人との関係性が構築されていない
- Scene 23 テストでよい成績がとれない
- Scene 24 授業内容を理解できない
- Scene 25 間違えることが怖い・恥ずかしい
- Scene 26 勉強方法がわからない
- Scene 27 英語を学習する目的がない
- Scene 28 英語に興味がない
- Scene 29 授業や活動が退屈で面白くない
- Scene 30 授業内容を聞き逃す
- 4 その他のつまずき
- Scene 31 英文の内容理解ができない
- Scene 32 リスニングで文や文章の意味がわからない
- Scene 33 スピーキングでうまく話せない
- Scene 34 意味を考えず音読の空読みをしてしまう
- Scene 35 まとまった文章を書くことができない
- Scene 36 発音記号がわからない
- Scene 37 何度注意しても予習をやってこない
- Scene 38 英単語が暗記できない
- Scene 39 文章の細かい意味がわからない
- Scene 40 音読の宿題をやってこない
- Chapter3 スローラーナーをやる気にする指導のQ&A
- Q1 集中力がない生徒にはどう対応すればよいでしょうか
- Q2 自信を持てない生徒にはどう対応すればよいでしょうか
- Q3 仲間と協働できない生徒にはどう対応すればよいでしょうか
- Q4 All in English授業に困り感を持つ生徒にはどう対応すればよいでしょうか
- Q5 文字を読めない生徒にはどう対応すればよいでしょうか
- Q6 文字を書けない生徒にはどう対応すればよいでしょうか
- Q7 即興で話すことが不安な生徒にはどう対応すればよいでしょうか
- Q8 語順を理解できない生徒にはどう対応すればよいでしょうか
- Q9 忘れ物が多い生徒にはどう対応すればよいでしょうか
- Q10 配付物の整理ができない生徒にはどう対応すればよいでしょうか
- Columns
- スローラーナーへの指導法の観点
- スローラーナーへの配慮をした授業
- 参考文献
- おわりに
はじめに
朝日新聞EduA(2023)において英語好きの小学生が減少し,中学生は成績が二極化の傾向にあることが指摘されています。CEFRのA1レベル(英検3級相当)以上の英語力がある中3生の増加の中で,中1生の英語力が二極化し,その原因として,中学教科書の学習量の増加並びに,小学校で学ぶ語彙の習得格差が挙げられています。「知識及び技能」「思考力,判断力,表現力等」「学びに向かう力,人間性等」を育む授業を実践しようという現場の先生の努力により,英語が得意な生徒が増えているのは事実ですが,苦手な生徒も増加しているという現実もあります。
本書を執筆した目的は,そんな英語が苦手な生徒(以下スローラーナー)のつまずきを克服するための指導法を提示することで,先生方の一助になることです。本書でのスローラーナーは「学校において,英語学習でつまずいている生徒」と定義し,基礎的なレベルでのつまずきのみならず,英語学習での様々なレベルでつまずく生徒のことを指します。先生方が授業の中で,生徒がどこでつまずいているのかを見極めて,本書の中の必要な指導法を採用されたらよいと思います。
本書は胡子美由紀先生との共著です。先生とは約15年前英語教育達人セミナーで,講師を共に務めさせていただいて以来のご縁です。胡子先生の授業はスピーキング活動を中心に多様な音声活動が用いられ,協働学習や個人学習が適宜効果的に使用されており,様々な仕掛けでスローラーナーを取り残さないシステムができていて,生徒全員が積極的かつ主体的に活動に参加しています。
本書ではChapter1では安木がスローラーナー指導の理論や留意点を述べ,Chapter2では2人で分担してつまずきごとに克服方法について述べています。また,Chapter3で胡子先生がQ&Aで指導についての質問に答えるという流れになっています。本書は各執筆項目の内容を事前に決めた上で担当箇所を分担し執筆しましたが,一部内容が重複する部分もあります。アプローチには差がありますので比較しながら読んでいただけたらと思います。
現代はAIが英語教育や英語でのコミュニケーションに大きな影響を与えています。ChatGPTや自動翻訳を活用する時代になると,教室で英語を学ばなくてもよいのでしょうか。胡子先生をはじめ熱心に英語教育を実践されている先生方の授業を参観するたびに,教室での授業の大切さを痛感してきました。授業中,英語が得意な生徒のみならず,スローラーナーも深く考え,活発に活動している姿を見ると,「人間同士の触れ合いの中で,人は言葉を使い,お互いのコミュニケーションを図り成長していく」ということを感じます。英語という外国語を用いることで,異文化に対する感性も磨かれ,外国語を話す楽しみも味わうことができます。AIはあくまで補助手段に過ぎないと実感します。
本書は「生徒が主体的に活動していく授業を教師が進めようとしたときに,生徒がつまずく箇所を見つけて克服する指導ができるよう,先生方のお役に立ちたい」との著者たちの想いで生まれました。中学生を対象にしていますが,小学生から大学生までつまずきは起こりますので,どの校種の先生にも参考にしていただけます。胡子先生には,卓越したご実践の立場から私の執筆部分に関して貴重なヒントをいただきました。また『高校英語・スローラーナー支援のための実践的指導法と教材開発』にご協力くださった高校の先生方からの得難いお知恵も本書の執筆のために参考にさせていただいています。この本の出版に関わってくださった皆様に厚くお礼申し上げます。
一人でも多くの生徒が英語のつまずきを克服し,英語が得意にそして好きになってくれたら望外の喜びです。
2023年7月 /安木 真一
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- 明治図書
- 胡子先生の指導について知ることができました。2023/12/1120代・中学校教員
- 具体的なつまづきを一つ一つ解説してくれていました。2023/9/2830代・中学校勤務
- スローラーナへの対処の仕方の数々、日々の授業で実践します。2023/9/1カズ