- 刊行のことば
- 第1章 「奈良の学習法」で培われる「学習力」
- 1.学習力とは何か
- 2.学習法の実践と学習力の育成
- 3.今,なぜ「学習力」なのか
- 4.学習力を育む学校生活
- 5.学びを支える基礎・基本
- 第2章 「学習力」を育てる10の秘訣
- 子どもが創る学校生活の秘訣
- 1 生活を拓く「朝の会」
- 2 生活を見つめる「日記」
- 3 生活を深める「自由研究」
- 4 生活を創る「日直」
- 5 生活を支える「学習環境」
- 子どもが進める学習の秘訣
- 6 学習を進める「司会」
- 7 追究を始める「おたずね」
- 8 追究力を育てる「独自テーマ」
- 9 相互学習を広げる「板書」
- 10 授業最後5分の「先生の話」
- 第3章 「学習力」の育つ学びの展開
- 1 「しごと」「けいこ」「なかよし」という教育構造
- 2 自立した「しごと」学習
- 実践1 さんぽを中心とした低学年の「しごと」学習 /谷岡 義高
- 実践2 けいこの課題学習に融合した「しごと」学習 /太田 誠
- 実践3 自立に向かう中学年の「しごと」学習 /都留 進
- 実践4 子どもが見方考え方を太らせていく「しごと」学習 /廣岡 正昭
- 実践5 「食」からつながる「しごと」学習 /堀本 三和子
- 実践6 『きになる木』の『はっぱ』をふやそう――5年「電気をつくる・電気を使う,大研究」―― /小幡 肇
- 3 子どもが創る「けいこ」学習
- 実践1 子どもが生きる国語学習――2年「雨の詩を読もう」―― /椙田 萬理子
- 実践2 きっちり「わかる」きっちり「できる」算数学習 /日和 佐尚
- 実践3 新しい歴史学習の構想――『人物学習の構想』と『時代イメージの把握』―― /廣岡 正昭
- 実践4 論理的な思考力を育てる理科学習――6年「奈良公園の生き物のつながりをさぐる」―― /杉澤 学
- 実践5 子どもが生きる総合的な「忍者の体育」学習 ――2年「学習の里・忍術村の豆忍者修業」の巻―― /岩井 邦夫
- 実践6 子どもの遊びから創る総合的造形学習――3年「あわの造形」―― /都留 進
- 実践7 豊かな情操を養う音楽学習 /野ア 宣器
- 実践8 くらしを見つめる家庭科の学習 /堀本 三和子
- 実践9 学習に生かせる道具としてのコンピュータ学習 /阪本 一英
- 4 子どもが運営する 「なかよし」学習
- 実践1 子ども自治を生み出す「なかよし委員会」 /金津 琢哉
- 実践2 文化的奉仕的生活を創り出す「グループなかよし」 /岩井 邦夫
- 実践3 子ども文化を交流する「なかよし集会」 /日和 佐尚
- 実践4 生活を協働する「臨海合宿」 /杉澤 学
- 実践5 子どもがつくる「運動会」 /阪本 一英
- 実践6 徳性を陶冶する「学級なかよし」 /金津 琢哉
- 実践7 子どもたちの保健室利用術 /矢田 留美子
- あとがき 「学習法のいのち」
- コラム
- 我が校のホームページ
- 音楽室探検
- 「心一つに」
刊行のことば
当附属小学校で実践している「奈良の学習法」は,さかのぼること80有余年前,大正時代にその礎が築かれた。
大正8(1919)年3月から昭和16(1941)年1月までの,およそ22年間にわたって本校主事を務めた木下竹次は,大正自由教育の機運の中で「合科学習」の実践に踏み切り,合科主義の教育実践と研究の発展に尽くした。
木下の合科学習は,児童中心,生活重視,自律的学習等を特色とするものであった。学校における教育的な営為を,子どもの自主性や主体性の視点からとらえ,「教授」を通念としていた当時にあって,「学習」の考え方を主張したのである。そして,その実践形態を「学習法」と称し,学習(合科学習)の実践的研究は,深化と発展を遂げていったのであった。
不幸な戦争体験を経て,終戦後,当附属小では,さっそく民主主義の時代に即応した教育のあり方や方向を求めて,教育研究の取り組みが再開された。
新教育の先導を,と乞われて4代目主事に就任したのが,文部省より下った重松鷹泰である。日本の教育に初登場した「社会科」の創設に奔走された重松鷹泰は,その新たな船出を見届けて,当附属小に来られたのであった。
重松主事を迎えて,当附属小では,戦後の教育計画として「奈良プラン」を建てた。それは,先述の木下竹次唱導の「合科学習」の理念,学習法の精神や伝統を継承したものであったことは,言うまでもない。そして,当時の同人諸氏たちが考えに考えて,子どもの学習生活を「しごと」「けいこ」「なかよし」の3部面からとらえたカリキュラムを構築したのであった。
この三つの柱で構造化された「奈良プラン」は,その後,「奈良の学習法」と呼び交わされて,戦後の日本の教育の先頭を歩み続けてきた。しかし,教育界では,学習指導の軸が右に,左にと揺れる経緯を経て現在に至っている。ただ,当附属小においては,いかなる状況の中にあっても,学習法を死守し,現在までその命脈を保ち続けてきている。
近年,教育の軸が,当附属小の学習法に近づいてきたとの認識を強くしている。その大きな要因が,平成14年度より全面実施となった新学習指導要領に登場した「総合的な学習の時間」の創設にあることは,間違いないであろう。私たちの「学習法」は,元来,総合性に立つ実践であり,時の趨勢の中で,その関心の高まりを肌で感じている。
先に,私たち学習研究会では,「しごと」「けいこ」「なかよし」の実践の蓄積を,「奈良の学習法―『総合的な学習』の提案」(1998年,明治図書)で世に問うている。そこでは,学習法の解説をはじめ,総合的な学習の実践事例を,あらゆる角度から紹介している。
今回の著書刊行に当たり,私たちは,前掲著の編集方針と違った角度から,学習法による取り組みの姿を編もうとした。前掲著を正攻法による編集とすると,今回の試みは,学習法の「土台作り」の奥義に相当する部面を引き出そうとしている。特に,「学習力」の育成は,学習法の根底を成し,本源的な重要課題でもある。両著を併せて,私たちの取り組みを立体的に浮かび上がらせたいと念じている。
もっとも,改善すべき点は多々あるものと思われる。読者諸氏の忌憚のないご叱正を賜りたい。
奈良女子大学文学部附属小学校 校長 /内田 聖二
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- 明治図書
- 今年度から実施される指導要領にそった指導のあり方を考えるのに、大変参考になるものだった。2020/4/440代・小学校教員