- まえがき
- 第1章 体育主任&学級担任のための5つのポイント
- 1 体育主任のための運動会計画5つのポイント
- 実施計画案作成のポイント
- 練習日程を組むポイント
- プログラム作成のポイント
- 会場の準備・後片付けのポイント
- 当日の進行のポイント
- 2 学級担任のための運動会指導5つのポイント
- 運動会の意義を押さえるポイント
- 個人種目の指導のポイント
- 団体種目・リレーの指導のポイント
- 応援の指導のポイント
- 運動会“後”に生かすポイント
- コラム 運動会の歴史
- 第2章 正しい運動会指導のポイント
- 1 運動会のテーマ(スローガン)の指導
- テーマ(スローガン)の決め方の指導
- 練習期間のテーマ(スローガン)へのモチベーションを高める指導
- テーマ(スローガン)のふり返りの指導
- 2 入場行進の指導
- 手の振り方・足の上げ方の指導
- 姿勢・目線の指導
- 歩き出し方・止まり方の指導
- 3 準備運動・整理運動の指導
- 運動会の準備運動・整理運動の意義
- ストレッチ系の運動の指導
- ラジオ体操の指導
- 4 運動会の係の指導
- 心構えの指導
- 放送係・準備係の指導
- 出発係・決勝係の指導
- 5 徒競走の指導
- スタートの指導
- 真っ直ぐに走る指導
- ゴールの指導
- 6 リレーの指導
- バトンパスの指導
- バトンゾーンの指導
- コーナートップの指導
- 7 組体操の指導
- 少人数(2〜3人組)の組体操の指導
- ピラミッド系の組体操の指導
- タワー系の組体操の指導
- 8 団体競技の指導
- つなひきの指導
- 玉入れの指導
- 騎馬戦の指導
- 9 応援合戦の指導
- 応援リーダー・応援団長の心構えの指導
- 応援練習の指導
- 応援合戦の指導
- コラム 運動会は「春」?「秋」?
- 第3章 運動会指導をさらに円滑にするアイデア
- 1 運動会のテーマ(スローガン)を生かすアイデア
- 運動会気分を盛り上げるアイデア
- 特別支援が必要な子どもが,テーマを身近に感じるためのアイデア
- 全体のテーマ(スローガン)を一人ひとりの目標にするアイデア
- 2 応援リーダー指導のアイデア
- 振付指導のアイデア
- 応援歌の指導のアイデア
- 団長・副団長への指導のアイデア
- 3 リレー練習のアイデア
- 室内(教室or体育館)でできるリレー練習のアイデア
- バトンがなくてもできるリレー練習のアイデア
- 全校代表リレーの指導のポイントと練習のアイデア
- コラム 「感動」と練習時間
- 第4章 支援を要する子への支援・配慮
- 1 開閉会式の支援・配慮
- 入場行進の支援・配慮
- 準備運動・整理運動の支援・配慮
- 話を聞くときの支援・配慮
- 2 競技上の支援・配慮
- 徒競走の支援・配慮
- リレーの支援・配慮
- 表現運動の支援・配慮
- 3 応援時の支援・配慮
- 応援席の支援・配慮
- 応援合戦の支援・配慮
- 応援リーダーの支援・配慮
- コラム 運動会のけがのリスク
- 第5章 運動会の危機管理
- 競技中のけがを防ぐ
- テント設営時のけがを防ぐ
- 熱中症を防ぐ
- 突風・つむじ風の事故を防ぐ
- 心肺停止の対応と心構え
- 光化学オキシダントの対応
- 不審者への備え
- コラム ラインカーとラインの引き方
- 第6章 盛り上がるオススメ種目集
- 【低学年】こいのぼり走
- 【低学年】積み上げ走
- 【低学年】玉入れにアレンジプラス
- 【低学年】おさるのかごや
- 【中学年】障害物競走
- 【中学年】ワープゾーンつき全員リレー
- 【中学年】台風の目
- 【中学年】仲間をつくって棒取り合戦
- 【高学年】ドリブル競争
- 【高学年】運命のじゃんけんぽん!
