- はじめに
- 1章 その自己調整学習,間違っていませんか? 誤解のないとらえ方
- 1 「自己調整学習」っていう授業方法や学習方法?
- 1 「自己調整学習」は学習の“あり方”
- 2 例えば「自由進度学習」の中だったら…
- 2 一斉授業では自己調整学習できない?
- 1 「教師主導=悪」「学習者主体=善」という安易な二項対立
- 2 一斉授業の中で回る「3つの循環フェーズ」
- 3 「見せかけの主体性」への警鐘
- 3 子どもに自己調整学習は無理じゃない?
- 1 自己調整学習能力は発達していく
- 2 すべての分野で完璧に自己調整できるわけではない
- 3 メタ認知の発達も大きく関わってくる
- 4 学習者が自己調整しているのだから,教えたらダメ?
- 1 主体性は「放置」からは生まれない
- 2 教師の役割例
- 3 「我流」と「自己調整」の決定的な違い
- 4 教師は「正解」ではなく「悩み方」を教える
- 5 「見通し―実行―振り返り」のフォーマットに従えば自己調整学習?
- 1 自己調整学習のサイクル
- 2 「自己制御」と「自己調整」の違い
- 6 自己選択・自己決定すれば自己調整なの?
- 1 大切なのは「サイクル」
- 2 NGパターン@ 選んでいても,目的がない(予見段階)
- 3 NGパターンA 選んでいても,実行できていない(遂行段階)
- 4 NGパターンB 選んでいても,やりっぱなし(自己省察段階)
- 7 「導入の工夫」は内発的動機づけ?
- 1 内発的動機づけなのか
- 2 「一過性の刺激」を「永続的な意欲」へ育てる
- 3 「与えられた問い」が「自分の問い」になるメカニズム
- 8 「見通し=動機づけ」「実行=学習方略」「振り返り=メタ認知」が大切なの?
- 1 自己調整学習の3つの要素
- 2 「動機づけ」と3つの段階の関わり
- 3 「学習方略」と3つの段階の関わり
- 4 「メタ認知」と3つの段階の関わり
- 9 自己調整学習のサイクルって探究のサイクル?
- 1 「まとめ・表現」は「自己省察」なのか?
- 2 そもそも方向性が違う探究的な学びと自己調整学習
- 10 自己調整学習って「一人学び」「自習」じゃないの?
- 1 自己調整学習のベースは「モデリング」
- 2 助けを求めることも立派な自己調整方略の1つ
- 3 「共調整」・「社会的に共有された学習の調整」
- 11 黙々と課題に取り組んでいれば自己調整?
- 1 なぜ浅い学びになるのか
- 2 「手続き的自律」と「認知的自律」の乖離
- 3 「楽な方略」への逃避を防ぐ
- 4 「方略の質」を評価軸に据える
- 5 「学習方略メニュー」の提示
- 12 自己調整学習では「深い学び」を実現できない?
- 1 浅いアプローチと深いアプローチ
- 2 「スムーズな学習」は定着しない
- 3 「知識の生成」と「概念変容」
- 4 「ルーチン的熟達」から「適応的熟達」へ
- 2章 その自己調整学習,間違っていませんか? 失敗しない考え方
- 【予見】
- 1 内発的動機づけと外発的動機づけを二項対立で考えるのはやめよう!
- 1 「外発的動機づけ」にもいろいろな種類がある
- 2 「外発的動機づけ」から「内発的動機づけ」に移行することもある
- 2 「自己効力感」とよく似た「自己○○感」を区別しよう!
- 1 「自己効力感」とは
- 2 「自己効力感」と似た「自己○○感」という言葉たち
- 3 「とりあえず目標設定させる」ことから卒業しよう!
- 1 その「目標」で本当にいいの?
- 2 [実践] 「目標」とは何か――目標の階層性
- 3 さらに効果的な目標を立てるための視点
- 4 「問いや課題は子どもから出なければ」というこだわりを捨てよう!
- 1 「問い」や「課題」は子どもから出なければならない?
- 2 目標も教師が提示してよい
- 3 [実践] 問題解決への動機づけを高めた後に自己調整を促す実践例「今に伝わる室町文化」
- 5 「先にゴールがわかったらつまらない」という思い込みを捨てよう!
- 1 「ワクワク感」が大切だから「ネタバレ」してはいけない!?
- 2 どの知識を使えばよいかがわかると頭が働きやすい
- 3 [実践] 既有知識と結びつける「先行オーガナイザー」
- 【遂行】
- 6 「子どもに丸投げする」という考えをやめよう!
- 1 「子どもに委ねる」=「子どもに丸投げ」!?
- 2 子どもたちのメタ認知を補う教師の言葉かけ
- 7 「子どもに委ねているから教えちゃいけない」という思い込みを捨てよう!
