- はじめに
- 1章 理科と探究
- 1 探究とは
- 本書における探究の定義
- 2 理科と探究
- 3 従来の理科学習は探究ではないのか
- 4 問題解決型学習と探究
- 5 探究とPBL
- 6 自由研究の自由に困る子どもたち
- 7 探究のプロセス
- 8 学校教育の問題点
- 9 探究のプロセス 「課題の設定」
- 興味・関心を起点に課題を設定する
- 10 探究のプロセス 「情報の収集」と「整理・分析」
- 11 探究のプロセス 「まとめ・表現」
- 12 なぜいま,探究なのか
- 1 主体的・対話的で深い学びを実現するため
- 2 子ども1人1人が主語の学びを目指すため
- 3 社会的要請
- 4 学校で「公正」を実現するため
- 13 探究で得られるもの
- COLUMN 探究とアクティブ・ラーニング
- 2章 探究的な学びのつくり方―理論編
- 1 探究を教えるというパラドックス
- 2 探究的な学びのつくり方
- 発散と収束
- 遊びと学び
- 探究は緻密に計算された学び
- 3 創造を学びの中心に
- 4 探究的な学びのフレームワーク
- 5 探究的な学びの授業デザインフレームワーク
- 6 探究的な学びの授業デザイン 「中心となる問い」のつくり方
- 1 本質的であること
- 2 挑戦的であること
- 3 体験的であること
- 価値ある問い・課題設定は教師の仕事
- 中心となる問いのつくり方 まとめ
- 7 探究的な学びの授業デザイン 活動のつくり方
- グループ学習
- 個別学習
- 学習形態をデザインする
- 探究的な学びにおける学習形態の種類と特徴
- 8 探究的な学びの授業デザイン アウトプットのつくり方
- アウトプット「プレゼンテーション」
- ポスターセッション形式
- TED形式
- アウトプット「プロダクト」
- 9 探究的な学びの授業デザイン 評価
- 評価を問う
- ブルームの3つの教育評価
- 1 診断的評価
- 2 形成的評価
- 3 総括的評価
- 10 探究的な学びの授業デザイン 振り返り
- 観察や実験の前後に振り返る
- 授業の終わりに振り返る
- 単元(プロジェクト)の終わりに振り返る
- 振り返りの手法
- 振り返り指導
- 振り返りの質を問う
- それでも書けない子はいる
- 11 探究的な学びの授業デザイン まとめ
- 12 探究的な学びは事前準備が9割
- 13 探究的な学びの位置づけ
- 3章 探究的な学びのつくり方―実践編
- 1 カリキュラム・マネジメント
- 単元に軽重をつける
- 2 教科横断で探究的な学びをつくる
- 3 探究の文化をつくる
- 小さな探究を繰り返す
- 実験準備はスーパーマーケット方式
- 理科室環境
- 子どもロッカー
- フィードバックの習慣化
- 4 探究を支えるICT
- 学びの選択肢が広がる
- 学びがつながる
- 5 探究的な学びをつくりやすい単元についての考察 4年理科「金属,水,空気と温度」を例にして
- 空気の温まり方ではダメなのか
- COLUMN おすすめアプリ・システム「Padlet」
- 4章 学年別 探究的な学びの授業アイデア
- 1 学年別 探究的な学びの授業アイデア
- 第3学年 探究的な学びづくりのポイント
- 第4学年 探究的な学びづくりのポイント
- 第5学年 探究的な学びづくりのポイント
- 第6学年 探究的な学びづくりのポイント
- 3年「授業開き」
- 3年「身の回りの生物」
- 3年「磁石の性質」
- 3年「電気の通り道」
- 4年「季節と生物」
- 4年「空気と水の性質」
- 4年「金属,水,空気と温度(温まり方の違い)」
- 5年「植物の発芽と成長」
- 5年「魚の誕生」
- 5年「物の溶け方」
- 5年「電流がつくる磁力」
- 5年「振り子の運動」
- 6年「燃焼の仕組み」
- 6年「電気の利用」
- 6年「水溶液の性質」
- 2 地球領域で探究的な学びをつくることが難しい理由
- 地球領域で学びをつくるポイント
- 3 ダイナミックな探究を!
