- はじめに
- T 好きなお話の音読発表会を通して読むことに親しむ(小学校一年)
- ――単元「読みたいな かえるくんとがまくんのお話」 /平沢 宏
- 一 入学式当日から生活科の学習がスタート
- ニ 機運の醸成
- 三 単元構成図
- 四 単元の流れ
- 五 単元の実際
- 1 はじめは『なくしたボタン』の読み語りから
- 2 『すいえい』を読む
- 3 『おてがみ』を読む
- 4 『おちば』を読む
- 5 『そりすべり』を読む
- 6 『はやくめをだせ』を読む
- 7 発表会に向けて
- 8 発表会を終えて
- ◆自分で選んだお話をみんなに発表 ―「読みたいな かえるくんとがまくんのお話」の実践に学ぶ―
- U 役割から学びを展開する「モチモチの木」の発表学習(小学校三年)
- /茶木 一
- 一 はじめに
- ニ 単元の概要
- 1 単元名「モチモチの木」
- 2 単元の目標
- 3 単元展開にあたって
- 4 単元展開の概要
- 三 授業の実際
- 1 「モチモチの木」の話を聞く
- 2 「モチモチの木」の話を音読する
- 3 「モチモチの木」の話から考える
- 4 「モチモチの木」の話を発表する
- 5 グループごとに発表する
- 6 発表会を評価する
- 四 発表学習を組織する
- 1 グループ分け
- 2 自発的な役割の獲得
- ◆自分の役割を通して自尊感情を高める発表学習 ―「モチモチの木」の発表学習の実践に学ぶ―
- V 地域の民話調べから発表学習へ(小学校四年)
- ――「発表すること」「聞くこと」の一体化をめざして /山田 利幸
- 一 はじめに
- ニ 単元の概要
- 三 単元展開の大要とそれぞれの段階での支援の要件
- 1 基礎的学習の単元展開の大要
- 2 発表学習成立のための支援の要件一(基礎的学習)
- 3 発展的学習の単元展開の大要――子どもたちが調べてきた地域の民話を教材として
- 4 発表学習成立のための支援の要件ニ(発展的学習)
- 四 発表学習での授業の様子
- 1 子どもたちが調べてきた地区の民話について
- 2 授業の様子――『福島の二つの道祖神』の発表から
- 五 今後の課題
- 1 評価意識をどう育てていくか
- 2 課題をどうもたせるか
- ◆自分たちで調べ探した民話をみんなに発表 ―「地域の民話調べから発表学習へ」の実践に学ぶ―
- W 伝えることを目的とした授業の取り組み(小学校五年)
- ――「ヤドカリ探検隊」を絵葉書に /酒井 秀樹
- 一 目的意識をもたせた学習の取り組み
- ニ どんな目的意識をもたせるか
- 三 教材との出合い
- 四 単元の流れの実際
- 1 興味をもって「ヤドカリ探検隊」を読む(第一時)
- 2 守君の出合った新しい世界をまとめる(第二・三時)
- 3 両親に宛てた絵葉書を選ぶ(第四時)
- 4 子どもたちの文章表現
- 5 選んだ写真のよさをグループで話し合い、自分たちの考えを伝えるための発表原稿を書く(第五・六時)
- 6 伝えたいことを想像して書くと、聞き手に印象を与える文章になることに気づいた発表会(第七時)
- 7 資料を調べ、想像を膨らませて完成させた絵葉書(第八・九時)
- 8 学習を終えて
- 五 子どもの追究の姿
- 1 何を伝えたいのかが友達と話し合う中ではっきりし、表現に表れてきた矢代君
- 2 グループの話し合いの中で、読み手に訴える文章の書き方を学び、伝えたい部分の想像を膨らませて書き表した板倉さん
- 3 その他の子どもの絵葉書
- 六 反省と課題
- ◆絵葉書の表現内容を発表会を通して吟味 ―「ヤドカリ探検隊」の実践に学ぶ―
- X 葉っぱのフレディ いのちの旅(小学校五・六年)
- ――連学年国語の実践 /西尾 邦彦
- 一 本校の紹介と連学年授業
- ニ 「葉っぱのフレディ」学習材との出合い
- 三 発表本番は「サニーヒルきそ・参観日」
- 1 導入後の感想から
- 2 発表はお年寄りと家の人に――責任をもって読むから、責任をもって聴く
- 3 TTのよさを感じつつ
- 4 いよいよ読みの中間発表会 そして映像探し
- 5 サニーヒルきそ
- 6 参観日でお父さん・お母さんの前に立って
- 四 学習を終える今