- 1 「委ねられる」より「教えてもらいたい」と思っている子どもたち
- 2 [実践] 教室での例@ 用語や資料の理解で困っていた子どもたちへのミニ授業
- 3 [実践] 教室での例A 「何がわかったか先生に説明してみて」
- 4 ミニ授業と,支えることによって育つ
- 8 授業中の座席の形式も子どもたちに任せてみよう!
- 1 机の配置や「個別学習/協働学習ゾーン」などを決めるべきか
- 2 [実践] 環境構成する視点を与える教師の声かけ
- 3 環境構成の「失敗」も立派な「学び」である
- 【省察】
- 9 「『振り返り』こそが最も大切」という考えを見直そう!
- 1 「振り返り」に10分以上!?
- 2 文章を書くことだけが振り返りの方法ではない
- 3 「目標設定」あっての「振り返り」
- 10 「とりあえず振り返りを書かせる」ことから卒業しよう!
- 1 なぜ振り返りが単なる感想で終わるのか
- 2 振り返りで「メタ認知的知識」を獲得する
- 3 [実践] “学び方図鑑”──学び方を具体的に振り返る
- おわりに
はじめに
私が「自己調整学習」という言葉を初めて聞いたのは,今から10年前,大学院修士1年生のときでした。恩師である河村茂雄先生(早稲田大学教授)が「これからのキーワードは“自己調整”だ」とおっしゃったのをはっきりと覚えています。
当時私は大学院で教育心理学について学ぶ一方,現場の先生方の勉強会にも参加していました。そこで学んだ教育技術は「教師による学習の調整」ととらえられるのではないか―そう思った私は,自己調整学習の理論の枠組みを使って,教育技術を分類・整理し,修士論文にまとめました(この修士論文は未発表だったため,その後書き直してある学会に投稿したところ,学会最優秀賞をいただくことができました)。
このように大学院のころから自己調整学習の理論を学んできたため,小学校教員として現場に立ってからも,ずっとこの理論が頭の片隅にありました。授業を考えるときも,子どもたちの自己調整学習能力をどうやって伸ばしていくか,という問題意識が常にありました。
そして最近になって,ついに学校現場でも「自己調整学習」という言葉が聞かれるようになったのです。研究授業の協議会で「自己調整」という言葉を同僚の先生から聞いたときはなぜか感動したことを覚えています。インディーズのころから応援していたバンドがついにメジャーデビューしたような,そんな気持ちだったのかもしれません(笑)。
書店に並ぶ教育書にも「自己調整学習」という言葉を冠したものが見られるようになりました。SNS上でも,現場の先生が「自己調整」という言葉を使って発信することが増えました。
しかしながら,そういった書籍や発信の中には「おや?」と思うものも多数ありました。「自己調整学習」を特定の授業方法だととらえているような記述や,「自由進度学習や自己調整学習」という,カテゴリーの違うものを並列にした表現,探究的な学びと混同しているような説明…。「自己調整学習」に対して肯定的であれ,否定的であれ,「自己調整学習」とは何かという前提が共有されないまま議論が進んでいるのではないか。
そうした危機感から,自身のインスタグラムに,「誤解だらけの自己調整」という投稿をしたところ,予想以上の反響がありました。その投稿を取り上げてくださったおひとりが,樋口万太郎先生だったのです。樋口先生とは以前から学会などでお会いしたことがあったのですが,あるとき,大阪で出版記念セミナーをご一緒する機会がありました。私が『自己調整につながる学習理論をビジュアルでまとめました』という単著を上梓したのとときを同じくして,樋口先生も『その自由進度学習,間違っていませんか? 失敗しない進め方』(どちらも明治図書)という本を出版されたことがきっかけです。そして,この本を書くことになったのです。
自己調整学習の理論が体系化されたのは30年以上も前のことです。アメリカで発展したこの理論は,10年以上前に日本の教育心理学会で盛んに取り上げられ,そして最近学校現場でも認知されるようになってきたという経緯があります。しかし,今,「自己調整学習」という言葉が独り歩きしてしまい,表面的な方法論として扱われてしまう危うさを感じています。「こうすれば子どもたちが自己調整していることになる」といった安易な理解にとどまってしまえば,子どもたちの学びを丁寧に見取る視点を失いかねません。これは単に研究上の問題にとどまらず,現場の教育にも大きく影響する課題だと考えています。
本書では,できるかぎり学校現場の実践に寄り添う形で,自己調整学習の理論を解説したつもりです。自己調整学習に関心を持つ先生方にとって,改めてとらえ直す機会になれば幸いです。そして,本書の企画をくださった樋口万太郎先生,明治図書の及川誠さんに,心より感謝申し上げます。
/白杉 亮
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明治図書

















