- まえがき
- 第1章 35人を教えながら見取るために必要なこと
- 見取りの難しさ
- 1 見取りの難しさは何か
- 2 見取りとは何か
- 3 どうして見取りが必要なのか
- 「35人を見取る」ためのコツ
- 4 見る観点を絞る
- 5 見る子どもを絞る
- 6 カルテを活用する
- 7 白紙座席表を活用する
- 8 目立たない子にも意識を向ける
- 「教えながら見取る」ためのコツ
- 9 授業の進め方を工夫する
- 10 立ち位置と視線の工夫をする
- 11 ICT等を活用する
- 12 見取りメモを工夫する
- 13 自己評価・相互評価を工夫する
- 第2章 35人を教えながら見取る方法
- 日常の行動での見取り
- 1 朝の教室や子どもの様子で生活の乱れや子どもの体調を見取る
- 2 日々の表情や反応で心の状態やストレスを見取る
- 3 カルテをつくることで子どもを丸ごと見取る
- 4 愛情を持って見ることで子どものよいところを見取る
- 5 問題行動の原因を考えることで子どもの困り感を見取る
- 6 予測される課題を多角的な視点で見ることで子どもの背景を見取る
- 7 行動の四つの機能で行動目的や理由を見取る
- 8 ABC分析で行動の理由や改善方法を見取る
- 9 付箋と写真の活用で継続的に子どもの変化を見取る
- 10 自分の成長を振り返る日記で子どもの見えていない情景を見取る
- 授業中での見取り
- 11 見るポイントを知って学習の状況を見取る
- 12 見たい観点を絞ることで細かく見取る
- 13 見る子どもを絞ることで細かく見取る
- 14 ペアやグループ活動で子どもの自然な姿を見取る
- 15 ペアやグループ活動で関係性や思考のプロセスを見取る
- 16 子どもの目や手や姿勢で困っていることやつまずきを見取る
- 17 表情やつぶやきで子どもの感情を見取る
- 18 子どもが進める授業を行うことで子どもを細かく見取る
- 19 協同学習で学びのプロセスやかかわり方を見取る
- 学習成果物からの見取り
- 20 子どものノートで思考の流れや自己調整の姿勢を見取る
- 21 子どもの作品でその子らしさや成長の兆しを見取る
- 自主学習からの見取り
- 22 自主学習ノートで主体性や興味・関心を見取る
- 23 自主学習の内容で見えていないよさを見取る
- 振り返りからの見取り
- 24 振り返りで思考のプロセス等を見取る
- 25 自己評価と相互評価で学びのプロセスや気持ちを見取る
- ICTを活用した見取り
- 26 写真や動画で細かい子どもの様子を見取る
- 27 デジタルポートフォリオで思考の変化を見取る
- 28 意見を共有できるツールで発言しづらい子の考えを見取る
- 29 ドリル型学習アプリで子どもの理解度を見取る
- 自己調整学習での見取り
- 30 「見通す」フェーズで学習を自己管理する力を見取る
- 31 「実行する」フェーズで学習を調整する姿を見取る
- 32 「振り返る」フェーズで成長の実感を見取る
- 33 自由進度学習で自己管理能力等を見取る
- あとがき
- 参考文献
まえがき
1983年、長岡文雄氏が著された『〈この子〉の拓く学習法』に、今もなお胸を打つ文章があります(以下、筆者による抜粋と要約)。
教育の再生を願って、今日まで「一人ひとりを大切に」「一人ひとりを生かす」というスローガンを掲げた研究や実践が、各地で報告されてきました。しかし、教育現場では本当に「一人ひとり」が大事にされているでしょうか。「〈この子〉のための授業」という、確かな構えが見られるでしょうか。
この問いは、40年近くの時を経た今も、私たち教育者に深く問いかけています。
令和3年に中央教育審議会から出された答申では、「令和の日本型学校教育」の姿として、「個別最適な学び」と「協働的な学び」の一体的な充実が謳われています。目指す授業の姿やその実現方法は時代とともに変わっても、子ども一人ひとりの存在を尊重し、その成長を支えるという根本的な教育理念は、長岡氏の時代から変わることなく受け継がれてきました。
しかし、個別最適な学びが注目される一方で、その実践にはいくつかの課題も生まれています。自分のペースで学習を進めるあまり、他者と協働する機会が減り、孤立してしまう子。得意な分野にばかり時間を費やし、学習内容に偏りや抜けが生じてしまう子。教師の適切なサポートがなく、学習のゴールを見失ってしまう子。こうした懸念点を解消し、個別最適な学びを成功させるための鍵となるのが、私たち教師の「見取り」の力です。
子どもの学習進捗や理解度を丁寧に「見取る」ことで、偏りや抜けを見つけ、適切な手助けができます。また、子ども同士のかかわりを「見取る」ことで、孤立している子や、友達との学びを必要としている子に気づくことができます。子どもの表情や発言から、学習への意欲や達成感を「見取る」ことは、その子の次なる一歩を支える原動力となります。
本書は、子どもの成長を「見取る」ことの重要性と、その具体的な方法をまとめた一冊です。子どもの教育に携わるすべての方へ、私たち教師が持つべき視点と、日々の授業づくりのヒントを提示します。
第1章では、35人の子どもたちと向き合いながら「見取る」ことの重要性を掘り下げます。教師の役割は単に知識を教え込むことだけではありません。一人ひとりの個性や学びのペースを理解し、その成長を促すことが何よりも大切です。そのためには、表面的な行動や発言を捉える「見る」だけでなく、その奥にある思いや思考、つまずきや可能性まで深く読み解く「見取る」という視点が不可欠です。日々の出来事を丹念につなぎ合わせ、一人ひとりの個性や特性を記した「子どものカルテ」を作成することで、ありのままの姿を深く理解するための揺るぎない土台が築かれるでしょう。
第2章では、具体的な見取りの方法について述べます。まず、日常の行動から子どもの思いや思考を深く読み解く方法を、次に、実際の授業の中で35人の子どもたちをどのように見取っていくかについて解説します。すべての子どもを一度に見取ることは困難なため、「この子を重点的に見よう」「この観点に絞って見よう」とねらいを定めておくことの重要性を説きます。また、ICTの活用や「自己調整学習」「自由進度学習」における見取りについても触れています。
子どもが自ら探究し、夢中になって取り組める授業こそが、教師にとって最大の「見取り」のチャンスです。本書が、子どもの豊かな可能性を引き出すための羅針盤となり、日々の教育実践に生かされることを願っています。
2025年11月 /橋本 慎也
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明治図書

















