改訂対応中学校新時間割編成の手引

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特色ある学校づくりの大きな柱となる時間割編成の弾力化。その具体化の方法を総合、選択等のテーマに応じて事例を盛り込み解説。


復刊時予価: 2,156円(税込)

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電子書籍版: なし

ISBN:
4-18-262911-6
ジャンル:
学習指導要領・教育課程
刊行:
4刷
対象:
中学校
仕様:
B5判 104頁
状態:
絶版
出荷:
復刊次第

もくじ

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まえがき
1章 中学校時間割編成の基本
§1 教育課程編成とのかかわり
1 重要な研究課題となった日課表・時間割編成
2 生徒の主体性の重視
§2 日課表・時間割編成の基準
§3 特色ある教育活動,特色ある学校づくりとのかかわり
§4 特色ある教育,特色ある学校づくりのねらい
§5 非常勤講師時数と弾力化とのかかわり
2章 中学校時間割編成の課題とアイテム
§1 変わる教室内の掲示
§2 「総合的な学習の時間」の創設とのかかわり
1 必要な授業時数を設定するための時間割編成上の課題
2 学習成果の追求と時間割編成上の課題
§3 各教科の学習で[生きる力]をはぐくむこととのかかわり
§4 教科の学習の特殊性とのかかわり
§5 学習内容・指導方法等とのかかわり
3章 中学校時間割編成のアイデア・カタログ
§1 総合的な学習を充実するための時間割
1 選択教科と「総合的学習の時間」のかかわりによって決まる時間割
2 新教育課程(完全実施時)への対応例
3 年間を通じて固定した時間割を基本とする例
4 時間割を学期単位で作成する例
5 「総合的な学習の時間」を毎日設定する場合
6 まとめ取りをする例
7 学年ごとに別の日に実施する例
§2 選択教科の学習を充実させるための時間割
1 異教科間TTを可能にする時間割例
2 習熟の程度に応じた学習が可能な選択教科の時間割例
§3 特色ある教育活動を推進するための時間割
★1 モジュール・システムを生かした時間割
★2 帯タイムを取り入れた時間割
★3 必修時間におけるTTの充実を図る時間割
★4 課題学習や体験的・問題解決的な学習の充実を図る時間割
§4 ゆとりを生み出す時間割
1 季節などに対応して1日の授業時数を変えた時間割
4章 時間割編成にかかわるQ&A
◆教育課程編成とのかかわりについて
◆総合的な学習の時間割について
◆選択教科の学習を充実するための時間割について
◆移行期におけるモジュール方式を取り入れた時間割について
◆帯タイムを取り入れた時間割を作成する場合,どんな注意が必要か
◆自主性・自立性を高めるために「ノーチャイム」にしたいが
◆課題学習,体験的・問題解決的学習の充実を図る時間割について
◆「ゆとり」を生み出す時間割について

まえがき

 平成11年度の教育白書『我が国の文教施策』の冒頭のあいさつで,文部大臣は「世界的な大競争時代の中で,我が国が活力ある国家として発展し,科学技術創造立国,文化立国を目指していくためには,あらゆる社会システムの基盤となる教育について,不断に改革を進めていくことが不可欠となっている」と述べている。そのために文部省は「教育改革プログラム」を策定し,「教育改革の課題やスケジュールを明らかにしつつ,教育改革に積極的に取り組んでいる」とも述べている。

 移行第1年目に入った今,私たちはここに紹介した文部大臣のあいさつを読み直すことにより,学校としての教育諸課題に対する取り組みや,それにかかわる個々の教師の実践について振り返る際の手掛かりを得ることができる。

 特に注目する必要があると考えられるのは次の2点である。1点目は,「大競争時代」という言葉が見られるが,学校も競争時代を迎えたということである。2点目は,「不断に改革を進めていくことが不可欠となっている」,「改革に積極的に取り組むこと」という記述があるが,この記述は各学校にもそのまま該当するということである。なぜそうなのか,次のような動きと合わせて学校の置かれている立場を考えてみたい。

