- イントロダクション
- 第1章 授業準備
- 知的好奇心を喚起しながら,全員参加の授業を目指す
- [ノート] プリント式ノートで,苦手な生徒も取り組みやすくする
- [ノート] プリント式ノートで,生徒の疑問を汲み取る
- [ICT] スマートフォンを,書画カメラとして使う
- [ICT] ミックスカメラ機能で,授業者と手元を同時に配信する
- [ICT] Kahoot!で,苦手な生徒でも楽しめるクイズづくりを行う
- [教科内容] 社会科の歴史的分野と教科連携を図る
- [教科内容] 理系マンガで,生徒の知的好奇心をくすぐる
- 第2章 理科室づくり
- 管理や準備,片づけの工夫で,授業の効果を最大化する
- [実験準備] 観察・実験の準備,片づけは,セルフサービスで行う
- [実験準備] 番号と専用トレーで,配付,回収を確実にする
- [実験準備] 導線の確認,準備が,パッと見でできるようにする
- [実験準備] 事前指導と環境の工夫で,観察・実験の時間を最大限長く取る
- [実験後] テーブルほうきで,理科室の机をきれいに保つ
- [実験後] 専用の乳鉢を用意し,片づけを時短化する
- [実験後] 超音波洗浄機で,小物を効率よく洗う
- [管理] 各班ごとに,手づくり雑巾干しを用意する
- [管理] 事前準備で,授業直前の「消耗品がない!」を防ぐ
- [管理] 道具管理のポイントを押さえ,使いやすい理科室を目指す
- コラム 観察・実験の事故の8割は,計画,準備で防げる
- 第3章 観察・実験
- 手軽に,魅力的な学びを創り出す
- 1年
- [光の反射・屈折] 水を注ぐと見えなくなる!?
- [光の反射・屈折] 分光シート越しに光を見てみよう
- [光の反射・屈折など] リモコンの赤外線を見てみよう
- [身の回りの物質とその性質] ジャガイモの浮き沈みで,水溶液の密度を確かめよう
- [水溶液] 食塩でオリジナル石けんをつくろう
- [状態変化と熱] スローモーションで沸騰を観察しよう
- [状態変化と熱] 水の蒸発による質量変化を,精密電子天びんで捉えよう
- [状態変化と熱] 紙を火にかけ,お湯を沸かそう
- [状態変化と熱] 食塩の状態変化を観察しよう
- [生物の観察] 簡易ビオトープをつくろう
- [植物の体の共通点と相違点] 1つの花とは何だろう?
- [植物の体の共通点と相違点] タンポポが合弁花であることを,詳しく観察して確かめよう
- [植物の体の共通点と相違点] アブラナの仲間の花を観察してみよう
- [身近な地形や地層,岩石の観察] 砂や泥の堆積モデル実験をしよう
- [火山活動と火成岩] 手軽に火山灰を観察しよう
- 2年
- [回路と電流・電圧] 豆電球を家庭用コンセントで点灯させよう
- [静電気と電流] 静電気でビーズの動きを操ろう
- [電流がつくる磁界] 手かざしすると電球の光がゆらめくのはなぜ!?
- [電流がつくる磁界] 針金入りビニールタイを使って,磁界を可視化しよう
- [電磁誘導と発電] 模型用モーターで発電しよう
- [電磁誘導と発電] ワイヤレスLEDを点灯させよう
- [物質の分解] 乾湿てるてる坊主をつくろう
- [化学変化における酸化と還元] 使い捨てカイロを使って,酸化を可視化しよう
- [化学変化における酸化と還元] 酸化鉄の還元を観察しよう
- [生物と細胞] 野菜と食塩を使って,細胞膜の働きを確かめよう
- [生命を維持する働き] だ液による消化の働き実験を工夫しよう
- [生命を維持する働き] パルスオキシメーターで,酸素を運ぶ働きを調べよう
- [刺激と反応] 光で動物の動きを操ろう
- [刺激と反応] 歩いていた人が突然消える!?
- [気象要素] 逆さコップの水がこぼれないのはなぜ!?
- [気象要素] 大気圧を体感しよう
- [霧や雲の発生] 真空保存容器で圧力を変え,温度変化を観察しよう
- 3年
- [仕事とエネルギー] LEDやスピーカーで発電してみよう
- [酸・アルカリ] カレー粉でアルカリを調べよう
- [生物の殖え方] セイロンベンケイで2つの生殖を学ぼう
- [生物の殖え方] 花粉管の観察を簡単,確実に行おう
- [日周運動と自転など] webサービスで自然現象を把握しよう
- [年周運動と公転] 理科室を宇宙空間にしよう
- [自然界のつり合い] 分解者を調べてみよう
- [自然環境の調査と環境保全] ペットボトルを使って,水の汚れを調べよう
- 第4章 学習評価
- 効率的かつ確かなテスト,評価を行う
- [テスト] 定期テストでの選択問題の活用で,効果的に思考力を評価する
- [テスト] 小テストのルーティン化で,効率よく知識を評価する
- [レポート] ABC評価を9点満点に換算することで,評価入力を効率化する
- [レポート] 事前のルールづくりで,素早くムラなく評価する
- [評価] 3つの評価を意識して使い分ける
- [評価] 負担の分散で,成績処理を省力化する
- [評価] 評価材料の重みづけを行う
- [評価] テンプレートの活用などで,成績処理を定型化する
- [評価] 目指す授業と生徒の実態に合わせて,学習評価全体をデザインする
- 第5章 生徒の疑問
- 素朴な問いから,知的好奇心を拡げる
- [地震の伝わり方と地球内部の働き] 超巨大地震が起きたら,震度7より大きい場合もあるの?
