中学校社会サポートBOOKS
パフォーマンス課題を位置づけた中学校地理の授業プラン&ワークシート

中学校社会サポートBOOKSパフォーマンス課題を位置づけた中学校地理の授業プラン&ワークシート

好評3刷

いつでも使える実践的なパフォーマンス評価の事例が満載!

新3観点を総括的、一体的に見取る「パフォーマンス評価」を現場目線で捉え、地理的分野全単元の授業プランをまとめた一冊。生徒の学習意欲を高める様々な設定を生かしたパフォーマンス課題&ルーブリックの具体例と、コピーして使えるワークシートを収録しました。


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PDF
ISBN:
978-4-18-350627-6
ジャンル:
社会
刊行:
3刷
対象:
中学校
仕様:
B5判 144頁
状態:
在庫あり
出荷:
2024年11月11日

CONTENTS

もくじの詳細表示

はじめに
本書の使い方
1 A 世界と日本の地域構成 (1) 地域構成 @世界の地域構成
世界の地域構成から夏季オリンピック開催地を考えよう
2 A 世界と日本の地域構成 (1) 地域構成 A日本の地域構成
時差を考えて東京以外にもう一つの支社をつくろう
3 B 世界の様々な地域 (1) 世界各地の人々の生活と環境
教授になって人々の生活の特色や変容を研究しよう
4 B 世界の様々な地域 (2) 世界の諸地域 @アジア
アジア州各地域の訪問で,どの地域から回るべきか提案しよう
5 B 世界の様々な地域 (2) 世界の諸地域 Aヨーロッパ
EUのこれからについて自由研究の概要を書こう
6 B 世界の様々な地域 (2) 世界の諸地域 Bアフリカ
アフリカの貧困問題解決のため,募金活用の優先順位を考えよう
7 B 世界の様々な地域 (2) 世界の諸地域 C北アメリカ
移民をめぐる課題について,アメリカ合衆国大統領へ手紙を書こう
8 B 世界の様々な地域 (2) 世界の諸地域 D南アメリカ
森林フォーラムで,アマゾン熱帯林の今後について主張しよう
9 B 世界の様々な地域 (2) 世界の諸地域 Eオセアニア
オーストラリアがアジア州との結びつきを強めている理由を発表しよう
10 C 日本の様々な地域 (1) 地域調査の手法
地域防災課の職員となって,身近な地域を調査しよう
11 C 日本の様々な地域 (2) 日本の地域的特色と地域区分 @自然環境
留学先で,外国人の学生に日本の自然環境の紹介をしよう
12 C 日本の様々な地域 (2) 日本の地域的特色と地域区分 A人口
過疎の問題を,祖父とともに考えよう
13 C 日本の様々な地域 (2) 日本の地域的特色と地域区分 B資源・エネルギーと産業
日本の中心に据えるべき発電方法を考えよう
14 C 日本の様々な地域 (2) 日本の地域的特色と地域区分 C交通・通信
リニア中央新幹線の開設で,人々の生活はどう変わるのかを考えよう
15 C 日本の様々な地域 (3) 日本の諸地域 九州地方
文化祭で,九州地方の自然環境と人々の魅力についてスピーチしよう
16 C 日本の様々な地域 (3) 日本の諸地域 中国・四国地方
豊予海峡ルートの建設による影響を考えよう
17 C 日本の様々な地域 (3) 日本の諸地域 近畿地方
市内にパリ風の歩道橋を架けるべきかどうかを考えよう
18 C 日本の様々な地域 (3) 日本の諸地域 中部地方
中部地方の産業をアピールするキャッチフレーズを考えよう
19 C 日本の様々な地域 (3) 日本の諸地域 関東地方
首都直下型地震に伴う課題と対策を考えよう
20 C 日本の様々な地域 (3) 日本の諸地域 東北地方
東北地方を活性化させるイベントを企画しよう
21 C 日本の様々な地域 (3) 日本の諸地域 北海道地方
北海道地方の自然環境をテーマとした修学旅行プランを提案しよう
22 C 日本の様々な地域 (4) 地域の在り方
我が町の町会長となって,課題の解決を提言しよう

