- はじめに
- Chapter1 「学習指導要領のスキマ」を埋める授業づくりの考え方&アイデア
- 00 授業づくりの極意「学習指導要領のスキマお埋めします」
- 01 目標アとウのあいだ(ただしイではない)
- 02 「自分の気持ち」ではないもの
- 03 「正しく読む」はどこへ消えた?
- 04 「読むこと」と「話すこと」のあいだ
- 05 「準備したもの」を「やり取り」する
- 06 リテリングのその先に
- 07 「書くこと[やり取り]」はないの?
- 08 「言語活動」の手前にある名前のない活動
- 09 思わず夢中になるパターンプラクティス
- 10 「適切な発話」とは何だったのか
- 11 「目的」があるから「工夫」が生まれる
- 12 「目的」があるから「努力」が生まれる
- 13 教師の文法観をアップデートする
- Column とっておきの授業エピソード(奥住 桂編)
- Chapter2 探究(課題発見・解決)型学習・家庭学習・研修アイデア
- 00 授業づくりの極意「教育の方向性をメタ的に踏まえた授業づくりを」
- 01 これからの時代に必要な教育とは?
- 02 課題発見・解決力を育む「SDGs」の観点―ESDのススメ
- 03 「特別活動」とリンクする理想的な課題発見・解決学習
- 04 「総合的な探究の時間」に取り入れる課題発見・解決学習
- 05 2つの型を押さえた「課題の解決」
- 06 教科の授業で取り組む探究的な学習のポイント
- 07 探究的なスピーキング活動
- 08 探究的なライティング活動
- 09 「自己選択」をサポートする家庭学習
- 10 「自己調整」をサポートする家庭学習
- 11 「生徒指導の3機能」を踏まえた人間関係づくり
- 12 毎日を振り返る自己研修と学校実践集づくり
- 13 授業改善の質を高めるアウトプット
- Column とっておきの授業エピソード(上山晋平編)
- Chapter3 学習規律・授業デザイン・テストづくりアイデア
- 00 授業づくりの極意「実践と理論の『往還』」
- 01 最初の授業で提示する「3種類のルール」
- 02 生徒が本気で取り組む授業デザインの鉄則
- 03 アウトプットにつなげる教科書本文の導入
- 04 個のリーディング力を高める協働学習
- 05 即興で表現できる力を高めるリテリング指導
- 06 スピーキング力を高める指導改善&活動アイデア
- 07 生徒が話したくなるパフォーマンス課題
- 08 生徒が書きたくなるパフォーマンス課題
- 09 生徒の力を引き上げるインタビューテスト
- 10 活用できる英語力をつける定期テストデザイン
- 11 生徒が成長を実感できるリスニングテスト
- 12 活用できる英語力をつけるリーディングテスト
- 13 英語授業に役立つ!生徒との接し方
- Column とっておきの授業エピソード(宮崎貴弘編)
- Chapter4 教材研究・ライティング&スピーキングの活動アイデア
- 00 授業づくりの極意「『語学』をやりましょう」
- 01 別の言葉に置き換えてみる教材研究
- 02 知識・技能と思考・判断・表現をつなぐイントネーション指導
- 03 複数の事項を全体像で関連づける文法指導
- 04 転移する学力を育てる「読むこと」の発問例
- 05 「読むこと」に連動した「書くこと」の活動「視写」
- 06 「視写」から「書き換え」へ―創造的な英語使用のステップ
- 07 英作文活動アイデア「文脈移植」
- 08 一瞬を切り取る「スローモーション描写」
- 09 統一感のある意見文を書くUmbrella Idea
- 10 パフォーマンス課題を相互評価する「作戦会議」
- 11 よってたかってスピーチ強化
- 12 話す力が身につくQ&Aの質問づくり
- 13 話す力が身につくQ&Aの答え方
- Column とっておきの授業エピソード(山岡大基編)
- 参考文献
はじめに
本書は,これまでに長年,多くの機会に一緒に活動してきた4人で,今後の授業づくりについての考えをまとめたものです。それぞれ広島,兵庫,埼玉という,お互い離れた所で教育にあたっていた者が,どのような経緯で出会い,一緒に活動するようになったのか。本書の内容とともに,その経緯をご紹介させていただきたいと思います。
○本書の内容について
Chapter 1を担当する奥住桂先生(帝京大学教育学部)の特徴は,一般的には注目が当たってはいないが,見落としてはならない大事なポイントを「スキマ」としてコメントする力です。本書でもこの力を生かして,Chapter 1では,学習指導要領の「スキマ」について書かれています。ふだんの公的な研修では学べないけど大切な点を,ワクワクしながら学べると思います。
私,上山晋平(福山市立福山中・高等学校)は,Chapter 2の担当です。これからは,教科書の内容を教えるだけではいけない,と言われますが,ではどうしたらよいのか。全教科の教師が一体になり,生徒が「持続可能な社会の創り手」(学習指導要領前文)に育つことを願って,探究的な学習も含めて,どう課題発見・解決力をつけていくのか,具体的に提案します。
Chapter 3担当の宮崎貴弘先生(神戸市立葺合高等学校)は,授業づくりのポイントに切り込みます。「学習規律」や授業をどう「デザイン」し,テストをどうしているのか,その秘訣を具体的に明かしてくれます。
