- 巻頭言
- 学習指導要領改訂で特別支援教育は,どう変わるのか 改訂のポイントを読み解く /宮ア 英憲
- 提言
- 改訂学習指導要領の基本的な方向性 /天笠 茂
- 改訂特別支援学校学習指導要領の基本的な方向性 /安藤 壽子
- 第1章 キーワードでみる学習指導要領改訂のポイント
- 育成を目指す資質・能力の三つの柱と特別支援学校(知的障害)の教育課程
- 小・中・高等学校と特別支援学校(知的障害)の各教科の連続性
- 特別支援学校(知的障害)の各教科段階ごとの目標の設定と段階の新設
- 特別支援学校(知的障害)における教科別・領域別指導と各教科等を合わせた指導
- 特別支援学校(知的障害)における学習状況の多面的評価と各教科の目標に準拠した学習評価
- 自立活動の内容の改善・充実の方向性とその評価
- 重度・重複障害のある子供の指導で求められること
- アクティブ・ラーニングの視点でつくる授業づくり
- 特別支援教育の視点を踏まえたカリキュラム・マネジメント
- キャリア教育の充実
- 通常の学級・特別支援学級・通級による指導の充実
- 個別の教育支援計画・個別の指導計画,交流及び共同学習
- 第2章 事例でみる学習指導要領改訂のポイント
- 小・中・高等学校 各教科の連続性のある指導
- 中学校から特別支援学校高等部の連続性のある指導
- 特別支援学校(知的障害)の各教科段階ごとの目標の設定と段階の新設
- 特別支援学校(知的障害)における教科別・領域別指導と各教科等を合わせた指導
- 特別支援学校(知的障害)における学習状況の多面的評価と各教科の目標に準拠した学習評価
- 自立活動の内容の改善・充実の方向性とその評価
- 重度・重複障害のある子供の指導
- アクティブ・ラーニングの視点でつくる授業
- 特別支援教育の視点を踏まえたカリキュラム・マネジメントの実践
- キャリア教育の充実
- 通常の学級・特別支援学級・通級による指導の充実
- 特別支援学校の交流及び共同学習の充実
- 付録
- 特別支援学校小学部・中学部学習指導要領(案)(平成29年3月)
- 執筆者一覧
巻頭言
学習指導要領改訂で特別支援教育は,どう変わるのか 改訂のポイントを読み解く
東洋大学名誉教授 /宮ア 英憲
1 諮問文に込められた学習指導要領改訂の意図
平成26年11月20日,中央教育審議会(第95回)において,文部科学大臣より「初等中等教育における教育課程の基準等の在り方について」と題した「諮問の理由及び問題意識」と「審議の柱と具体的な審議の内容」からなる理由を添えた学習指導要領改訂に向けた諮問がされた。
審議の柱と具体的な審議内容に関して,@教育目標・内容と学習・指導方法,学習評価の在り方を一体として捉えた,新しい時代にふさわしい学習指導要領等の基本的な考え方。A育成すべき資質・能力を踏まえた,新たな教科・科目等の在り方や,既存の教科・科目等の目標・内容の見直し。B学習指導要領等の理念を実現するための,各学校におけるカリキュラム・マネジメントや学習・指導方法及び評価方法の改善を支援する方策の3点が挙げられている。Aに関する具体的審議内容では,「障害者の権利に関する条約に掲げられたインクルーシブ教育システムの理念を踏まえ,全ての学校において,発達障害を含めた障害のある子供たちに対する特別支援教育を着実に進めていくためには,どのような見直しが必要か。その際,特別支援学校については,小・中・高等学校等に準じた改善を図るとともに,自立と社会参加を一層推進する観点から,自立活動の充実や知的障害のある児童生徒のための各教科の改善などについて,どのように考えるべきか。」との言及がなされている。まさに,特別支援教育を巡る検討課題の骨格をなす問題提起がされたといえる。
2 学習指導要領改訂の審議経過
