- はじめに
- 第1章 面白がる メタ認知できると、面白さが増える
- 1 失敗は「笑わない」ではなく「笑い飛ばす」
- 2 子どもの話を思いっきり面白がる
- 3 時にはスルーする
- 4 地元色を出す
- 5 1年生になりきらせる
- 第2章 かたる 語って伸ばす、騙ってノセる
- 6 「伸びたか伸びていないかで見る」ことを語る
- 7 ストップウォッチで時を騙る
- 8 できてなくてもできたと騙る
- 9 休み時間の伏線を回収する
- 10 いちゃもんをつける
- 11 「生きる力」を語る
- 第3章 見る 無意識の技を意識化する
- 12 自分の視線を意識する
- 13 目力全開で1人を見つめる
- 14 子どもに視線を意識させる
- 15 聞き手を意識して話させる
- 16 見せたいところはあえて隠す
- 第4章 演じる 演じる者は救われる
- 17 授業のためにキャラを演じる@
- 18 授業のためにキャラを演じるA
- 19 知らないふりをして、その気にさせる
- 20 授業のためでなくてもキャラを演じる
- 21 鼻歌を口ずさむ
- 22 大げさに驚く
- 第5章 読ませる 音読で子どもをノリノリにする
- 23 だれよりも教師が声を出す
- 24 カードを使う
- 25 消して消して暗唱させる
- 26 突然、始める
- 27 わざと間違える
- 28 動作を加える
- 29 社会の時間も、Repeat after me
- 第6章 巡る 意図的机間巡指のすすめ
- 30 気になる子のところで立ち止まらない@
- 31 気になる子のところで立ち止まらないA
- 32 決めゼリフをもつ
- 33 気になる子のところへ行く
- 34 3秒で赤ペンを入れる
- 第7章 エンタメる 教師も子どももとにかく楽しむ
- 35 「ひな壇芸人」の意識をもつ
- 36 ウケるためには、多少の無茶も言う
- 37 BGMでその気にさせる
- 38 面白グッズを用意する@―ジャマイカ
- 39 面白グッズを用意するA―ピンポンブー
- 40 面白グッズを用意するB―ホワイトボード
- 41 休み時間にネタを仕込む
- 42 Bの子を認める
- 43 「楽しけりゃ、それでいいじゃん!」ではないと心得る
- 44 子どものハッピーエンドを願い、全力を尽くす
はじめに
とある研究会。
多くの参観者でごった返す教室。
私も、その中の一人。同僚の若い先生と共に授業を参観している。
授業が始まった。
授業者が黒板の前に立つ。
ニコッと笑い、視線を教室の右端から左端に動かして、すべての子どもたちとアイコンタクト。ここで私の解説が入る。
「今、視線を右から左に動かしたでしょ。目を合わすと子どもたちが落ちつくからね」
他の参観者のじゃまにならないようにささやく。
音読開始。
教師の後に続いて、子どもたちも音読する。
「おはよう まつげ」
「おはよう まつげ」
「おはよう あくび」
「おはよう あくび」
子どもたちの元気のいい声が教室に響く。
「2回目の子どもたちが音読するときも、先生が小さな声で音読しているの、わかる?」
私の言葉を聞いて、同僚の表情が変わる。
「おはよう 手のひら」
「おはよう 手のひら」
「ほんとですね。気づきませんでした」
「このクラスは鍛えられているから、本当は必要ないんだけど、音読の声が小さいクラスでは、あの技は有効やで」
実際に授業を見ながら、リアルタイムで解説を行っていく。
若い頃、研究授業を見ていて、「すごいなぁ」と思うことがよくありました。どうやったらあのような子どもたちを育てることができるのか、考えました。実際に授業者に聞いたこともあります。すると、おおむね次のような結論にたどり着きました。
・地道な日々の実践の積み重ね
・最後までやり遂げる教師の覚悟
・教育に対するゆるぎない信念
どれも大切なことです。でも、地道なことが苦手で、飽きっぽくて最後までやり遂げられない自分にはできそうにありません(唯一、ゆるぎない信念らしきものはありますが、それも「楽しく笑顔で」という程度です)。ただ、すごい授業を見るたびに、目指すべきイメージは固まっていきました。楽しく笑顔で日々を過ごすためにも、「できないことは無理をしない」「とりあえず、やる」という信念をもって、日々の実践に取り組みました。
そして、月日は流れ、気がつけば、いつの間にかそれなりの授業ができるようになっていました。そんなある日、師匠と仰ぐ先生からこう言われたのです。
「俵原さん、あんたもそろそろ自分の実践を理論化せんといかんぞ」
今から思えば、この言葉は、それまで闘魂三銃士の武藤敬司のように感覚で実践を行っていた私のターニングポイントになりました。この日を境に、私は、「なぜ自分はあのとき、あの位置に立っていたのだろうか」「○○さんの発言に対して、なぜあのような返しをしたのか」といった自問自答をするようになったのです。その中で、気づいたことが、
子どもたちが伸びる実践の裏には、意図的な小さな技が隠されている
ということでした。ところが、小さな技は見えにくいものです。かつての自分自身がそうだったように、目の前で行われていても気づかないこともあります。そこで、試しにやってみたのが、冒頭で述べた研究授業リアルタイム解説です。これは、効果抜群でした。
本書においても、実際の授業場面を例に、その裏に隠れている意図を示しながら、授業における小技を紹介しています。「いいなぁ」と感じた小技は、ぜひ、ご自分のクラスで実践してください。一つ一つの小技を身につけることによって、あなたの授業力は、「ほんの少し」アップします。あとは、それを繰り返すだけです。千里の道も一歩から。あなたも、いつの間にか、それなりの授業ができるようになっているはずです。
2018年6月 /俵原 正仁
-
- 明治図書
- まねします!2020/5/130代・小学校教員
- 俵原先生の楽しい書きぶりがわかりやすくてよかったです。気になるところから、どこからでも読めてすぐに授業に使えました。2019/1/2150代・小学校教員