 東京都品川区では,平成12年度から保護者が自由に学校を選択することを小学校段階において実施し,近い将来中学校段階にも導入する予定であるといわれている。品川区以外でも,複数の区市において,実施に向けて準備作業や検討に入っていることも伝えられている。こうした学校選択の自由化は,東京都だけに限定できる特殊な動きと考えるよりも,いずれ全国に拡大するものと考えておく必要がある。

 品川区では,予想されていたことではあるが,学校選択の自由化によって,各学校においては,保護者からは子どもを通わせたい,子どもからは通学したいと思ってもらえるような学校を実現するための努力が増大している。各学校は,従来以上に,保護者や児童のことを考えざるを得なくなったのである。具体的には,自分たちの学校に入学して学べば,どのような力がどこで身につくのか,そのためにはどんな特徴のあるカリキュラムをどんな方法で実施し展開するのか,保護者にも目に見え理解できるように示していくことが不可欠になってきているのである。私たちは,各学校が,カリキュラムの内容やそれを実現する方法の違いによって個性を競い合う時代に入ったことを真剣に受け止める必要がある。

 毎日新聞社は移行第1年目における「総合的な学習の時間」の取り組みの状況について全国調査を行い,その結果を平成12年4月6日の朝刊で公表した。それによると,中学校においては,全校で「総合的な学習の時間」を実施するのは京都,鹿児島,沖縄の3府県と千葉,名古屋,京都,神戸,北九州,福岡の6市である。その一方で,12都府県では実施率は6割であるという結果が報じられている。

 平成14年度からの完全実施に備えるためには,基本的に準備期間を少しでも長く取る方がベターである。したがって,平成12年度から実施する中学校は,実施上の課題を明らかにするためには移行1年目から実施する方が望ましいと考えた結果であることが推察できる。

 平成12年度の実施を見送った中学校の中には,何もしなかったということではなく,準備を重ね,見通しをもって結論を出した結果の学校もあろう。そういう学校については心配する必要はないが,実施に向けての準備や努力が強く指摘され期待されている中で,その期待に応えられなかった学校も少なくないと思われる。なぜなら,学校の体質を変えるなど変革の必要性を指摘されながら,その期待に十分に応えきれていない傾向が従来からも見られたからである。「総合的な学習の時間」に関して,出遅れた学校も先行した学校も,様々な教育課題に対する問題意識を継続させ,解決するための取り組みを蓄積しようという姿勢を強めていくために,『教育白書』の「教育改革の課題やスケジュールを明らかにしつつ,教育改革に積極的に取り組む」こと,「不断に改革を進めていくことが不可欠である」という記述を重く受け止めていきたい。今後,各学校は具体的に何を重視していけばよいのか,教育課程審議会の答申(平成10年7月)で押さえておきたい。答申には教育課程の基準の改善のねらいが4項目示されている。そのうちの一つは「各学校が創意工夫を生かし,特色ある教育,特色ある学校づくりを進めること」である。

 このねらいについて,教育課程審議会は次のように説明している。特色ある教育活動を展開し,特色ある学校づくりを進めるためには「日課表や時間割を各学校が創意工夫を生かして編成できるようにするなど,1単位時間や授業時数の運用の一層の弾力化を図る必要がある。今回,新たに総合的な学習の時間を創設し,各学校の創意工夫を生かした教育活動が展開できるようにしたのも,このような考えに基づくものである」と示している。

 先に,各学校はカリキュラムの内容やそれを実施する方法の違いによって個性を競い合う時代を迎えたと記述したが,教育課程審議会の答申によれば,カリキュラムの内容に関して違いを出すためには「総合的な学習の時間」が重視されていること,カリキュラムを実施する方法に関しては時間割の編成や1単位時間や授業時数の弾力的運用を考えていることが理解できる。

 「新しい酒は新しい革袋に」という言葉があるが,教育課程審議会の答申による特色ある教育,特色ある学校づくりの説明を,この言葉を重ねて理解し実践していきたい。それが本書を刊行したねらいでもある。各学校が「新しい革袋」をつくりあげる過程や作業において,本書を活用していただけたらと切に願っている。


  平成12年春   編者

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