はじめに

 いよいよ中学校でも,新学習指導要領の完全実施である。移行期間中は,多くの先生方が新学習指導要領を念頭に置いた単元指導計画や授業の開発を行ってきたかと思う。

 ご承知の通り,新学習指導要領では,育成すべき資質・能力を「三つの柱」で示している。このことは,「知識・技能の習得」「思考力・判断力・表現力等の育成」そして「学びに向かう力・人間性等の涵養」をこれからの時代に必要となる資質・能力として,その育成を目指していることを意味する。この資質・能力を育成するために,日々の授業を「何を学ぶか」といった内容面と,「どのように学ぶか」といった方法面の両方から工夫・改善していくことが明確に示されたのである。

 日々の授業開発では,この「大きな三角形」を意識しつつ,知識の伝達に偏ることはもちろんのこと,アクティブ・ラーニングの言葉が独り歩きした授業展開にならぬよう,そして,「学びに向かう力・人間性等の涵養」も忘れない,時代の変化を意識した単元指導計画の立案,そしてそれに基づく授業の展開が求められる。


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平成20年版学習指導要領・改訂の経緯:21世紀は,新しい知識・情報・技術が政治・経済・文化をはじめ社会のあらゆる領域での活動の基盤として飛躍的に重要性を増す,いわゆる「知識基盤社会」の時代であると言われている。このような知識基盤社会化やグローバル化は,アイディアなど知識そのものや人材をめぐる国際競争を加速させる一方で,異なる文化や文明との共存や国際協力の必要性を増大させている。

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   ↓

前提となる社会状況が大きく変化し,学習指導要領も背景が大きく変容

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平成29年版学習指導要領・改訂の経緯:今の子供たちやこれから誕生する子供たちが,成人して社会で活躍する頃には,我が国は厳しい挑戦の時代を迎えていると予想される。生産年齢人口の減少,グローバル化の進展や絶え間ない技術革新等により,社会構造や雇用環境は大きく,また急速に変化しており,予測が困難な時代となっている。また,急激な少子高齢化が進む中で成熟社会を迎えた我が国にあっては,一人一人が持続可能な社会の担い手として,その多様性を原動力とし,質的な豊かさを伴った個人と社会の成長につながる新たな価値を生み出していくことが期待される。

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大きな社会の変化に対応して改訂された新学習指導要領


 このように新学習指導要領では,劇的に変化する予測不可能な社会情勢の中で,たくましく生きていくための資質・能力としての三つの柱や,主体的・対話的で深い学びを実現する授業改善が求められている。これからはこのことを意識した単元構成を考える必要があるだろう。1つの単元は,社会や学習に対する関心や意欲を土台として,必要な知識や技能を習得し,それを活用しながら社会的な課題解決を思考・判断し表現する中で,よりよい社会を築こうとする態度を養っていくという流れが考えられる。こうした学習を一体的に評価することは,もはやペーパーテストでは不可能である。学習指導が変われば学習評価も変わるということで,今,新しい学習に適した新しい学習評価の研究が始まっているのである。

 これからの学習は,知識や技能の習得のみならず,これを活用して思考・判断・表現し,よりよい社会や世界の実現に向けての主体的な態度を育成していくのであるから,特定の部分だけを見取って評価する方法ではなく,単元構成全体を反映した総括的な評価方法が必要になる。平成28年12月に出された中央審議会答申では,「資質・能力のバランスのとれた学習評価を行っていくためには,指導と評価の一体化を図る中で,論述やレポートの作成,発表,グループでの話合い,作品の制作等といった多様な活動に取り組ませるパフォーマンス評価などを取り入れ,ペーパーテストの結果にとどまらない,多面的・多角的な評価を行っていくことが必要である」としており,評価方法の転換とパフォーマンス評価の有効性を示している。

 ここで,改めてパフォーマンス評価とは何か,ということについて確認しておきたい。パフォーマンス評価については,京都大学大学院の西岡加名恵先生を始め,尊敬すべき先生方の素晴らしい研究が進められているが,ここでは,それらの研究の成果に生徒を直接指導する現場教師としての私の経験からの解釈を交えながら論じていきたい。

