- 序文 /梶田 叡一
- 本校研究の歩み―まえがきにかえて/後藤 惣一
- 生きる子どもを育てる
- 豊かな人間性を
- 生きた学力・判断力を
- たくましい心と体を
- 情報化社会への対応力を
- 生きる子どもと自ら学ぶ力
- 生きる子どもにはたらく学ぶ力
- 学ぶ力が育まれる契機
- 学ぶ力を育む問いの深化の過程
- 問い続ける子どもの学習過程
- 子どもの問いが深化するための教師の出番
- 〔実践例〕題材 4年 社会科 〜くらしの向上「コンポスターと生ゴミ」〜
- 生きる力に高める活動とくらし
- “ふれあいタイム”
- 学ぶ力を支える特別活動
- 自己をみつめ,共にひらくことへの願い
- 総合的展開と生きる力
- 自己をみつめ,共にひらくための教科・領域
- 言語感覚を磨く《国語科》
- 言語感覚を磨くこと
- 言語感覚を磨く
- 自分の思いをつなぐ教室状況 〜3年作文「こんにゃく作りの楽しさを伝えよう」〜
- 豊かなイメージづくり 〜2年物語文「土のふえ」〜
- 知りたいという願いや欲求を引き起こす 〜4年説明文「ヤドカリとイソギンチャク」〜
- 言語感覚を磨く学習の構想
- 共に生きる喜びを求める《社会科》
- 共に生きる喜びを求めること
- 共に生きる喜びを求める問いの深化
- 「生きた教材」との出合い,事実とらえ 〜3年「子ども図書室で働くAさん(公共施設の利用)」〜
- 相手の立場に共感する教室状況 〜5年「Wさんの米作り(日本の農業)」〜
- 「その人物の生き方」に迫る自らの生き方をみつめる「生きた教材」
- 共に生きる喜びを求める学習の構想
- 数理追求をたのしむ《算数科》
- 数理追求をたのしむこと
- 数理追求をたのしむ問いの深化
- 問いかけ合う教室状況 〜5年「つめこむ箱の数で,貯蔵庫の大きさを調べよう(体積)」〜
- 活動のつまづき 〜1年「コロコロところがりやすい形をさがして,機関車を動かそう(いろいろなかたち)」〜
- 生きた素材構成 〜複数学年にわたり,ヤギの飼育を素材構成の中心に据えて〜
- 2年「かさくらべ」を「ヤギの健康調べ」として
- 3年「重さ」を「ヤギの体重調べ」として
- 5年「平均」を「ヤギの餌不足を調べよう」として
- 数理追求をたのしむ学習の構想
- 自然のもつ不思議さに迫る《理科》
- 自然のもつ不思議さに迫ること
- 自然のもつ不思議さに迫るための問いの深化
- 子どもの強い願いや驚き〜4年「モーターカーの性能をアップしよう(電池のはたらき)」〜
- 解決の過程におけるつまずき〜5年「食塩の結しょうができるなぞをさぐろう(もののとけ方)」〜
- 自然との強いかかわり 〜4年「流れる水のパワーを調べよう(流れる水のはたらき)」〜
- 自分らしさを発揮する《生活科》
- 自分らしさを発揮すること
- 自分らしさを発揮する問いの深化
- 問いの深化は,つまずきを感じ,自らの活動の見直しをはかることによる問いの連続から 〜2年「トムソーヤーになってプールでなかよくあそぼう(つくって遊ぶ)」〜
- “つまずき”を自覚させるなかで,思いや願いの強さを育む 〜1年「ダンボール王国であそぼう(つくって遊ぶ)」〜
- 問いの深化を支える学習の組み立て
- 表現する喜びを感じる《音楽科》
- 表現する喜びを感じること
- 表現する喜びを感じる問いの深化
- 素材と自分自身の接点を見いだす 〜3年「昔話に音楽をつけよう(吉四六さんの天のぼり)」〜 〜6年「合唱の響きを味わおう(Dream Dream)」〜
- 自分の表現に不満足さを感じる
- 自己の表現とは異なったものと出合う
- 相手に伝えるという意識をもつ
- 表現する喜びを感じる学習の構想
- 想を深めながらつくることを楽しむ《図工科》
- 想を深めながらつくることを楽しむこと
- 想を深めながらつくることを楽しむ問いの深化
- 思いの膨らみ 〜3年「発砲スチロールをチュルチュル切って,つないで,ヘンシンさせよう(つくりたいものをつくる)」〜
- 願いのぶつかり合い 〜2年「ビー玉ジュピターをつくろう(つくりたいものをつくる)」〜
- 自分の動きを進んで高めていく《体育科》
- 自分の動きを進んで高めていくこと
- 自分の動きを進んで高めていくための問いの深化
- 問いの深化は,全員参加をめざすルールづくりが創りだす 〜2年「トルネードゲーム(的当てゲーム)」〜
