- まえがき
- 本書の使い方
- 第1章 単元を貫く学習課題でつくる歴史的分野の授業
- 1 単元を貫く学習課題の設定
- 2 歴史的分野で働かせたい「社会的な見方・考え方」
- Column 1》歴史的分野におけるワークシート作成のポイント
- 第2章 「歴史との対話」の授業展開&ワークシート
- 1 私たちと歴史
- 各時代に活躍した人物の共通点について考えよう(3/5時間)
- 2 身近な地域の歴史
- 今と昔の地図を比較しながら函館の歴史について調べよう(2/5時間)
- Column 2》「古代までの日本」におけるアクティブ・ラーニングのポイント
- 第3章 「古代までの日本」の授業展開&ワークシート
- 3 世界の古代文明や宗教のおこり
- 古代文明に共通することを考えよう(3/5時間)
- 4 日本列島における国家形成
- なぜ大きな古墳をつくることができたのか考えよう(4/6時間)
- タイムマシンでの旅行パンフレットを作ろう(6/6時間)
- 5 律令国家の形成と古代の文化
- 律令国家の成立に最も影響した出来事について考えよう(3/8時間)
- 藤原氏がどのように政治の実権を握ったか理解しよう(6/8時間)
- Column 3》「中世の日本」におけるアクティブ・ラーニングのポイント
- 第4章 「中世の日本」の授業展開&ワークシート
- 6 武家政治の成立とユーラシアの交流
- 武士の立場の変化について,絵画資料から読み取ろう(2/7時間)
- 承久の乱を通して武士の支配はどのように変化したか考えよう(4/7時間)
- 7 武家政治の展開と東アジアの動き
- 武家と公家の関係の変化について考えよう(1/5時間)
- 琉球王国とアイヌ民族が東アジアで果たした役割を理解しよう(4/5時間)
- 8 民衆の成長と新たな文化の形成
- 戦国大名の特色について法から考えよう(3/5時間)
- 「融合」をキーワードにして室町文化について理解しよう(4/5時間)
- Column 4》「近世の日本」におけるアクティブ・ラーニングのポイント
- 第5章 「近世の日本」の授業展開&ワークシート
- 9 世界の動きと統一事業
- 織田信長はどのような人物だったのか判断しよう(5/8時間)
- 戦国時代の文化について4つの側面から理解しよう(7/8時間)
- 10 江戸幕府の成立と対外関係
- 大名に対してどのような政治をしたのか資料から読み取ろう(1/5時間)
- 11 産業の発達と町人文化
- 江戸時代の文化や教育から現在につながる点について考えよう(3/5時間)
- 12 幕府の政治の展開
- 江戸幕府の政治改革を比べてランキングをつけよう(2/5時間)
- Column 5》「近代の日本と世界」におけるアクティブ・ラーニングのポイント
- 第6章 「近代の日本と世界」の授業展開&ワークシート
- 13 欧米における近代社会の成立とアジア諸国の動き
- 市民革命の歴史的な価値を法から考えよう(2/6時間)
- 14 明治維新と近代国家の形成
- 江戸幕府が滅亡した理由について考えよう(3/9時間)
- 近代化の面から明治政府の政策を評価しよう(9/9時間)
- 15 議会政治の始まりと国際社会との関わり
- 日清戦争の頃のアジアの情勢を風刺画から読み取ろう(4/8時間)
- 16 近代産業の発展と近代文化の形成
- 工業化によって生じた問題の解決策について考えよう(2/5時間)
- 17 第一次世界大戦前後の国際情勢と大衆の出現
- 大戦後の世界における各国の状況を比べよう(4/8時間)
- 現在と比べながら大衆文化への関心を高めよう(7/8時間)
- 18 第二次世界大戦と人類への惨禍
- 国民が戦争に協力する体制がどのようにできたのか説明しよう(4/9時間)
- 日本が開戦した理由を分析しよう(6/9時間)
- Column 6》「現代の日本と世界」におけるアクティブ・ラーニングのポイント
- 第7章 「現代の日本と世界」の授業展開&ワークシート
- 19 日本の民主化と冷戦下の国際社会
- 日本国憲法の価値について考えよう(2/6時間)
- 20 日本の経済の発展とグローバル化する世界
- 高度経済成長による課題を解決する方法について考えよう(4/6時間)
- 付録 「単元を貫く学習課題」に対するまとめの例
- あとがき
まえがき
新学習指導要領の実施に伴い,社会科の授業はどのように変化するのでしょうか。「主体的・対話的で深い学び」「見方・考え方」「カリキュラム・マネジメント」などの新しい概念についての理解は広がっているように思います。
しかし,教室で毎時間,生徒と向き合いながら授業を行う際に,それらの新しい概念をどのように生かせば良いのでしょうか。経験の少ない先生方や,多忙な中で教材研究の時間を確保できない先生方にとって,一から授業の形や内容を考えるのは現実的ではありません。
また,「これまでと大きく変わるわけではない」と楽観視する意見もあります。特に,歴史的分野は地理的分野や公民的分野と比べると,学習指導要領が新しくなっても学習する内容があまり変化しないと思われやすい面があります。しかし,歴史的分野の学習内容が変わらないというのは誤った認識です。新学習指導要領においては,歴史を大観しながら大きな時代の流れと特色を理解することが,一層重視されているからです。
さらに,学習する知識や技能に同じ部分があったとしても,学習方法や身に付けさせたい力は大きく変わります。新学習指導要領では,生徒が「見方・考え方」を働かせる機会を確保して「主体的・対話的で深い学び」を実現できるように,単元の計画や授業の展開を新たにデザインする必要があります。
そこで,本書は新学習指導要領に沿って,歴史的分野におけるすべての単元を取り上げ,各単元の目標と各時間の目標と概要,主な授業の展開例とワークシートを掲載しています。授業展開例には,歴史的な「見方・考え方」を働かせるポイントを具体的に示しています。
また,すべての単元において「単元を貫く学習課題」を設定しました。「主体的・対話的で深い学び」の内,特に「深い学び」を実現するためには,単元のまとまりの中で課題を追究していくことが大切です。そこで,新学習指導要領の内容に基づき,歴史的分野のすべての単元に関して,単元を貫く学習課題を設定しました。巻末には,その解答例を掲載しています。このように新学習指導要領に基づいて,網羅的に歴史的分野の学習指導について取り上げたのは,おそらく初めての試みかと思います。
以上のように,マニュアル本やノウハウ本にならないようにしつつ,汎用性の高い内容になるように配慮しました。本書の実践例や単元計画には,新学習指導要領のねらいや内容を反映し,授業実践例や単元計画を通して,新学習指導要領の趣旨が理解できるようにしました。
単元を貫く学習課題の有用性や,生徒が「見方・考え方」を授業の中で働かせるための方法については,一層精査する必要があると考えます。本書を足がかりにして,これからの社会科の授業の在り方について議論が深まり,実践が広がっていけば幸いです。
2019年1月 /川端 裕介
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