- ◆群読、コメント記入、役割読み、バック映像による発表 ―「葉っぱのフレディ いのちの旅」の実践に学ぶ―
- Y 学習したことをいかにしてまとめ、発表するか(中学校一年)
- ――「父の列車」の学習 /坂田 和弥
- 一 学習の仕方を学び、新しい自分に出合う学習の過程
- 1 どのような力を付けるか
- 2 付ける力を育成するための学習の流れ
- 3 カリキュラムの評価
- 4 追究したことをまとめ、発表していくために
- ニ 「父の列車」の学習
- 1 目 標
- 2 学習の流れ
- 3 どんなテーマを設定し、どのように学習を進めていったか
- 4 追究したことをどうまとめていったか
- 5 発表の提示資料作り
- 6 発表会から
- 三 今後の課題
- ◆自分のペースで学習を進め、見解をまとめて発表しあう ―「父の列車」の学習の実践に学ぶ―
はじめに
今は、新学習指導要領への移行期にあたり、年間百時間もかけておこなわれる予定の総合的学習をどうするかで、教育界は懸命である。教科の枠をこえた、文字通りの総合学習をめざすので、これまでの改訂とはまったく異質の試みが求められている。
これまでに各教科の基礎・基本だけは十分に達成されたので、次には意欲的に総合、つまり応用をねらうのだ、という勢いであるなら、まことに慶賀すべき改革であろう。もっとも有効な応用力とは、一つ二つの教科においてではなく、いくつかの教科を含み、かつ、教科の枠にとらわれない、総合的な学習において、初めて真の到達度がはかられるものである。その意味で、総合的な学習が設けられたのは、意義のある試みだと言えよう。
だが、しかし、どの教科であれ、はたして自身の領域における基礎・基本が、もう十分に育成できている、と言えるのであろうか。もし、まだまだ、これまで以上に基礎・基本の学習を続けなければならない実態があるならば、問題は深刻である。時間数は減少する。それに、総合的な学習の大々的な実践は迫られている。今までの時間数でも不可能であった基礎・基本の力をどのようにして育てるのか。現在、はっきりしていることは、この問題を打開するには、従来とは別の、または、これまであまり重視してこなかった方法を採用しなくてはならない、という方向だけである。
「国語科で総合学習を支える」という本シリーズは、この方向をとり、どのような試みが可能かを提案しようとするものである。理論というよりも、現実に実践できる具体策をめざした。努力すれば、だれでもできる授業構築を、とねらった。中でも、指導者はむろんのこと、学習者自身が楽しく学べる国語教室でなくては意味をなさない、と覚悟を決めて試みたものばかりである。教室の主人公は、児童・生徒である、とは言葉で語られるわりには、実践化に乏しいうらみがあった。学習者主体の授業をと願った結果が本シリーズである。
国語科にそくして言えば、国語の基礎・基本を学ぶことが、そのまま総合的な学習の基礎となり基本となるような授業でなくては、現下の問題の解決にはならない。国語の時間の一時間一時間において、生きて働く言葉の力を、教室の全員に、つまり、一人のもれなく育成している授業形態にしていく必要がある。本シリーズのねらいは、そこにある。
そのために、さまざまな方策を試みた。中には、従来、安易に流れ、無視されてきた方法が、この度の改革に応えるためには、ぜひとも活用すべきである、という確信のもとに活用されたものもある。伝統の良さは、問題が深刻なときほど、かえりみるに値する。それは、歴史の教えるところである。
幸い、以上の私の考えに多くの実践家が賛意を表してくださった。その方々の努力の結晶がシリーズの形をとって世に問うことができる。現代が抱える教育の重い問題に、いつも敏感に反応される明治図書の江部満さんの賛同を得ることもできた。そのおかげで、ここに、総合的学習に向けて、ある意味では、ゆるぎない姿勢で取り組める国語科の一つの道を示すことができたのではないか、と考えている。多くの実践家の、さらなる提案をまって、この道をより確固たるものに練り上げていきたい。多数の批評を切に乞う次第である。
平成一二年七月 /中西 一弘
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- 明治図書