- はじめに
- 第1章 子供を「みる」視点
- 0 子供を「みる」4つのステップ
- 1 見る―全体を見渡す
- 2 視る―事実を捉える
- 3 観る―子供の内面を読み取る
- 4 診る―適切なフィードバックをする
- 第2章 8つの「感」と教師の言葉かけ
- 0 「学びのエンジン」の正体
- 1 「8つの感」を覚えさせる言葉かけ
- 2 もっておきたい子供像
- 3 教師のNG机間指導
- 第3章 「学びのマップ」を子供に渡す
- 0 「学びのマップ」を子供に渡す
- 1 「学びのマップ」を子供に渡す―国語編
- 2 「学びのマップ」を子供に渡す―算数編
- 3 「学びのマップ」を子供に渡す―社会編
- 4 「学びのマップ」を子供に渡す―理科編
- 5 「学びのマップ」を子供に渡す―体育編
- 第4章 個に応じた机間指導
- 0 個に応じた机間指導
- 1 説明―子供の思考を補完する
- 2 指示―今何をすべきかを明確に伝える
- 3 問いかけ―子供の考えを引き出す
- 4 ゆさぶり―平坦な子供の思考に刺激を与える
- 5 励まし―子供の反応を肯定的に捉える
- 第5章 子供同士の考えをつなげる
- 0 子供同士の考えをつなげる
- 1 意見を強化する
- 2 意見を対立させる
- 3 新しい考えを発見させる
- 4 意見を創造させる
- 第6章 学級に受容的な雰囲気を醸成する
- 0 学級の状態を捉える
- 1 子供の考えを大切にする
- 2 友だちの考えを大切にさせる
- 3 挑戦意欲を高める
- 引用・参考文献一覧
- おわりに
はじめに
算数「分数」の授業でのことです。頬杖をついてぼーっと話を聞いている子供がいました。
その子の傍で、「早く取りかかりましょう」と促しても、ずっとぼーっとしていました。
私は「どうしたものか」と悩みました。普段の休み時間や他教科の授業では活発な子供だけに不思議でした。
「どうしたの?」
と聞いてみましたが、反応はありませんでした。そこで、
「何か手伝えることはある?」
と尋ねてみると、その子がボソッとつぶやきました。
「ぼくは色が塗りたいんだよなぁ」
私は、はっとしました。はじめはいくつ分を考えるためにコップの目盛りに色を塗っていたのですが、途中から線分図を活用しながら考えていました。
その子にとっては、線分図で目盛りを数えるよりも、コップの水に色を塗る方が考えやすかったのです。
すぐさま、印刷しておいたコップ型目盛りを渡しました。すると、その子は水を得た魚のようにすぐさま色を塗り始め、課題にしっかり取り組みました。
この経験から、「子供の行動には必ず何か理由があるのではないか」と考えるようになりました。
机間指導の重要性は複式学級の担任をしているときにも感じました。
3・4年生を担任しましたが、極少人数ではなく、自分たちで授業を進めていかなければならない人数です。一斉授業ではなく、子供たちだけで学びを進めていきます。私はほとんど黒板の前に立つことなく、立ち位置は3年生と4年生の間でした。そして、子供たちの学びの様子を「みる」ことに注力しました。
子供たちの学びの様子を「みる」うちに、机間指導の役割について体系化することができました。実に多様な役割や効果があり、黒板の前に教師が立つ必要はないのではないかと感じるほどです。
昨今、「自由進度学習」「学び合い」といった、教師主導ではなく、子供に学びを任せる学習方法が実践されています。これらの実践を紹介する書籍では、子供主体で取り組ませる手法には言及されているのですが、子供に学びを任せているときの「教師の役割」に言及しているのは、あまり見たことがありません。「教師の役割」は、すなわち机間指導ですが、机間指導は学習者主体の授業を実現するうえで絶対不可欠です。
机間指導とは、子供と向き合うことです。子供の反応を予想する教材研究と違い、目の前の子供と向き合います。そして、教師の言葉かけ1つで子供の学びは大きく変わります。
学びだけではありません。学級経営においても机間指導は欠かせません。子供たちに「できた!」「わかった!」といった達成感を味わわせることは大切です。
「教師は一人ひとりの子供の学びに寄り添い、支援する伴走者」といった指導観のもと、子供の学びを促進できる存在にならなくてはなりません。
本書が、皆様にとって日々の教育実践の一助になれば幸いです。
2024年3月 /浦元 康
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- 明治図書
- 何となくやっていた机間指導を視点を持つことで、指導や学級経営の質を高めることができると言うことを知り、驚きました。アウトプットできるように頑張ります。2024/8/630代.小学校教諭