- はじめに
- T 子どもと教師で創る
- 〜安東古往今来〜 … 元 都留文科大学学長 /上田 薫
- U 「ひとりひとりの学び」の創造
- 序章 安東小学校が求めてきたもの
- (1) 真に主体性のある子どもに
- (2) 授業で主体性を育てる
- (3) 「知と情のネットワーク」をつくるために
- (4) 授業づくりの手だて
- 1章 カルテ・座席表で子どもを理解する
- § カルテ・座席表とは
- (1) 安東小の「カルテ」とは
- (2) カルテのとり方
- (3) 安東小の「座席表」
- (4) 「カルテ」・「座席表」で子どもをとらえ直す
- 実践1 【S男へのまなざしが変わったとき】
- 6年 社会科「奈良の大仏」
- 実践2 【新たなS子理解が新たな手だてに】
- 2年 国語科「きつねのおきゃくさま」
- 実践3 【座席表から見えてきたB男】
- 6年 国語科「心を映す言葉」
- (5) カルテ・座席表の成果と課題
- 2章 位置づけるということ
- § 「位置づける」とはどういうことか
- (1) 「位置づける」とは,その子らしさを育てていくこと
- (2) 「位置づける」とは,そのことで周囲の子を生かすこと
- 実践1 【位置づけた子に願いをかけて授業がつくられるまで】
- 3年 国語科 「あのときすきになったよ」
- 4年 国語科 「ドキンの森で たっちゃん どっきん」
- @ F子が気になる
- ・なぜこの本を?
- A F子の多様な面が見えてくる
- ・この子をもっと知りたい!
- ・10分作文の中でF子の新たな力を発見!
- B 『あのときすきになったよ』で
- 授業してみよう F子に
- ・F子への願いをかけて
- ・情景描写に主人公の気持ちを読みとろうとするF子
- ・数人を目標に位置づけてみる
- ・二人の「きずな」だ!
- ・授業者の「悔い」
- ・F子らしさが顔をのぞかせる
- C F子が分からない!
- ・だが,F子は成長していた
- ・あきらめず,決めつけずに,追い続けてみよう
- D 4年生になったF子 より深い理解を
- ・新しい教材を見つける
- ・物語のあらすじ
- ・F子への願いと手だて
- ・もう一人S子を位置づける
- E S子のカルテをつなげてみよう
- ・S子のいろいろな面がみえてくる
- ・S子の10分作文
- ・4年生になってからのカルテ
- F S子への願いと手だて
- ・願いと手だて
- G 教材との重ね
- ・位置づけた子,F子とS子を中心に
- H その子らしさに出会いながら
- 実践2 【「位置づけた子」と周りの子とのかかわりの中で】
- 6年 社会科 「西南戦争」
- @ T男との出会いから
- ・この子をわかりたい!
- ・T男に大きな転機
- A 彼を生かせる教材を
- ・授業を考える
- ・位置づけたT男を生かす全体のけしきを考える必要性
- B T男に対する手だてを考える
- ・資料で考えを変えるT男
- C T男を位置づけて
- ・続く授業の中で
- D 実践をふりかえって
- 「位置づけた子」の課題
- 3章 全体のけしき・座席表授業案で授業をつくる
- §1 全体のしき
- (1) 「全体のけしき」は「学級全体のけしき」
- (2) 位置づけた子を中心に授業の作戦をたてる(作戦図をかく)
- (3) 全体のけしきは授業者ならではのもの
- 実践1 【子どもと教師が違えば全体のけしきも違う】
- 6年 国語科 「海の命」
- (4) 全体のけしきは生きている(全体のけしきは修正するもの)
- 実践2 【子どもに寄りそって全体のけしきを見直す】
- 2年 国語科 「ともだちっていいな(お手紙)」
- (5) 全体のけしきは欲張らない
- (6) 生き生きとした全体のけしきを求めて
- §2 座席表授業案
- (1) 子どもに寄りそった本時案
- (2) 位置づけた子を中心に
- (3) 位置づけた子に寄りそった本時の展開
- 実践3 【座席表授業案に複線を】
- 4年 社会科 「生活の道具は人間の知恵(昔のくらし)」
- (4) 座席表授業案の魅力
- (5) 座席表授業案にも複線を
- (6) 座席表授業案の課題
- 4章 明日の安東小を描く
- §1 安東小の抱える現実
- (1) 本校職員が得たもの
- (2) 子どもを理解するということ
- (3) 子どもを理解して授業をする
- §2 安東小学校の挑戦
- (1) 人間を育てる教育をめざして
- (2) 教師が変わる
- (3) 評価と指導