 パフォーマンス評価は,パフォーマンス課題とルーブリック(評価の指標)を生徒に示して課題に取り組ませ,示したルーブリックに基づき評価する評価方法の総称である。それぞれの言葉の解釈は,以下の通りである。


「パフォーマンス評価」

 観察・対話・実技テスト・自由記述による筆記テストなどを手がかりとして,知識や技能の活用を含めた思考力・判断力・表現力及び態度などを総括的に評価する評価方法。

「パフォーマンス課題」

 パフォーマンス評価を実施する際に提示する,具体的な事例を設定して構成された学習課題。習得した知識や技能を総合して活用する要素を含む。

「ルーブリック」

 パフォーマンス課題に含めた知識や技能の活用を見極めるための要素を含む記述から構成されている評価の指標。

  (先行研究をもとに,筆者が解釈)


 ここで注意してほしい点は,パフォーマンスという言葉である。パフォーマンスという言葉からは,生徒の活動を連想してしまいがちだが,この言葉に込められた意味は,それだけでなない。パフォーマンスとは,知識や技能の活用を含めた思考力・判断力・表現力や態度を総括的,一体的に発揮した生徒の活動を意味すると,筆者は解釈している。

 つまり,パフォーマンス評価とは,体育や音楽などの実技教科で行われているような実技テストとは異なる,学習活動の総括的な評価ということである。例えば,音楽における歌唱の実技テストは,生徒の歌唱の技能や歌唱による表現力を見取るテストであり,音楽の授業における総括的な評価ではない。しかし,ここでいうパフォーマンス評価は,その単元やこれまでの学習の成果を生かし,知識や技能の活用を含めた思考力・判断力・表現力や態度を総括的,一体的に評価する評価方法なのである。新学習指導要領が完全実施となった今こそ現場での評価方法を大きく見直し,パフォーマンス評価を導入していくときである。



地理的分野のパフォーマンス課題

 地理的分野は総時数115時間を世界と日本の地域構成2,世界各地の人々の生活と環境1,世界の諸地域6,地域調査の手法1,日本の地域的特色と地域区分4,日本の諸地域7,地域の在り方1の計22単元で構成した。パフォーマンス課題の設定に関しては,各単元で様々な工夫を凝らしている。以下にその一部を紹介する。

 地理的分野最初の単元である世界と日本の地域構成では,世界の地域構成に着目して夏季オリンピックの開催地を決めるパフォーマンス課題や,時差を活用して支社をどこにつくるかというパフォーマンス課題とした。多岐にわたる学習内容を生かしたり,新学習指導要領の改訂のポイントに配慮したりした課題となっている。これらの課題に取り組むことにより,地理学習の初期段階から地理的な技能を活用する力を養いたいと考える。

 地理学習の中核となる世界の諸地域及び日本の諸地域では,それぞれのパフォーマンス課題が羅列されるのではなく,個々の課題が単元全体で一体となって,生徒の資質・能力の育成を実現することを目指した。例えば,世界の諸地域では,いきなり考察を論じさせるのではなく,首相の最初の訪問先を決める(アジア州),自由研究の概要を考える(ヨーロッパ州),募金活用の優先順位を考える(アフリカ州)というように,発達段階に応じて考察や表現の質を深めていく工夫をした。また,日本の諸地域では,豊予海峡ルートの建設(中国・四国地方),京都にパリ風の橋を架ける(近畿地方),首都直下型地震に伴う課題と対策(関東地方)など,実際に存在する地域的な課題を題材とするパフォーマンス課題を設定して,課題に真正性をもたせ,実社会で生かせる課題解決力の育成をねらった。

 地理的分野の学習では,地理的な見方・考え方を働かせながら地域的特色や課題を追究し,それらの学びを生かしながら最終単元の「地域の在り方」において地域のこれからを構想するパフォーマンス課題で締めくくる。一連のパフォーマンス課題に取り組みながら各地域の本質的な特色や課題を追究しよりよい地域の在り方を構想する資質・能力が育成されることを望んでいる。