- 5章 探究的な学びの授業デザイン
- 1 3年 身の回りの生物
- 「オリジナルこん虫ずかんをつくろう!」
- 2 4年 電流の働き
- 教師の願い×子どもの想いを実現する「クエスト」
- 3 5年 物の溶け方
- 自己選択・自己決定を最大化する個別学習「みんなの説─水と食塩水編─」
- 4 6年 教科横断で行う6年間の集大成「卒業研究」
- 6章 科学コンテストのすすめ
- 1 科学コンテストを授業に取り入れる
- 2 科学コンテスト#1 「EggDropContest」
- 3 科学コンテスト#2 「ペットボトルロケットコンテスト」
- 7章 理科と探究 Q&A
- Q どうしても調べ学習で閉じてしまう。どうすればいいの?
- Q 教科の学習の中での探究はやっぱり難しい。何から始めればいいの?
- Q 結局,学習形態はグループか個別,どっちがいいの?
- Q パフォーマンス課題は探究ではないの?
- Q 探究的な学びに知識は必要ないの?
- Q 探究では教えてはいけないの?
- Q 探究的な学びにおける板書のポイントは?
- Q 探究的な学びにおけるノートの役割は?
- Q 探究的な学びにおける教材観は?
- Q 探究で学力は上がるの?
- 【引用・参考資料】
- おわりに
はじめに
これまでの教師人生を振り返れば,探究を探究する日々の連続でした。
私の学校の2代目校長である栗山重氏は「教えてはいけない,学ばせてもいけない,学びを支援することが教育だ」という言葉を残しています。
この言葉に憧れ,探究的な学びを追い求めてきました。
どんな授業をすれば,あの子が夢中になって学ぶのか。
夢中とは,活動そのものが楽しいという次元ではなく,知的な楽しさを味わいながら物事を追い求めている様です。
当然ですが,そこに正解はありません。しかし,この問いを追究する先には必ず「探究」という言葉がありました。
正解がないからこそ,追い求める価値があります。
私はこれまで,探究やPBL(プロジェクトベースド・ラーニング)に関する書籍を読み漁り,関連セミナーにも多数参加しました。
同時に現場では,科学コンテストや多様なパフォーマンス課題なども取り入れながら授業研究を重ねてきました。
そうして,研究と実践を積み重ねていく中で,見えてきたものがあります。本書では,小学校理科における探究的な学びについて,授業デザインという視点でまとめ,ベースとなる考え方と実践アイデアを掲載しています。
探究における教師の役割は,「足場かけ」です。
足場かけ(Scaffolding)という言葉は,探究を学ぶ中で出合った言葉ですが,とても素敵な言葉だと思っています。
教師の役割は,学習者に対し,一時的に学習の足場をつくり,学びを支援することにあります。
そして,評価とは「隣に座り助言する」ことです。
そのようなことを学び実践していくうちに,自身の教育観が大きく変わっていきました。探究的な学びを実践していく上で必要なのは,ノウハウだけでなく,そうした教育観の転換です。
私は,いつしか「実験が成功する」「正しく実験する」等の言葉にも違和感を持つようになりました。実験は成功することが目的なのか,そもそも正しい実験とは何なのか。学びの在り方を,徹底的に学習者目線で考えることを繰り返してきました。
本書は,ベーシックな理科授業の指南書ではありません。実践の一部を切り取ると,真逆のことが書かれているところもあると思います。
本書が示す探究的な学びで目指すのは,「学習者1人1人の自立」です。
学習者1人1人と向き合い,真の力をつけたいと思ったとき「探究」を学ぶ必要があります。
本書は,小学校理科における「探究の入門書」の位置づけとして,極力シンプルにまとめました。定義やベースとなる型は示していますが,アレンジしやすいような形で掲載しています。
読まれた方が探究的な学びを実践できるように,まさに「足場かけ」をイメージしてつくった書籍です。
本書が,小学校理科における探究的な学びのアイデアブックとして活用され,読者の皆様の授業,そして子どもの学びが変わるきっかけとなれば幸いです。
/吉金 佳能
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- 明治図書
- 参考になった。2023/3/430代・小学校教員