- はじめに
- 第1章 「見える化」の効果と方法
- 01 「見える化」による児童への3つの効果
- 02 「見える化」のための主なツール 板書・ICT機器
- 第2章 「見える化」すべき9つのコト・モノ
- 01 「児童の呟き」
- 02 「関係性」
- 03 「共通点と相違点」
- 04 「全体」
- 05 「過程や背景」
- 06 「視点や立場の違い」
- 07 「立場の変容」
- 08 「特徴」
- 09 「ふりかえり」
- Column 01 一斉指導はダメなのか?「子ども主体」をどう見る?
- 第3章 気づき・問い・対話を引き出す「見える化」の技術
- 基礎編
- 01 色づけする
- 02 矢印を活用する
- 03 児童の学ぶ姿を切り取る
- 04 資料を比較して焦点化する
- 05 資料を拡大して焦点化する
- 06 資料を隠して焦点化する
- 07 資料をバラバラにして焦点化する
- 08 社会見学の準備段階で
- 09 社会見学の事後学習で
- 10 学んだ内容を隠す/空白を残す
- 11 全員の気づきや考えを生かす
- 12 地図を生かす
- 13 ふりかえりのポイントを提示する
- 14 ゴールに成果物を設定する
- 15 カードで他者の考えとの比較を促す
- 発展編
- 16 二項対立・二者択一をつくる
- 17 個々の問いを引き出して生かす
- 18 とにかく実物を提示する
- 19 体感・実感そのものを生かす
- 20 ゲストティーチャーの話を生かす
- 21 ステップチャートを活用する
- 22 ベン図を活用する
- 23 X・Yチャートを活用する
- 24 マトリクスを活用する
- 25 板書の上下を生かす
- 26 児童の言葉を地図化する
- 27 ねらいに応じて重要語句を提示しておく
- 28 アプリを活用する
- Column 02 子どもたちが当事者と出会うために,どうすればいいの?
- 第4章 気づき・問い・対話を引き出す「見える化」授業づくり
- 3年
- 01 火事からくらしを守る 消防センターの役割
- 連携を一目で捉えられる板書に
- 02 火事からくらしを守る まちの消防施設はどこにあった!?
- 自然に対話が始まる地域調査のまとめ方
- 03 事故や事件からくらしを守る 安全のために,できることを考えよう
- 児童に切実感をもたせて自分事に
- 4年
- 04 わたしたちの都道府県 大阪府の地形
- Google Earthで好奇心と予想を広げる
- 05 わたしたちの生活を支える水 水の循環
- 見える化することで水の循環を捉える
- 5年
- 06 世界から見た日本 日本と五大陸
- 地形から五大陸の正しい位置を考える
- 07 自動車工業のさかんな地域 少し未来の自動車
- 気づきが生まれる資料提示の方法
- 08 森林とわたしたちのくらし 林業に従事する人々の努力
- 実物と実際の声を通して大変さを理解する
- 6年
- 09 大昔のくらしとくにの統一 縄文時代と弥生時代のくらしの比較
- 「どちらが幸せ?」という問いから考える
- 10 戦国の世の統一 織田信長と豊臣秀吉の比較
- 実績から人物のパラメーターを考える
- 11 長く続いた戦争と人々のくらし 原爆ドームに込められた人々の思い
- 資料をもとに予想を引き出す
- 12 憲法と政治のしくみ もしもあなたが裁判員に選ばれたなら?
- 社会の一員である自覚と責任を感じる授業に
- おわりに
- 参考文献一覧
はじめに
この本に関心をもっていただいた方は,きっと「社会科の授業がうまくなりたい!」と,日頃から試行錯誤を重ねている方だと思います。私も同じです。毎日,仕事終わりに自分の授業についてふりかえります。場合によっては,社会科が終わった途端の休み時間に,
「今の授業,面白くなかったやろ?ごめん!あそこがなー…」
「いやいや,サノT(私の愛称)。そんなことなかったで。次,頑張りや」
「・・・」
などと,学級の子どもと話すこともあります。励まされていますね(笑)。
はじめまして。私は,現在,大阪市で教員をしております佐野陽平と申します。社会科の研究をしています。以前に,大学の附属小学校で勤務していた経験もあって,これまで社会科について発信する機会にも恵まれてきました。そのおかげで,数多くの優れた理論や実践に触れてきましたが,上記の通り,私は,まだまだ未熟者です。そのため,「ああしておけばよかったな」「次は,ああしてみよう!」「あの子は,あんなふうに考えるんやなー」「あの時のあの子は輝いていたな」というように,日々,自分や子どもの様子を思い出しながら反省したり,新しいことに挑戦したりして過ごしております。
本書は,こんな私が,日々の研究の中で気づいてきたことを,社会科授業における「見える化」に焦点を絞って書いたものになります。
「見える化が大事なのは,当然やん」
「すでに先生たちは,いっぱい見える化してるやん」
と,先生方から聞こえてきそうですね(笑)。おっしゃる通りです。
それでは,唐突ですが…,質問です!
「どうして見える化しているのですか?」
さて,どのように返しますか?
「え?わかりやすいからに決まっているやん」
と返してしまいませんか。さらに,もう一押しします。
「それは『何を』わかりやすくしているのでしょうか」
どうですか?少し戸惑ってしまうのではないでしょうか。教師は,授業における見える化のよさを何となく感じているけれど,言語化したことがないというのが実状ではないでしょうか。…ということは,このようにも捉えられるのではないでしょうか。
見える化の意味や効果,何を見える化しているかを教師が把握しておけば,もっとよい授業ができる!
正直なところ,上記のことは,どの教科にも当てはまると思います。ただ,多くの視覚的な資料を読み取り,多角的に多様な考えが表出される社会科の授業では,特に有効なのです。さらに,忘れてはならない点として,社会科は,子どもたちが社会的事象を通して,人々の願いや思い,背景といった見えないものにも迫っていく教科です。つまり,見えないものを見えるようにする社会科の授業では,「見える化」が欠かせない手立てとなるのです。
そこで,本書では,第1章で「見える化」による3つの効果について,第2章で何を「見える化」するかについての理論を書いています。第3章以降は,実践を交えての具体を書いています。第3章では,「見える化」するテクニックを基礎編,発展編に分けて,授業の一場面などを切り取りながら書いています。第4章では,「見える化」を取り入れた授業の実際について1時間の流れがわかるように書いています。
本書が皆様の授業を見つめ直す機会になるとともに,授業づくりの一助となれば幸いです。手に取っていただき,ありがとうございます。
2023年5月 /佐野 陽平
-
- 明治図書
- よかったです。2024/10/120代・小学校教員
- よかった2023/7/1630代・小学校教員