本書をお手にされた先生方へ

 前書『パフォーマンス課題を位置づけた中学校社会の単元&授業モデル』の発刊から2年,多くの先生方にご拝読いただき,また多数のご反響,ご要望も寄せていただきましたことに,厚く御礼を申し上げます。パフォーマンス評価については,各種の学会や研究会でもさらに議論が深まっております。それだけ先生方の関心が高いものなのだろうと考えます。それゆえにパフォーマンス評価について,「パフォーマンス評価とはどのようなものなのか」「パフォーマンス評価を普段の授業の中でどのように実施したらよいか」といった声も多く聞かれます。本書は今,話題となっているパフォーマンス評価を現場目線で捉え,学校現場の状況に即した授業プランを提示したものであります。本書の特色の一つとして,今回は三分冊にして地理,歴史,公民3分野の全単元を網羅いたしました。本書をお手に取った先生方の,思うがままの単元からご覧いただきたいと思います。今,先生方が実践されている単元のパフォーマンス課題を生かして,本書を実践的活用本としてお使いいただけたならば幸いです。

 また,ワークシートについても,各単元2ページを当てて示しました。このワークシートは,単に設定されたパフォーマンス課題に回答させるだけではなく,課題を考察するために必要な知識を整理・分析し,そこから課題の解決に迫れるような流れを意識して作成しています。生徒の思考の流れを見取る手立てとなるよう工夫しました。パフォーマンス課題は,単元の学習をまとめ上げる総括的な課題であります。回答を表現する部分だけでなく,パフォーマンス課題に回答するまでのプロセスの部分もぜひご活用いただきたいと思います。

 また,本書は,教育についての研究者ではなく,毎日生徒の前に立って実際に授業を行っている現場教師が執筆したという点も,特色かと考えております。様々な研究の視点から見れば拙い部分や簡略化した部分も多いかと思いますが,一人の授業者が,現場の中で実際に授業を行うことを前提として執筆いたしました。明日の授業で,すぐに使えるものを集めました。多忙な中でも教材研究を熱心に行う全国の先生方のお役に立てることを願っております。

 最後に,本書の発刊にあたりましては,豊島区立千登世橋中学校主幹教諭の鈴木拓磨先生,港区立高松中学校主幹教諭の藤田淳先生,中野区立第七中学校主幹教諭の千葉一晶先生に多大なるご尽力をいただきました。これまで多くのご実践やご発表の経験をもち,中学校社会科教育の分野ではまさに最前線に立つ新進気鋭の3人であります。中学校社会科教育のみならず,所属校や所属地区のお仕事も多忙な中,玉稿を頂戴することができましたことを,この場をお借りいたしまして厚く御礼を申し上げます。

著者紹介

中野 英水(なかの ひでみ)著書を検索»

1970(昭和45)年,東京生まれ。東京都板橋区立赤塚第二中学校主幹教諭。1993(平成5)年,帝京大学経済学部経済学科卒業。東京都公立学校準常勤講師,府中市立府中第五中学校教諭を経て,2013(平成25)年から現職。東京都教育研究員,東京都教育開発委員,東京教師道場リーダー,東京方式1単位時間の授業スタイル作成部会委員,東京都中学校社会科教育研究会地理専門委員会委員長を歴任。現在,東京都中学校社会科教育研究会事務局長,全国中学校社会科教育研究会事務局次長,関東ブロック中学校社会科教育研究会広報副部長,東京都教職員研修センター認定講師,日本社会科教育学会会員。

※この情報は、本書が刊行された当時の奥付の記載内容に基づいて作成されています。
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      明治図書
    • パフォーマンス課題は生徒も意欲的に取り組みます。
      2023/7/820代・中学校教員
    • 以前から気になっていた内容で、地理・歴史・公民と分野別に分かれて発行されたので非常に嬉しいです。
      2022/5/2340代・中学校教員
    • 教材単元と経験単元の双方を踏まえたパフォーマンス課題となっているため、単元を貫く問いの設定や問いの構造化を行う上で非常に参考になりました。
      2022/2/1320代・中学校教員
    • 単元を貫く学習課題づくりの参考になった。できたら、そこに至るまでのワークシートもあるとありがたい。
      2021/5/1520代・中学校教員
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