- はじめに
- T 読んでワクワク、ドキドキ表現
- ―― 単元「なかよし読書まつりをしようよ」(一年) /谷口 みづえ
- 1 はじめに
- 2 学習活動の実際
- 3 本単元の実践を終えて
- U 想像ものがたりの紙芝居発表会
- ―― 単元「紙しばいを作って一年生に読んであげよう」(二年) /田嶋 貴子
- 1 単元について――楽しみながら基礎・基本の力を
- 2 単元の目標
- 3 学習活動計画
- 4 実践成功のための見えない鍵
- 5 楽しみながら基礎・基本の力がつく学習活動の実際
- 6 実践を終えて
- V 総合的な学習の時間一〇五時間を支える発表学習
- ―― 単元「さあ、発表会をしましょう 手と心で読む」(説明文)(四年) /日向 みさ子
- 1 単元の目標
- 2 単元についての考え方――発言の多い授業を創るために
- 3 子どもと共に作る学習計画
- 4 子どもに委ねる本時――説明文教材の発表学習のスタイルは
- 5 発表会に向けての手だて――学び合いが生まれる児童の活動について
- 6 発表の様子――発表物の製作で発表意欲を高めよう
- 7 発表学習の贈り物
- 8 福祉教育に広がる発表学習――「ボランティアアピールしもつま」への参加
- 9 児童のその後――晴れ舞台となった「体を守る仕組み」の発表学習
- 10 年間を通しての大枠の手だて
- 11 話しことばを総合的に育てる
- W 個が生きる読みの学習
- ―― 単元「今、あなたにとって大切なものは……」(五年) /湯本 早苗
- 1 単元について
- 2 支援について
- 3 学習の進め方
- 4 まとめと今後の課題
- X 一人一人が主役に
- ―― 単元「今、自然界は」(発表学習)(六年) /染谷 和男
- 1 単元について
- 2 単元の導入と学習計画
- 3 発表のための調べ学習
- 4 発表スタイルは楽しいアイディアで
- 5 学習発表会「今、自然界は」
- 6 実践を振り返って
- 7 これからの実践に向けて
はじめに
今は、新学習指導要領への移行期にあたり、年間百時間もかけておこなわれる予定の総合的学習をどうするかで、教育界は懸命である。教科の枠をこえた、文字通りの総合学習をめざすので、これまでの改訂とはまったく異質の試みが求められている。
これまでに各教科の基礎・基本だけは十分に達成されたので、次には意欲的に総合、つまり応用をねらうのだ、という勢いであるなら、まことに慶賀すべき改革であろう。もっとも有効な応用力とは、一つ二つの教科においてではなく、いくつかの教科を含み、かつ、教科の枠にとらわれない、総合的な学習において、初めて真の到達度がはかられるものである。その意味で、総合的な学習が設けられたのは、意義のある試みだと言えよう。
だが、しかし、どの教科であれ、はたして自身の領域における基礎・基本が、もう十分に育成できている、と言えるのであろうか。もし、まだまだ、これまで以上に基礎・基本の学習を続けなければならない実態があるならば、問題は深刻である。時間数は減少する。それに、総合的な学習の大々的な実践は迫られている。今までの時間数でも不可能であった基礎・基本の力をどのようにして育てるのか。現在、はっきりしていることは、この問題を打開するには、従来とは別の、または、これまであまり重視してこなかった方法を採用しなくてはならない、という方向だけである。
「国語科で総合学習を支える」という本シリーズは、この方向をとり、どのような試みが可能かを提案しようとするものである。理論というよりも、現実に実践できる具体策をめざした。努力すれば、だれでもできる授業構築を、とねらった。中でも、指導者はむろんのこと、学習者自身が楽しく学べる国語教室でなくては意味をなさない、と覚悟を決めて試みたものばかりである。教室の主人公は、児童・生徒である、とは言葉で語られるわりには、実践化に乏しいうらみがあった。学習者主体の授業をと願った結果が本シリーズである。
国語科にそくして言えば、国語の基礎・基本を学ぶことが、そのまま総合的な学習の基礎となり基本となるような授業でなくては、現下の問題の解決にはならない。国語の時間の一時間一時間において、生きて働く言葉の力を、教室の全員に、つまり、一人のもれなく育成している授業形態にしていく必要がある。本シリーズのねらいは、そこにある。
そのために、さまざまな方策を試みた。中には、従来、安易に流れ、無視されてきた方法が、この度の改革に応えるためには、ぜひとも活用すべきである、という確信のもとに活用されたものもある。伝統の良さは、問題が深刻なときほど、かえりみるに値する。それは、歴史の教えるところである。
幸い、以上の私の考えに多くの実践家が賛意を表してくださった。その方々の努力の結晶がシリーズの形をとって世に問うことができる。現代が抱える教育の重い問題に、いつも敏感に反応される明治図書の江部満さんの賛同を得ることもできた。そのおかげで、ここに、総合的学習に向けて、ある意味では、ゆるぎない姿勢で取り組める国語科の一つの道を示すことができたのではないか、と考えている。多くの実践家の、さらなる提案をまって、この道をより確固たるものに練り上げていきたい。多数の批評を切に乞う次第である。
平成一二年七月 /中西 一弘
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- 明治図書