- §3 安東小学校の存在理由
- V 安東小と共に歩む
- 真実にむかって挑戦しつづける学校――安東小学校の魅力――
- 大阪樟蔭女子大学 /川合 春路
- 「ひとりひとりを生かす授業研究」が始まった頃 元安東小学校長 /戸田 久雄
- 安東の底力にふれる 元安東小学校長 /吉岡 裕真
- 「自由さ」という文化 静岡市立青葉小学校 /松井 誠司
- 授業は真摯に命がけ 静岡市立横内小学校 /豊田 公敏
- 安東に生きる 静岡市立大谷幼稚園 /小酒井 厚子
- 安東小の研究に期待すること 静岡市教育委員会 /大坪 弘典
- 確かな学力と個を見つめる授業 富士川町立第一小学校 /岡田 進
- 「子ども理解」が授業の基本 静岡市立松野小学校 /渡邉 一弘
- W 上田薫講演記録集
- §1 講演記録T 「教師は子どもの何を評価するのか」
- ・評価と指導が分断されるとき/ 総合的な学習と学力/ 評価と指導の順序/ 評価と子ども理解/ 一般的な「評価」との違い/ まず子どもを知ることから評価が始まる/ 指導と評価の一体化/ 指導と評価はひとりひとり違う/ 迷える人間のもつ学力/ 評価から評価へ/ 指導と評価の密着
- §2 講演記録U 「子どもに向かう自分を変化させていく教師」
- ・計画を破り,修正する/ 教師が変化する/ 人間らしさをもった教師/ 子どもの何をとらえるのか/ 授業に生きてくるもの/ 安東小の存在理由
- おわりに
- § 「ひとりひとりを生かす授業研究」のあゆみ
- § 安東小:研修合い言葉の足跡
- § 静岡市立安東小学校職員
はじめに
「ひとりひとりを大切にする授業研究」を研修テーマとして取り上げてから,40年の月日が経とうとしています。昭和42年11月に第1回の研究会が開かれてから,本年度で39回目を数えます。
この間,昭和52年度には,テーマが「ひとりひとりが生きる授業研究」となったり,昭和54年度には,現在のテーマ「ひとりひとりを生かす授業研究」となったりしましたが,その底流に流れている考えは一貫しています。それは,『教師である限り,人間を育てる教育をしたい。ひとりひとりの子どもの人間としての連続性を追究し,どの子にも生きることへの自信と意欲を培いたい。』ということです。
「ひとりひとりを大切に」とか「ひとりひとりを生かす」とか「個に応じた指導」という言葉をよく耳にします。とりもなおさず,このことは子どもが主体,主役であるということではないでしょうか。ひとりひとりの子どもをひとりの人間として尊重し,それぞれの子どもの見方・考え方を個々に応じて深め,発展させていくことが,日々の授業の中で大切にされてこそ生きてくるものだと思います。
さて,子どもを主体,主役として授業の中で生かすために,わたしたちが大切にしていることがあります。それは徹底して「子ども理解」に努め,個に願いを託し,個に寄りそうということです。
子ども理解と個に応じた授業づくりのための手だてとして,次のようなことを掲げ,研究してきました。@カルテ A座席表 B全体のけしき C座席表授業案 D位置づけた子 です。しかし,どれひとつをとってみても「これでよし」ということはなく,日々子どもと共に授業をつくり,少しでも先の見通しがもてるようにと励んでいるところです。
本書は,『つねに君らしくあれ−安東小発 個を見つめる授業−』の出版以後6年間の歩みをまとめたものです。私たちが子どもを通し授業を通し,迷い,悩み,少しずつ築き上げてきた実践の足跡です。研究推進の視点として「位置づけた子を手がかりにして」を掲げて今年で11年目になりますが,このことからも一朝一夕にして出来上がるものでないことは明らかです。だからこそ,やりがいがあり,追究していく価値があると考えます。
毎年,研究会が開かれ,またこのように数年に一回の研究図書を皆様にお届けできることは,40年近く,ご教導いただいている上田薫先生の存在をぬきにしては考えられません。また,何事にも素直にとことん追究してくる子どもたち,研究会や学校参観においでくださり,忌憚のないご意見をいただいた多くの参観者があったことも忘れてはならないと思います。
なお,出版にあたり,格別なご指導とご配慮をいただきました上田薫先生と,明治図書株式会社取締役編集部長樋口雅子様に心からお礼申し上げます。
平成17年10月 静岡市立安東小学校長 /瀧田 佳敬
持っていない本なので、復刊を期待します。
受け継いでいるのかに興味があった。本書からはほんのわずかそこが垣間見える。