- [電磁誘導と発電] なぜコンセントは交流なの?
- [物質の分解] なぜ水はOH2ではなく,H2Oと書くの?
- [生命を維持する働き] 吐いた息に酸素は残っていないの?
- [生命を維持する働き] なぜ血しょうは寿命がないの?
- [刺激と反応] 反射神経って,体のどこにあるの?
- [気象要素] 何hPa以上で高気圧,何hPa以下で低気圧なの?
- [気象要素] 巨大な竜巻は風力13以上になるの?風力と風速って何が違うの?
- [運動の速さと向き] ウサギがカメに負けたのは,何の速さ?
- [力と運動] 力の平行四辺形の法則を発見したのはだれ?
- [化学変化と電池] 三次電池もあるの?
- [生物の殖え方] なぜ無性生殖と有性生殖の両方を行うの?
- [太陽の様子] 太陽光は平行なはずなのに,なぜ広がって見えるの?
- [自然環境の保全と科学技術の利用] DHMOは危険なの?
イントロダクション
中学校理科の授業づくりで大切にしたいこと
中学校理科教員の仕事には,特有の大変さがあります。座学的な授業だけでなく,観察・実験も多くあり,物品の管理や理科室の運営も必要です。また,校内の分掌でICT等手間のかかる役割を担うことも多いのではないでしょうか。
そんな多忙な日々の中で,効率よく充実した授業をつくるために大切にしたいことを3つご紹介します。
1 7割主義を目指す
私は,大抵のことは「7割できればよし」と考えています(こだわりをもっていることは別です)。7割くらいまでは,さほど時間をかけずとも進められます。しかし,残り3割を仕上げるには多くの時間が必要で,その仕上げに時間を費やすのなら,別のことに時間を使う方が多くのことを成し遂げられます。仮に残り3割の完成度を高めるにしても,まずは早めに7割を済ませ,他の方の意見を聞くなど仕切り直しをする方がよいでしょう。
研究授業で指導案を書く場面を考えてみます。まずは概略がわかる7割の段階で,関係する方に確認してもらいます。そうして改善すべき点を把握し,新しい視点を加え,完成させます。こうすると,修正を含めて締切までに仕上げられます。このように,他の人と関わる仕事ほど,進捗状況の報告も兼ねて余裕をもって提出するのがおすすめです。「完璧にしてから」と時間ギリギリまでかける人もいますが,修正を加えながら練り上げる方が楽ですし,よりよいものになることが多いです。
「巧遅は拙速に如かず」です。忙しいからこそ,普段から「7割主義」を念頭に置いておきましょう。
2 Well-beingを基準にする
Well-beingという言葉を耳にする機会が増えてきました。言葉の通り,Well(よい)Being(状態),心身ともに満たされた状態を表す概念です。教員にも個人としての生活があり,友人や恋人,家族,地域の方々など,様々な人との関係も大切にする必要があります。「働き方改革」や「ライフワークバランス」という言葉もよく聞くようになってきましたが,いずれもWell-beingと関連していると考えられます。学校だけで生活の時間のほとんどを費やしていては,家庭生活や子育ては疎かになってしまいます。そうせざるを得ない状況も相俟って,教員採用試験の倍率が低下しており,大きく捉えると,学校や社会全体の持続可能を脅かしているとも言えます。このように,学校だけをがんばり過ぎることは,「局所最適化の愚」と言えます。
授業づくりで迷ったときにも,公私含め「Well-beingに向かっているか」を基準に考えるとよいでしょう。
3 困ったときは人を頼る
観察・実験や理科室運営は言うに及ばず,指導方法から評価方法まで,経験者から直接学ぶことは多いでしょう。ところが,理科教員が校内に1人しかいなかったり,複数名いてもお互いの時間が合わなかったりして,なかなか質問したり相談できないこともあるでしょう(本書も,そうした方を意識して書きました)。そうした中,学校外の人とのつながりはとても大切です。
公立学校であれば,市区町村や都道府県の「○○中学校理科研究会」のような公的研究会に入っていることでしょう。教育委員会から認定を受け,持ち回りで公開授業を行っていることもあるでしょう。また有志でそうした研究会をやっている場合もあります。組合系の教育研究会では,全国規模で活動しているものもあります。そうしたものに熱心に関わる先生もおられ,そこで学べる内容や教え方などは,視野を広げるきっかけになります。
またSNSにも理科のつながりがあります。例えば,Facebookでもいくつか理科教育に関わるグループがあります。私自身も「FACEBOOK版【理科の部屋】」というグループを運営しています。LINEでもオープンチャットの「理科室の雑談」というグループをつくっています。
こうしたSNSのメリットの1つは,全国に広がっていることです。例えば,北海道や九州で火山が噴火したとき,噴火の1か月後には現地の方から火山灰を送ってもらって授業で生徒に見せたことがありました。また,物化生地の全分野に詳しい方はなかなかいないでしょうが,こうしたグループに参加していると,それぞれの方が何かしらに詳しく,自分が不得手なことを詳しい方から教えてもらえることがあります。このように,SNSも有効に活用すれば授業づくりに大変役に立ちます。
「学校内のこと(だけ)を一生懸命やるべきだ」という考え方の先生もいらっしゃいますが,生徒によりよいものを教えるためにはどうしたらよいか考えたとき,私は積極的に外とつながりをもつことも大切だと考えます。
なお私は,webサイト「にしきの理科準備室」も運営しており,理科に関する様々な情報を発信しています。本書の中には,この「にしきの理科準備室」の一部を再構成したものもあります。紙面に直接関係する動画等へのリンクはQRコードを掲載しています。リンクを示していない項でも,カラー写真等を掲載している場合がありますので,ぜひ一度ご覧ください。
良い本だと思います。