- 【高学年】全力玉入れ「逃走中」
- 【高学年】ドキドキ大玉リレー
- あとがき
まえがき
教師4年目,転勤して初めての体育主任
教師4年目,私はある離島の小規模校へ転勤しました。その地で,初めての体育主任を命ぜられることになります。
私は,戸惑いました。
なぜなら,前任校の運動会は秋の開催でしたが,転勤したその学校では春の開催だったのです。つまり,転勤早々に,いきなり運動会の実施計画案を提案しなければなりませんでした。
慣れない運動会を企画・運営する体育主任になった私ですが,その学校には前任の体育主任が残っていたので,教えてもらいながら進めることができました。
私は4年目で体育主任を任されましたが,教員の大量退職時代を迎え,さらに早い年数で体育主任に抜擢されたり,前任者が転退職してしまって,いなかったりするケースもあります。そうなると,前年度の計画案があっても,細かい部分や,なぜそうするのかがわからず,スムーズに進められません。
他のベテラン教員が教えてくれるかというと,文句を言われることはあっても,そんな面倒なことをしてくれる教員はほとんどいないのです。
地域で違う運動会
私が戸惑った理由は,もう1つあります。その学校には,前任校にはなかった習慣や種目が数多くあったからです。
例えば,運動会当日,運動場に万国旗が張り巡らされたのですが(それも初めてでしたが),それと一緒に何重もの鯉のぼりもかけてありました。5月の開催だからでしょうか。その地域では,家庭で不要になった鯉のぼりを学校へ寄付する習慣があったのです。
例えば,子どもたちが楽器を演奏する「鍵鼓隊」という楽隊がありました。入場行進の際には,子どもたちの先頭で演奏をしながら行進をするのです。運動会の練習と並行して,楽器の練習もしなければなりませんでした。
例えば,小学生→中学生→高校生→20代→30代→40代と,子どもから大人へつなぐ「地域選抜対抗リレー」がありました。プログラムの一番最後に行い,もっとも盛り上がる競技でした。まさに,町内運動会です。
このように,同じ県内でも,前任校の運動会とは違う面が多々あり,戸惑うことの連続でした。
県外に目を向けると,準備運動の違いも見られます。私自身の小・中・高校の運動会(体育祭)の準備運動は,ラジオ体操第一でした。教師になってからも,それは同じです。ところが,都道府県によっては,運動会でラジオ体操などやったことがないという地域もあるのです。
他の都道府県へ転勤することがないので,教師は自分の地域の運動会が全国標準だと思い込んでしまっていることがあります。準備運動以外にも,さらに多くの違いがあるのでしょう。
運動会には,教科書がない
なぜ,こうも運動会に違いがあるのでしょうか? それは,
運動会には,教科書がない
からです。
考えてみれば,運動会は不思議です。全国,どこの学校でも行うのにもかかわらず,学習指導要領にも体育のカリキュラムにも,「運動会」はありません(「小学校学習指導要領解説 特別活動編」には,健康安全・体育的行事の一例として取り上げられていますが)。だから,地域によっても,学校によってもやり方が違います。別の言い方をすれば「自由度」が高いのです。
そのせいか,運動会に関する書籍を探そうとしても,集団行動や表現,組体操など,どれか1つの種目に絞った書籍はありますが,運動会全体を網羅した体育主任や学級担任のための書籍は見つかりませんでした(私の不勉強のせいで,実はあるのかもしれませんが)。
1年目の教師にもわかりやすい運動会の入門書
そこで,本書は,
学級担任として初めて運動会に取り組む1年目の教師にも,初めて体育主任を任された若手の教師にも役立つ,わかりやすい運動会の入門書
をコンセプトに企画しました。
前述したとおり,運動会は地域性の違いが大きいのですが,できるだけ全国的に共通する部分を取り上げています。ご自分の地域に合った部分や取り入れやすい部分を活用して頂ければ幸いです。
折しも,最近は運動会の練習中に起こった熱中症や,重大事故につながる組体操の危険性など,運動会の安全性に関する話題が盛んに取り上げられています。そのようなこともあり,第5章には「運動会の危機管理」と題して,運動会を安全に運営するための心構えや対処法について取り上げました。安全で安心な運動会にするための一助になれば幸いです。
多大な労力と時間をかけて取り組む運動会が,少しでも実りある活動になるために,本書が役立つことを願います。
/辻川 和彦
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- 明治図書