Chapter 4の担当は山岡大基先生(広島大学附属中・高等学校)です。得意のライティングに加えて,スピーキングの活動アイデアを提供してくれます。ことばに向き合い,地道な学習を大切にするとはどういうことかがわかると思います。
○執筆者紹介にかえて
私たちは導かれるように出会い,意気投合し,多くのプロジェクトで活動してきました。
まずは,(本書での執筆はありませんが,一緒に活動してきた)福島の松本涼一先生。彼とは,谷口幸夫先生(東京)の主催する,英語教育・達人セミナーで出会いました。20年以上前からICTを駆使し,人の心理を大切にした力み感のない,生徒が「やりたくなる授業」を実践されていました。私は,松本先生を羨望のまなざしで見ていました。私の授業は勢いやノリの力技だったからです。松本先生の人柄の良さからも多くの人に慕われています。
谷口先生によって松本先生と一緒に引き合わせていただいたのが,研究熱心な実践家の阿部雅也先生(新潟)です。このお二人ともが,中嶋洋一先生(関西外国語大学)の私塾に入塾されていると聞き,どのようなすごい塾なのかと思い,入塾させていただくことになりました(噂通りの,真剣で深い求道塾で,全国の熱心な先生方から深く学ばせていただきました)。
その中嶋塾で出会ったのが,奥住桂先生です。今では大学の先生ですが,当時は中学校の先生でした。多くの機会に考えを発表されており,アイデアの多さと幅広さ,そして,書かれる文章のスムーズさ(読者の知りたい情報が自然に次々にやってくる流れ),ICTの詳しさに驚きました。ICTのガシェットを購入する際に,奥住先生のブログからヒントをもらった人も多いかもしれません(「英語教育2.0」で検索してみてください)。
そうして中嶋塾で学ばせていただく中で,「拡大塾」という大型の研修会で出会ったのが,宮崎貴弘先生です。彼のプレゼンテーションにはたまげました。10分ほどの短時間だったと思いますが,授業がうまいとは,こういう人のことを言うのだな,とはっきりと悟ったのです。プレゼンスライドの構成や内容,フォントまで,すべてに意味をもたせていて,しかも参加者心理が計算し尽くされた内容で,かつ,参加者の気持ちが揺れ動く,心に残る発表だったのです。宮崎先生の発表は,我々共通の師匠でもある中嶋洋一先生を彷彿とさせるものです(中嶋洋一先生の講演は,対面でもオンラインでも一度ご参加をおすすめします。内容だけでなく,プレゼン方法まで含めて,大変多くの学びと衝撃を得られるはずです)。
山岡先生は,滋賀県から広島県に転勤されたときに,上山と意気投合し,一緒に研修会を立ち上げました(BEK「備後英語授業研修会」)。ライティング指導で知られていて,大学生・一般向けの語学書を単著で出されたこともあります。論理的な文章には定評があり,噂によると,ALTに英語ライティングの指導をされたこともあるとか(笑)。現場の教員でありつつ,大学で教員養成にも携わっていらっしゃいます。
私たちは,このような形で出会い,その後,英語教育誌で3年間,連載を担当させていただきました(途中から会田裕子先生と出井幸恵先生の力強いメンバーにも加わっていただきました)。この3年間の楽しい連載が終わった後も,メンバー間の交流は続きました。ちょうど本書執筆の前年度,ジャパンライム社の吉井健さんのご厚意で,オンライン英語教育講座を担当させていただきました。このときも,大修館の英語教育の連載のように(大修館の理解も得て),1つのテーマに対して各自がそれぞれ異なる自説を発表するスタイルを取りました。
本書は,こうした活動や特徴が形になったものです。本書の特徴もここにあります。つまり,誰かすごい達人のような人の意見が「唯一の正解」という画一的なものではなく,それぞれが「ミドルリーダー」として,注目する視点や生徒の違いにより,多様な考え方がある。そして,それらの多様な考え方を理解し合うことで,互いの強みや弱みの強化にもつながるということです。本書をお読みいただくと,1つのことにも多様な見方があると気づかれるはずです。
唯一の正解がない,と言われる教育においても,きっと解決策やヒントは多くあるはずです。我々は,本書で現在の精いっぱいをぶつけたつもりです。この中の誰かの一言でも,読者の方の教育に対する見方・考え方を形づくったり,背中を後押しできたりするきっかけになれたら幸いです。
2022年9月 /上山 晋平
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- 明治図書
- 探究型学習について知りたくて購入しました。これからの時代は学習の仕方がこちらの方にシフトしていくと思います。2023/6/2540代・高校教員
- 現在の学習指導要領が完全実施となってから2年ほどが過ぎるが、その「スキマ」を本書を読んでよく理解できた。今取り組んでいる授業がいいかどうかを悩んでいる方がいたら、この本を読んでみるべきである。音読やリテリングなど、その先を考えて指導しているかは数年後の生徒の成果に大いにかかわってくるだろう。2022/12/2340代・中学校教務主任
- 各先生方の考え方がぎっしり詰まっていてとても素晴らしい本でした。2022/11/25カズ
- よい2022/10/2120代・中学校教員