今回の学習指導要領改訂に関しての審議は,中教審教育課程企画特別部会が設置され,平成27年1月29日から開始されている。その後,精力的な審議を重ね,平成27年8月26日には「論点整理」という形で新しい学習指導要領が目指す姿等が示された。もっとも,この審議には国立教育政策研究所等で早い段階から諸外国の動向等も踏まえた基礎的研究が生かされていることは周知の事実である。平成28年8月26日に中教審教育課程部会が300頁を超える「次期学習指導要領に向けたこれまでの審議のまとめ」を公表。平成28年12月21日に「幼稚園,小学校,中学校,高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について(答申)」に至っている。
諮問で提起された特別支援教育を巡る課題についての検討は「論点整理」を受け,特別支援教育特別部会で行われた。平成27年11月6日(第1回)を皮切りに平成28年5月30日(第9回)まで審議された。審議では,特別支援教育の意義とインクルーシブ教育システムを巡る動向についての議論を踏まえ,幼稚園,小・中学校,高等学校における特別支援教育についても言及し,それぞれ学校種での改善・充実の方向性についても検討が加えられた内容となっている。この部会のとりまとめは,中教審教育課程部会「次期学習指導要領に向けたこれまでの審議のまとめ」に反映されている。
3 学習指導要領等の改善及び必要な方策等について(答申)概要
中央教育審議会「幼稚園,小学校,中学校,高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について(答申)」は,「第1部学習指導要領等改訂の基本的な方向性」と「第2部各学校段階,各教科等における改訂の具体的な方向性」から構成されている。第1部は10章構成である。具体的には,@これまでの学習指導要領等改訂の経緯と子供たちの現状。A2030年の社会と子供たちの未来。B子供たちに求められる資質・能力と教育課程の課題。C学習指導要領等の枠組みの改善と「社会に開かれた教育課程」などの視点から,横断的・重層的な示し方がされている。また,第2部は2章構成となっている。第1章は,各学校段階の教育課程の基本的な枠組みと,学校段階間の接続,第2章は,各教科・科目等の見直しが扱われている。
特別支援教育に係る審議等を踏まえた記述は,これまでのような扱いとは異なり,様々に横断的・重層的な取り扱いとなっているが,特に示すとすれば,第1部「第8章子供一人一人の発達をどのように支援するか」の中で「5教育課程全体を通じたインクルーシブ教育システムの構築を目指す特別支援教育」と第2部第1章各学校段階の教育課程の基本的な枠組みと,学校段階間の接続の中で色濃く扱われていることが読み取れる。
4 学習指導要領改訂のポイントを読み解く
学習指導要領の改訂について解説した書籍は,これまでにも多数に上る。しかし,特別支援教育の観点からの解説本となると従来の改訂でもあまり多くない。したがって,本書では特別支援教育という視点からの切り口で,学習指導要領を読み解くことに意を用いた。
第1章で,学習指導要領の根幹をなす改訂ポイントとされたキーワードを挙げて識者に解説をしてもらっている。また,第2章では,先行的な教育実践に挑戦している学校の事例から改訂のポイントを探る形で,改訂の意図に迫ろうとした内容になっている。
学習指導要領の実施スケジュールは,平成30年以降,移行期間を経て全面実施となっていくと思われるが,各学校が改訂の意図をしっかりと認識し,教育実践に生かしていくことが求められると思われる。本書がその一助となると望外の喜びである。
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- 明治図書
- 新学習指導要領について、よくわかった。開かれた教育課程などの解説が参考になった。2018/10/2140、支援学校教諭
- とても分かりやすい2017/10/1540代・男性
- 通常の学習指導要領で示されていることを特別支援学校の教育課程、教育活動へどう具現化していくべきなのかが識者の解説でわかりやすく説明されているため、この学習指導要領がめざしていることがよく理解できました。2017/10/1550代・女性
- 新旧の比較などがあればいいと思いました。2017/8/730代・女性