- 問いの深化は,めざす動きへのつまずきの状況が創りだす 〜4年「忍者らしく回転して跳び越す動きを作ろう」〜
- 和やかな家庭生活をつくりだす《家庭科》
- 和やかな家庭生活をつくりだすということ
- 和やかな家庭生活をつくりだす問いの深化
- みんなに喜ばれるチーム旗を 〜5年「楽しさいっぱいのにこにこワッペンを作ろう」〜
- 見直しの契機をつくる活動
- 和やかな家庭生活をつくりだす学習の構想
- 心をゆり動かす《道徳》
- 心をゆり動かすこと
- 心をゆり動かす問いの深化
- 考えの違いが創りだすもの 〜6年「信じ合う心で(ニコラスとウエーク)」〜
- 心をゆり動かす教室状況 〜2年「こまっている友だちを助けよう(どんぐり)」〜
- 心をゆり動かす学習の構想
- 問い続け学ぶ力を育むためのくらしづくり 〜くらしに根付く活動と学習とのかかわり〜
- ふれあい活動
- ふれあい活動の時間(ふれあいタイム)の役割と意義
- ふれあい活動の展開
- 運動表現的活動(第1学年)バトンを動かし,上手になる喜びを感じる
- 運動表現的活動(第2学年)速い動きに揃える動きづくりに挑戦する
- 絵画表現的活動(第3学年)グループで思いをぶつけあい表す絵づくりのなかで
- 合唱表現的活動(第4学年)歌声の響き合いから友だちのよさを感じる
- 飼育栽培的活動(第5学年)やぎと共に生きる
- 合唱表現的活動(第6学年歌声作りで,互いの心を響き合わせる
- 特別活動
- 特別活動の意義と位置づけ
- 特別活動の展開
- チームを母体とした心のふれあい 〜「チームリレー」は1年間を通したチーム活動となりえたか〜
- 「ふれあい祭り」をつくる心の通い合い 〜「子ども天国」の復活はできるか〜
- チーム成員としての自己の責任と判断でやり遂げる喜び 〜郊外に飛び出すチーム仲良し探検は実現できたか〜
- あとがき
序文
子どもの育ちに見過ごすことのできない重大なゆがみが生じているのではないか,という声が,現在,社会の各方面から噴出しています。口先だけ達者な小利口さ,虫や小動物などに対する共感を欠いた残酷さ,自分だけの世界に閉じこもってしまいがちな内閉性,困難なことに出合うとすぐに投げ出してしまう精神的虚弱さ等々です。この一部は,いじめや不登校,怠学や日常生活の乱れ,などとしても現れています。しかし問題は,「優等生」を初めとした「普通の」子ども,特別な問題を抱えていないように見える子どもにも,そうした弱さが如実に見られることです。こうした点については,親も,地域で子どもの指導に当たっている人も,そして当然のことながら学校の教師も,子どもの現実の姿にどこか不安を覚えているのではないでしょうか。
物質的に豊かになり,生活が便利になり,望むまま要求が満たされるのが当然視される社会になり,そうした中で親の過保護過干渉を通じて大きくなってきた子どもたちです。基本的な体験が少なく,能動性主体性に乏しく,自己統制力が弱く,自己中心的な感覚が強い,といった形で形容されるのも仕方ない面を,現代の子どもたちの多くは示しています。「心の教育」をしなくては,「生きる力」を育てなくては,「新しい学力観」に基づく教育実践を工夫しなくては,と教育界で強く言われているのは,当然のことでしょう。
こうした状況の中で,大分大学教育学部附属小学校が本書をまとめて世に問われました。真に<生きる〉子どもを育てようとして取り組んでこられた研究と実践の報告です。<生きる〉力を高めるためのカリキュラムが工夫され,各教科の授業に創意がこらされ,「ふれあい活動」と名付けられた特別な時間が設けられています。本書の刊行は,子どもの育ちに重大な問題が見られる今,これからの具体的な実践方策を示すものとして,大きな意味を持っています。
もちろん,学校だけで子どもの育ちのゆがみを是正できるものではありません。しかし,学校がまず率先して取り組まなくては,新しい時代に相応しい,能動的で自己責任の感覚に満ちた精神的にたくましい存在へ,子どもの育ちを支え,援助していくことはできないでしょう。本書の刊行をきっかけとして,物質的豊かさや技術的利便性に負けない精神力と自立性を持った人間へと子どもが成長していくことを目指す教育が,全国各地で広く実践されていくことを望みたいと思います。
京都大学教授・文学博士 /梶田 叡一
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- 明治図書