- はじめに
- Chapter0 授業をデザインしてみよう
- 1 授業をデザインするとは
- 2 「授業デザイン図」の具体像
- 3 「授業デザイン図」の活用について
- 4 年間指導計画について
- Chapter1 第3学年の授業デザイン例
- 第3学年の年間指導計画
- 1 私たちの町
- 市区町村の様子―世田谷区
- 2 町の人々のしごと
- 地域に見られる生産や販売の仕事―スーパーマーケット
- 地域に見られる生産や販売の仕事―農家
- 地域に見られる生産や販売の仕事―工場
- 3 安全な暮らしを守る
- 地域の安全を守る働き―消防署
- 地域の安全を守る働き―警察署
- 4 市の様子の移り変わり
- 区の様子の移り変わり―世田谷区
- Chapter2 第4学年の授業デザイン例
- 第4学年の年間指導計画
- 1 都道府県の様子
- 都道府県の様子―東京都
- 2 住みよい暮らし
- 人々の健康や生活環境を支える事業―飲料水
- 人々の健康や生活環境を支える事業―廃棄物
- 3 自然災害
- 自然災害から人々を守る活動―風水害
- 4 県内の伝統や文化,先人の働き
- 都内の伝統や文化―八王子まつり
- 先人の働き―玉川兄弟と玉川上水
- 先人の働き―後藤新平
- 5 県内の特色ある地域
- 都内の特色ある地域―地場産業(東京染小紋)
- 都内の特色ある地域―国際交流(八王子市)
- 都内の特色ある地域―自然環境(小笠原村)
- 都内の特色ある地域―伝統的な文化(台東区)
- Chapter3 第5学年の授業デザイン例
- 第5学年の年間指導計画
- 1 国土の様子
- 高い土地の暮らし―野辺山原
- 低い土地の暮らし―海津町
- 暖かい土地の暮らし―沖縄県
- 寒い土地の暮らし―北海道
- 2 食料生産
- 米づくりの盛んな地域
- 水産業の盛んな地域
- 3 工業生産
- 我が国の工業生産―自動車
- 工業生産と貿易や運輸の働き
- 4 産業と情報
- 放送,新聞などの産業―放送
- 放送,新聞などの産業―新聞
- 情報や情報通信技術を活用する産業―外食産業
- 情報や情報通信技術を活用する産業―運輸
- 5 自然環境
- 自然災害から暮らしを守る
- 私たちの暮らしと森林の働き
- 公害の防止と生活環境―大気汚染(北九州)
- Chapter4 第6学年の授業デザイン例
- 第6学年の年間指導計画
- 1 政治の働き
- 国や地方公共団体の政治―子育て支援
- 2 歴史
- 縄文の世から古墳時代へ
- 天皇中心の国づくり
- 武士による政治の始まり
- 戦国の世から天下統一へ
- 武士の政治の安定
- 明治の国づくり
- 国際社会へ歩み出す日本
- 広がる戦争と人々の暮らし
- 平和な日本
- 3 世界と日本
- 世界の未来と日本の役割
はじめに
「社会科の授業は難しい…」
「社会科の授業は準備が大変…」
そんな声をよく耳にします。
同僚からも,「社会科の授業のやり方がよくわからない」と相談を受けることがあります。
アンケート結果を見てみると,「社会科が好きである」「社会科が楽しい」と答えている児童は,他教科に比べて低い傾向にあります。
社会科を専門教科とし,研究している者として,これらのことに課題を感じています。これからの予測不可能な社会を生き抜く子どもたちが学ぶ大切な社会科は,本当にこれでよいのでしょうか。
もちろん,そんな危機感を覚えて,熱心に社会科の研究に取り組んでいる先生方はたくさんいます。夜遅くまで,議論を重ねながら指導案検討やこれからの社会科教育について検討・研究を進めているのです。
私自身も研究授業の指導案検討会によく行きます。指導案検討会に行くと,いつも同じことを感じます。それは,効率よく検討が進んでいないということです。もちろん,時間をたっぷり使って検討するのも大切なことだと思います。しかしながら,時間には限りがあります。夜遅くまで検討するのは,本当によいことなのでしょうか。明日の授業への影響はないのでしょうか。心身ともに疲れ切っている状態で,本当によい授業,よい仕事はできるのでしょうか。「働き方改革」が叫ばれている今,このままでよいのでしょうか。
また,今春からは,新しい学習指導要領に基づく授業がスタートします。社会科では,新しく加わる学習内容もあります。きっと,どのように指導すればよいのか悩んでいる先生方も少なくないと思います。新しい学習内容の教材研究をしたいけれど,時間的ゆとりがない状態だと思います。
このままでは,ますます,社会科教育を負担に感じる先生方が増えてしまいます。そんな状態では,当然,社会科好きな子どもたちも育ちません。これからの予測不可能な社会を生き抜く子どもたちのために,何かできることはないのでしょうか。
こういった問題意識から,私たちのプロジェクトが始まりました。私たちが実現したかったのは,以下の4点です。
@社会科を専門としていない先生や経験年数が少ない先生にもわかりやすいこと
A少しでも教材研究の負担を減らし,時間的なゆとりをもてるようにすること
B新しく加わった学習内容の授業イメージをもてるようにすること
C効率よく学習指導案を書けるようにすること
そして,私たちが検討を重ねた末に考えたのが,従来の複数ページにまたがる学習指導計画(単元計画)に替わる「授業デザイン図」です。
「授業デザイン図」には,以下のような特長があります。
@単元全体の構造が1枚にまとまっている
A「学習問題」と「学習問題に対する自分の考え」が明確になっている
B「資料」「問い」「児童の予想やまとめ」が明確になっている
1枚にまとまっていると,短時間で単元全体の構成を理解できます。学習指導案を検討する際も,ページを超えて考える手間が省けます。また,学習指導案を修正する際にも,ミスが減ります。「学習問題」「学習問題に対する自分の考え」「資料」「問い」「児童の予想やまとめ」については,それぞれ一例としての記載ですが,授業のイメージがもちやすくなります。
本書で紹介している「授業デザイン図」は,学習指導要領とその解説を基に作成しています。これらを加工して,ご自身の学級の実態に合わせてアレンジして使うことも,ぜひ検討していただきたいと思います。また,時間に余裕がある方は,ご自身で,この「授業デザイン図」を作成することをおすすめします。私たちも,この「授業デザイン図」がゴールではなく,これからも検討を重ねながら,さらによりよいものをつくっていきたいと考えています。そして,社会科指導を苦手と感じる先生方が少しでも減り,社会科好きな子どもたちが増えることを期待しています。
本書の出版に当たり,このような機会を与えていただき,たくさんのご助言をいただいた明治図書出版の矢口郁雄氏,また,一緒に社会科の研究をし続けている平成29年度東京都教育研究員小学校社会部会の仲間,そして,世田谷区立烏山北小学校,八王子市立第五小学校の先生方に,この場をお借りして深く感謝申し上げます。
2020年1月 /名取 慶
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- 明治図書