- はじめに
- 第1章 「真の問い」を生み出す!学びを深める社会科授業デザイン
- 1 社会科と問い
- @ 社会科授業における問いの役割
- A 問いが学びを深める
- B 問いが実社会とのつながりを生み出す
 
- 2 社会科授業と問題解決学習
- @ 社会科授業の問題解決学習とは
- A 問題解決の2つの立場
- B 子どもが追究する学習問題の条件
 
- 3 学びを深める「真の学習問題」
- 「仮の学習問題」と「真の学習問題」
 
- 4 問いを生み出す教材研究
- @ 子どもの「身近」を教材化する
- A 「見えにくい」事象を教材化する
 
- 5 問いを生み出す仕掛け
- @ 問いではじまり新たな問いで終わる授業の構想
- A 「教師の出」を工夫する
- B 五感で学び,教材との距離を近づける
 
- 6 小学校・中学校で共通する問いの本質
- @ 6W1Hで問いをつくる
- A 問いの構造化
 
- 7 小学校段階の問いの特徴
- @ 問題解決学習論を基盤とする小学校社会科
- A 多角的な思考を促す
- B 社会的事象と人のつながりを見出す
 
- 8 中学校段階の問いの特徴
- @ 科学的探求学習を目指す中学校社会科
- A 多面的・多角的な思考を促す
 
 
- 第2章 「真の問い」でつくる社会科授業モデル
- 1 小学校3年「くしろの歴史とこれから」 釧路の今を知り,未来を考える
- @ 教材研究のポイント
- A 問いのデザイン
- B 指導展開例(全12時間)
- C 「問い」を追究する授業場面
 
- 2 小学校4年「受け継がれるまちづくり」 借金をしてでもまちづくりにかけた思い
- @ 教材研究のポイント
- A 問いのデザイン
- B 指導展開例(全12時間)
- C 「問い」を追究する授業場面
 
- 3 小学校5年「森林とともに生きる」 受け継がれる日本の宝(森林)
- @ 教材研究のポイント
- A 問いのデザイン
- B 指導展開例(全6時間)
- C 「問い」を追究する授業場面
 
- 4 小学校6年「平和で豊かな暮らしを目指して」 それでも開催を決定したオリンピック
- @ 教材研究のポイント
- A 問いのデザイン
- B 指導展開例(全6時間)
- C 「問い」を追究する授業場面
 
- 5 中学校1年 中学地理「アフリカ州」 1粒のチョコレートから
- @ 教材研究のポイント
- A 問いのデザイン
- B 指導展開例(全5時間)
- C 「問い」を追究する授業場面
 
- 6 中学校1年 歴史「原始・古代の日本と世界」 「クニ」ができて喜んだのは誰?
- @ 教材研究のポイント
- A 問いのデザイン
- B 指導展開例(全4時間)
- C 「問い」を追究する授業場面
 
- 7 中学校2年 地理「北海道地方」 絶滅した牡蠣をまちに取り戻す
- @ 教材研究のポイント
- A 問いのデザイン
- B 指導展開例(全6時間)
- C 「問い」を追究する授業場面
 
- 8 中学校3年 公民「国際社会に生きる私たち」 1台のカメラから世界を見つめる
- @ 教材研究のポイント
- A 問いのデザイン
- B 指導展開例(全8時間)
- C 「問い」を追究する授業場面
 
 
- おわりに
- 参考文献一覧
 
はじめに
本書のタイトルにある「真の問い」は,近年私が授業実践を続ける中で悩んでいた際に,出会ったテーマです。
言わずもがな,社会科のみならず他教科においても問いは授業を構成する重要な要素の一つです。社会科における問いについては,さまざまな議論がなされています。特に,学校現場において数年前まで話題になっていたのが「単元を貫く学習問題(学習課題)」「単元全体の課題」といった単元を大きく括るような問いです。私自身もこうした問いを位置付けた実践を行ってきましたが,単元の時数が長くなればなるほど貫くことが難しくなることもあると感じています。たとえば,単元のはじめに「単元を貫く学習問題(学習課題)」を設定したとしても,この問いを単元の終わりまで子どもたちが意識しながら授業を組み立てることや,単元の序盤から型にはまってしまった問いになってしまい恣意的なものになってしまうということです。
迷いながら実践している中で出会ったのが,藤井千春氏の『問題解決学習のストラテジー』です。本書の中で藤井氏は以下のように述べています。
単元の導入の段階で,真剣で深みのある追究を導くような「学習問題」を成立させることはムリである。……その単元で用いられる教材について,子どもたちがある程度知ってからでないと,質的に高い「学習問題」は見えてこない。
藤井氏は,単元のはじめから深みのある学習問題は生まれず,単元の中で子どもたちがじっくり教材と向き合ってこそ,「真の学習問題」が生まれると述べています。教師だけの問いではなく,子どもにとっての問いにしていくためには,そこに至るまでに社会的事象と出会ったり,時には自分たちの経験と重ね合わせたりするような場面が必要なのだと学びました。
また,澤井陽介氏は『澤井陽介の社会科授業デザイン』の中で次のように述べています。
授業を構想する場合,1単元にひとつの学習問題の設定が一般的だと思います。でも私は,学習のまとめをより発展的に行なっていくような場合には,ひとつの単元でふたつ目の小さな学習問題があってもよいのではないかと考えています。
澤井氏は,子どもが一定の理解を示した上で,その理解をゆさぶる「〜なであるのに,なぜ〜」のような問い(ふたつ目の小さな学習問題)を設定することもできると述べています。
藤井氏や澤井氏の見解から,社会科の単元には必ず一つの「単元を貫くような学習問題(学習課題)」を設定しなければいけないというものではなく,子どもの実態や教師の願いに応じて臨機応変に問いを位置付けていくことが大切であることがわかります。大切なのは,「単元を貫く学習問題(学習課題)」であろうと,「真の学習問題」や「ふたつ目の学習問題」であろうと,子どもが「ひっかかり」をもつことができるような問いになっているかということです。
また,こうした「問い」は小学校・中学校において,どのように位置付けていくのか考え方が異なることもあると思います。そこで本書では,筆者の拙い経験ではありますが,小学校・中学校のどちらの校種においても授業をした経験を生かし,小学校・中学校での問いの位置付けられ方の相違点や共通点についても触れながら,「問い」をもとにした社会科の授業づくりについて提案します。
なお本書では,藤井氏は「真の学習問題」と述べていますが,小学校では学習問題,中学校では学習課題と呼ばれることが多いことを踏まえ,「真の問い」としています。本書が,社会科の授業を楽しいと思える子どもたちのために,そうした子どもたちのために授業づくりをする先生方のためになるような一助となれば幸いです。
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