- はじめに
- 第1章 崩れない授業をつくるための大原則
- @基本的学習習慣を正す
- A宿題や家庭学習を行う習慣を身に付ける
- B子どもたち同士の良好な関係を育む
- Cあいさつや返事などの礼儀を大切にする
- D子どもたちとの信頼関係をつくる
- E教師の教育観を見直す
- Column 声かけと認めることの力
- 第2章 崩れかけた授業を立て直すための大原則
- @学習ルールを再確認する
- A聞く姿勢の徹底
- B机上を整頓する
- C鉛筆をサッと置かせる
- D必ず考えを書かせる
- Eできる活動わかる発問をする
- F授業に楽しさをプラスする
- Gポジティブな行動を認める
- Hルール違反への公正な対処
- I保護者に授業の様子を伝える
- Column 学力以上に大切なもの
- 第3章 今日からできる!崩れかけた授業の立て直し術
- 1 基礎的基本的学習態度のくずれ
- 授業開始のチャイムが鳴っても席に着かない
- 授業中,離席して出歩く
- 隣同士でおしゃべりをする
- よそ見や手いたずらが多い
- 話を聞かない,聞くことができない
- 2 教師に対する態度のくずれ
- 教師の指示を無視する
- 教師が発問しても答えない
- 教師の質問にふざけた答えをする
- 教師の説明を遮る
- 子どもの質問に答えないと「無視された」と言う
- 教師の指示や注意に「は〜い」と間延びした返事をする
- 3 他の子に対する態度のくずれ
- 授業中,他の子に頻繁に話しかける
- 友だちの答えを丸写しする
- 他の子の発言を馬鹿にする
- 勝手に,他の子と一緒に課題をやる
- グループ活動で協力しない
- 子ども同士で手紙を回す
- 他の子にいたずらをする
- 4 授業態度のくずれ
- 学校で禁止されている文房具を使う
- 教科書やノートを開かない
- ノートに落書きをする
- 問題が難しいとすぐに投げ出す
- 課題をやってこない,提出しない
- 授業と関係のない質問をする
- 文字が乱暴でノートを適当に書く
- 質問に適当に答える,答えを適当に書く
- 授業に関係のないものを持ち込む
- タブレットで授業に関係のないサイトや動画を見る
- 関係のない言葉で笑いをとろうとする
- 勝手にトイレなどに行く
- 眠ってしまう
- 5 学習意欲のくずれ
- 学習用具を準備しない
- 教科書やノートを出さない片付けない
- ノートに何も書かない
- 質問に答えず黙って立っている
- 問題に対して無反応
- 何もせずぼーっとしている
- 宿題をやらない
- Column 規律とユーモアの両立が,授業を豊かにする
- 第4章 それでも崩れたときの緊急対応策
- @教師自身のメンタルを守る
- A学年主任や管理職に助けを求める
- B学年の先生や管理職に教室に入ってもらう
- C保護者に教室に入ってもらう
- D学級を解体し,学年ティームティーチングを行う
- E交換授業や教科担任制を行う
はじめに
崩れかけている授業を立て直すのは勇気ある一歩から
私が教師になった頃に勤務していた学校では,1年生であってもきちんといすに座り,先生の話をよく聞いている子がほとんどでした。「1年生でもこんなに落ち着いているんだな」と感心したのを今でも覚えています。
ところが,今の学校はどうでしょう。同じ1年生でも,授業中に立ち歩く子,話を聞いていない子,授業とは関係のないことをしている子,友だち同士でおしゃべりを始めてしまう子など,正に隔世の感があります。当時の学校に比べると,今の1年生の様子は,まるで授業崩壊状態と言ってもよいのではないでしょうか。
しかも困ったことに,こうした光景が「日常」として受け入れられてしまっている場面が少なくありません。「今は,こういう子が多いから仕方がないよね」と言いながら,その状態を見過ごしていないでしょうか。授業が崩壊しているのか,それともそれが通常運転なのか,その境界があいまいになってきているのが,今の現実です。
そのようなときだからこそ,先生方には(若い先生方にはなおさら),一度自分の授業を点検してみてほしいのです。
自分では「まぁいつもの風景だ」と思っていた授業が,実は授業崩壊の“前兆”であるかもしれません。あるいは前兆どころではなく,すでにかなり崩れてしまっている状態かもしれません。そして,それに気付かずに見過ごしていると,立て直しにはより多くの時間と労力が必要になってしまうでしょう。
では,どうすれば授業を崩壊させないようにできるのでしょうか。
第一に,「子どもが先生の話を聞く」という状態を当たり前にしなければなりません。どんなにすばらしい教材や教具を用意しても,話を聞いてもらえなければ授業は成立しません。ですから,「静かに聞くこと」「話し手を見て聞くこと」「指名されたら返事をすること」などの基本的な学習習慣を,最初にしっかりと身に付けさせる必要があります。
そのような基礎的・基本的な学習習慣を身に付けたうえで,子どもが集中して取り組めるような授業を工夫していけば,授業が崩壊するようなことはありません。
それでも,現場ではさまざまな事情から,授業がすでに崩れている状態の学級を担当することもあるでしょう。あるいは,自分の学級が徐々に崩れつつあることに,ある日突然気付くかもしれません。
そんなときは,まず何よりも「現状を直視する勇気」をもってください。
「私のせいではない」「この子たちが難しいからだ」と思いたくなる気持ちはわかります。しかし,そのように考えても現状はひとつもよくなりません。そこで目をそらさず,「このままではいけない」「授業が崩れ始めているから何とかしなくては」と認めて行動を起こすことが,立て直しの第一歩になります。
そして,まさにそうした場面のために,本書はあります。「何から手を付けたらいいのかわからない」ときは,本書に示されている項目を,一つひとつ試してみてください。
学校で子どもが過ごす時間の多くは授業です。授業が整えば,子どもたちは「学校って楽しい」「もっと学びたい」と感じるようになります。それは,学力の向上という,学校の大きな目的にもつながっていきます。だからこそ,自分の授業は崩れていないか,崩れないためにはどうすればよいのか,そしてもし崩れてしまったらどう立て直すか――これらを常に意識しておくことが,とても大切になるのです。
授業を崩さないこと。崩れていたら立て直すこと。これは若い先生にとってもベテランの先生にとっても,常に向き合わなければならない課題です。子どもたちは,まだ学び方を知らないだけかもしれません。信じて,粘り強く関わることで,授業も,子どもたちも,必ず変わっていきます。
ぜひ,本書の内容を参考に,すばらしい授業をつくってください。
先生方の勇気ある一歩を,心から応援しています。
2025年6月 /山中 伸之
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- 明治図書