- まえがき
- 本書の使い方
- 第1章 単元を貫く学習課題でつくる公民的分野の授業
- 1 単元を貫く学習課題の設定
- 2 公民的分野で働かせたい「社会的な見方・考え方」
- Column1》公民的分野におけるワークシート作成のポイント
- 第2章 「私たちと現代社会」の授業展開&ワークシート
- 1 私たちが生きる現代社会
- 情報化が普段の生活に与える影響について考えよう(3/5時間)
- 2 現代につながる伝統と文化
- 新しい技術と古い伝統に共通点はないか考えよう(3/4時間)
- 3 私たちがつくるこれからの社会
- ルールの果たす役割について関心を高めよう(1/4時間)
- 情報機器の使用ルールについて考えよう(4/4時間)
- Column2》「私たちと政治」におけるアクティブ・ラーニングのポイント
- 第3章 「私たちと政治」の授業展開&ワークシート
- 4 民主主義を支える日本国憲法
- 人権保障に関する歴史的なできごとを分類しよう(2/5時間)
- 5 憲法が保障する基本的人権
- 最も大切だと考える自由を判断しよう(2/10時間)
- 平等権を保障するためにできることに関心を高めよう(4/10時間)
- 新しい人権が生まれた経緯について資料から読み取ろう(7/10時間)
- 権利を守るために必要な権利を理解しよう(8/10時間)
- 6 私たちの平和主義
- 平和主義の生かし方について考えて判断しよう(3/4時間)
- 7 民主主義と日本の政治
- 投票をする意味について考えよう(2/9時間)
- 情報化社会における世論のあり方について考えよう(4/9時間)
- 国会議員の役割に関心を高めよう(6/9時間)
- 日本の議院内閣制の特徴を理解しよう(7/9時間)
- 8 司法権の独立と裁判
- 裁判のはたらきについて関心を高めよう(1/5時間)
- 裁判に時間がかかる理由を理解しよう(3/5時間)
- 三権分立のしくみの図を説明しよう(5/5時間)
- 9 地方自治と住民参加
- 地方財政の課題を資料から読み取ろう(2/5時間)
- 子ども条例から住民参加の方法について考えて提案しよう(4/5時間)
- Column3》「私たちと経済」におけるアクティブ・ラーニングのポイント
- 第4章 「私たちと経済」の授業展開&ワークシート
- 10 消費生活と市場経済
- 情報化や少子高齢化と流通の変化の関わりについて考えよう(3/5時間)
- 価格が決まるしくみについて理解しよう(4/5時間)
- 11 生産のしくみと企業・金融
- 起業に挑戦して会社への関心を高めよう(2/5時間)
- 金融の役割を様々な立場から考えて表現しよう(3/5時間)
- 12 働く意義と労働条件の改善
- 働く環境の変化への関心を高めよう(3/4時間)
- 13 国民の生活と福祉の向上
- 消費者の権利について分類しながら考えよう(4/5時間)
- 14 財政と政府の役割
- 税の種類について理解しよう(2/5時間)
- 国の歳入と歳出への関心を高めて課題を見出そう(3/5時間)
- 15 これからの日本経済の課題
- 経済へのグルーバル化の影響について考えよう(3/5時間)
- Column4》「私たちと国際社会の諸課題」におけるアクティブ・ラーニングのポイント
- 第5章 「私たちと国際社会の諸課題」の授業展開&ワークシート
- 16 国際社会と国家
- 領土問題の原因を理解しよう(2/7時間)
- 地域統合の変化について予測しよう(5/7時間)
- 市民の国際支援への関心を高めよう(7/7時間)
- 17 よりよい社会を目指して
- あってよい違いとあってはいけない違いについて関心を高めよう(1/9時間)
- 環境問題への対策が進まない原因について考えよう(4/9時間)
- 持続可能な未来につながるルールを構想しよう(6/9時間)
- 自分の主張が伝わる発表資料を作ろう(7/9時間)
- 付録 「単元を貫く学習課題」に対するまとめの例
- あとがき
まえがき
新学習指導要領の中学校の全面実施まで,約1年となりました。社会科の授業は,どのように変化するのでしょうか。「主体的・対話的で深い学び」「見方・考え方」「カリキュラム・マネジメント」などの新しい概念については,文部科学省の資料でも様々な説明がされ,関連書籍も発行されるなど,理論面での理解は広がっているように思います。
しかし,その理論を毎日の具体的な実践として生かすのは,簡単なことではありません。「働き方改革」の必要性が叫ばれ,生徒と向き合う時間の確保も難しい状況で,経験の少ない先生方や多くの校務を抱える先生方にとって,新しい学びの形を考える余裕はないかもしれません。
また,「これまでの社会の授業と大きく変わるわけではない」と楽観視する意見もありますが,必ずしもそうは言いきれません。学習する知識や技能に同じ部分があったとしても,生徒が「見方・考え方」を働かせる機会を確保して「主体的・対話的で深い学び」を実現できるように,単元の計画や学習展開を新たにデザインしなければならないからです。
特に,公民的分野では現代社会の問題をつかみ,解決のために取り組むべき課題を設定し,解決の方法を構想するような探究的な活動を行うことが重要です。これまでの授業実践の経験や研究の蓄積を生かしながら,新学習指導要領に合わせて授業改善を図る必要があります。
そこで,本書は新学習指導要領に沿って,公民的分野におけるすべての単元を取り上げ,各単元の目標と各時間の目標と概要,主な授業の展開例とワークシートを掲載しています。授業展開例には,現代社会の「見方・考え方」を働かせるポイントを具体的に示しています。
また,「主体的・対話的で深い学び」のためには,単元のまとまりの中で課題を探究することが大切です。そこで,新学習指導要領の内容に基づいて,すべての単元で「単元を貫く学習課題」を設定しました。巻末には,その解答例を掲載しています。昨年発刊した『単元を貫く学習課題でつくる! 中学校地理の授業展開&ワークシート』及び『単元を貫く学習課題でつくる! 中学校歴史の授業展開&ワークシート』と合わせて,新学習指導要領に基づく網羅的で新しい社会科の学習指導の実践例を提示するのは,初めての試みかと思います。
以上のように,新学習指導要領の趣旨を反映させながらも,研究授業などの特別な機会に活用するというよりは,普段の授業改善に資する一冊になるようにしました。あくまで,目の前の生徒たちに対して,よりよい学びの機会を設けるのがねらいです。
単元を貫く学習課題の有用性や見方・考え方を働かせる工夫の方法については,研究の蓄積が必要です。私自身,地理編や歴史編に対していただいた意見を基に,公民編では課題の設定や発問を改善しました。本書が1つの足がかりとなって,これからの社会科の授業の在り方について議論が深まり,実践が広がっていけば幸いです。
2020年1月 /川端 裕介
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