- はしがき
- T章 教育課程審議会答申と通知表改善の方針
- §1 答申の基本的な考え方
- §2 評価の新しい考え方と「通知表」改革の方針
- §3 評価の新しい考え方と「通知表」改善の方針
- U章 改訂指導要録対応の通知表改善の方針
- §1 通知表の在り方
- §2 評価規準の明確化
- §3 評価方法の見直し
- V章 評価規準の例示と評価手順の解説
- §1 教育評価の在り方について
- 1 教育課程審議会の答申(12.12.4)について
- 2 現行の教育評価の課題・問題点
- 3 新教育課程に対応する教育評価の在り方
- §2 生きる力と評価規準
- 1 生きる力と基礎・基本
- 2 生きる力をはぐくむ評価規準例
- 3 具体的な評価規準の作成
- W章 改訂指導要録対応通知表作成のステップ
- §1 通知表作成の組織と運営
- 1 通知表作成のための組織について
- 2 通知表改訂作業が組織的な取り組みとなるために
- §2 通知表を作成する手順
- 1 新しい評価観の理解の徹底
- 2 生徒・保護者に伝える情報の決定
- 3 学習成果等をどのように表記し,生徒・保護者に伝えるか
- 4 学校としての評価の考え方や方針の決定
- 5 内容のレイアウトの決定
- 6 「通知表記入の手引」の作成
- X章 改訂指導要録対応通知表作成のポイント
- §1 通知表作成のポイント
- 1 生徒が自分のものとして実感できるために
- 2 生徒一人一人の多様な評価情報の収集
- §2 通知表作成の工夫
- 1 より親しみやすい在り方の工夫
- 2 学習に関する欄の工夫
- 3 特別活動欄の工夫
- 4 自己評価及び保護者欄の工夫
- Y章 総合的な学習の時間の評価
- §1 総合的な学習の評価の仕方
- 1 総合的な学習の時間の趣旨
- 2 総合的な学習の時間のねらい
- 3 総合的な学習の時間の評価の目的
- 4 総合的な学習の時間の評価
- 5 指導と評価の一体化
- 6 総合的な学習の時間の評価の内容
- 7 評価計画(調べ学習における)
- 8 評価の実際
- §2 通知表に総合的な学習をどういれるか
- 1 総合的な学習の時間の評価の通知
- 2 通知の実例
- Z章 改訂指導要録対応通知表のモデル集
- §1 指導と評価の一体化を目指した通知表
- 上越教育大学学校教育学部附属中学校
- 1 通知表改善のねらい
- 2 本校通知表の特徴
- 3 実物資料とコメント
- §2 通知表作成に校内LAN活用
- 岩手大学教育学部附属中学校
- 1 通知表発行の基本方針
- 2 通知表作成と発行の形式
- §3 明確な目標,納得できる評価
- 新潟大学教育人間科学部附属新潟中学校
- 1 通知表改訂のねらい
- 2 当校の通知表の特徴
- 3 実物資料とコメント
- §4 生徒の自己評価がある通知表
- 福岡教育大学教育学部附属福岡中学校
- 1 通知表改善のねらい
- 2 本校通知表の特徴
- 3 実物資料とコメント
- §5 「個」をとらえる通知表の工夫
- 秋田大学教育文化学部附属中学校
- 1 通知表改善のねらい
- 2 本校通知表の特徴
- 3 実物資料とコメント
- [章 改訂指導要録対応通知表作成のコンテンツ
- §1 通知表の体裁・様式
- §2 学習の記録
- §3 所 見
- §4 総合的な学習の時間の評価
- §5 家庭との連携
はしがき
「6月になったら通知表の所見を書け」。現職の頃,若い教師に語って来たことである。不思議なことだが,書くことが湯水のように湧き出る生徒もいれば,何を書いてよいやら途方に暮れる生徒もいる。担任として学級の生徒に等しく目を配ってきたつもりでも,実際には言葉に窮する生徒が出てくるのである。
誰でも6月になって所見を書いてみると,多分,書くことが見つからない生徒が出てくるはずである。そうしたら,残りの2か月弱,その生徒を一所懸命観察するとよい。そうすると,その生徒の見えなかった部分が見えてくる。
通知表にまつわる悲喜こもごものエピソードは尽きることがない。通知表を持ったまま母親の田舎に行ってしまったA君,下校途中に通知表を破り捨ててしまったBさん,皆遠い昔のことだが今も私の心に大きな爪痕を残している。生徒一人一人の喜怒哀楽の表情を思い浮かべながら所見を書いたが,一人の青年教師の儚い抵抗にすぎなかった。
学習指導要領の改訂に続き教育課程審議会は「集団に準拠した評価」(相対評価)から「目標に準拠した評価」(絶対評価)への転換を示し,わが国の学校教育は大きく変わろうとしている。「基礎・基本の重視」「生きる力の育成」「個性を生かす教育」といった教育課題と指導と評価の一体化とが相まってわが国の学校教育の在り方に大きな転換を迫ってきている。
教育の転換は結果として長いスパンで見なければならないが,転換の具体的なバロメータの一つに通知表がある。通知表を単に通知のための手段とするか,指導と評価の一体化を図るための手段とするかによって,通知表はその姿を一変することになる。
本書を完成するに当たって,親交のある方々のご協力を仰ぎ玉稿を賜ったが,関係者全員が通知表についての考え方を一にしていたわけではない。また,足並みをそろえるために一堂に会して協議をしたわけでもない。したがって,本書は章によってイメージする通知表に違いがあり,全体としてまとまりに欠けるきらいはあるが,通知表について多様な切り口から論じ合ったという点からは,大いに評価されるものと考えている。多くの方々のお役に立てることを念じて止まない。
最後に生来の遅筆のため,本書の刊行に際して企画の段階からお世話になった明治図書の安藤征宏氏に大変なご迷惑をお掛けしたことを心より詫びる次第である。
2001年6月 編者 /安齋 省一
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明治図書
















