- はじめに
- 1章 時短な上に効率的な授業準備術
- 01 年度初め 年間指導計画作成は最短時間で
- 02 準備ほぼ0でワクワク授業開き
- 03 年間指導計画に1列加える
- 04 教師用指導書のデジタル教材を活用する
- 05 場面絵のカラープリントは導入で使える
- 06 場面絵のカラープリントを提示してアドバイス発問へ
- 07 終末で使うワークシートを1枚準備する
- 08 登場人物のイラストを準備する
- 09 日々の授業では指導略案をさらにシンプルに
- Column 1 道徳教材づくりのススメ
- 2章 退屈さとは無縁の授業になる指導技術
- 01 「価値への導入」の功罪
- 02 「資料(教材)への導入」へシフトせよ
- 03 「気持ちを問う発問」の功罪
- 04 「行為を問う発問」へシフトせよ
- 05 これは一級品! 俯瞰的発問
- 06 ハッピーエンドの資料で俯瞰的発問を
- 07 悲しい結末の資料でも生徒指導でも使える俯瞰的発問
- 08 「自己を見つめる場面」をどうするか
- 09 終末は説話よりも余韻を大事にする
- 10 幸せな結末へ
- Column 2 メタ・価値への導入
- 3章 つまらない教材を価値ある教材にする教科書活用術
- 01 資料(教材)が悪いのではない
- 02 「基本型」と呼ばれる指導過程 その意図
- 03 「教科書+教師用指導書のセット」を自分流にアレンジ
- 04 「偉人やアスリートの教材」はこの発問でブラッシュアップ
- 05 「悪い子・ダメな子」が登場する教材で長所さがし
- 06 発問づくりは「矛盾」に注目
- 07 授業のユニットをつくる
- 08 伝えるだけでいい教材もある
- 09 教科書を導入用または終末用に使う
- 10 教科書だけで無理に引っ張らない
- 11 実話でさらに考えてみる
- 12 「生命の尊さ」の授業に一休さんの言葉を
- 13 「いじめの四層構造」の図を準備する
- Column 3 資料と教材
- 4章 マンネリを打破するオリジナル教材活用術
- 01 オリジナル教材で手ごたえを実感しよう
- 02 この絵本1冊あればいい(1)『ありがとうのえほん』
- 03 この絵本1冊あればいい(2)『とうふこぞう』
- 04 ダンボに学ぶ〜偶然をチャンスに変える生き方〜
- 05 「日本一短い手紙」でつくるハートフル道徳授業
- 06 用紙(白紙)1枚あればいい「夢は大きいほうがいい?」
- 07 チョーク1本あればいい「『勇気の缶詰』買いますか?」
- Column 4 単発でできるのも道徳のよさ
- 5章 一番忙しい時期をスマートに乗り切る評価所見作成術
- 01 まずは確認 道徳科の評価
- 02 指導要録を意識した通知表所見を書く
- 03 評価所見作成の心得
- 04 記録(文字)と記憶(板書写真)に残す
- 05 通知表所見 実例(1)教材別に書く
- 06 通知表所見 実例(2)テーマ(内容項目)別に書く
- 07 通知表所見 実例(3)学びのタイプ別に書く
- 08 通知表所見を指導要録へつなげる
- Column 5 通知表と指導要録の同時進行にチャレンジ
- 6章 本物の働き方改革 道徳授業づくりは学級づくりそのものである
- 01 意見のつなぎが心をつなぐ
- 02 温かい雰囲気で実感する
- 03 道徳授業が“働き方を改革”する
- おわりに
はじめに
本当は,もっと楽しい道徳の授業をしたい ―。
そう思っている教師は,たくさんいます。でも,思っているだけでは何も変わりません。楽しい授業をするためには,それを実現させるための準備が必要です。教材分析に発問・指示,授業展開と板書計画……。授業の準備は多岐にわたります。
準備をするには,当然のことながら時間が必要です。ところが,学校現場は相変わらず多忙を極めています。働き方改革で定時退勤を半ば強制的に勧められても,自宅への持ち帰りの仕事が増えてしまったのでは意味がありません。
楽しい道徳の授業をしたい。
でも,授業の準備をする時間がない。
時間がない状態を改善するには,限られた時間で効率よく授業の準備ができる術を知っておく必要があります。それは,教材分析の着眼点だったり,発問づくりの手法だったり,指導過程を構想するための知識だったりします。
さらに,年間指導計画の作成や通知表と指導要録への評価所見の記載など,授業準備の他にもやらなければならないことが待ち構えています。授業準備の時間を確保するためには,これらの業務が負担にならないように可能な限り“時短&効果的”にこなさなければなりません。
私はこれまで,学級担任を25年間,教務主任を4年間,教頭を3年間,校長を5年間務めてきました。すべて公立小学校勤務です。ですから,学校現場の忙しさは重々承知しています。でも,本音を言えば,多少学校を出る時刻が遅くなったとしても,帰宅してからあれこれ授業のことを考える時間が必要になったとしても,教師自身が翌日の道徳が楽しみになるような万全の準備をして授業に臨んでほしいと思っています。
けれども,それはある程度のキャリアを積んでからの話になるのかもしれません。前述したように,まずは,業務軽減の術を身につけるべきです(それをしないで日々の業務にあたるのは,無防備です)。
本書のタイトルは,「退屈な道徳にさよなら 道徳授業がおもしろくなる技術」です。
教師も子供も本気にならない退屈な道徳と決別するためには,楽しい道徳をすることです(これ以外にありません)。でも,学校現場の多忙化解消は,「働き方改革」の旗振りからは大きな効果が見られません。結果,教科書教材だけを使って,「教師用指導書」に書かれている展開例通りに行われる“やればいい道徳”が蔓延しています。
道徳の教科化の第一義的な目的は,授業の量的確保―道徳授業がすべての学級で確実に実施されること―でした。これは,ほぼ達成されています。けれども,授業時数が確保されればよいわけではありません。もし,退屈でつまらない道徳授業が毎週行われたのなら,それは子供たちにとって不幸なことです。
道徳授業を毎週行っている先生方に,最も効果的に道徳授業をおもしろくする方法を伝えたい。そして,子供たちに「道徳っておもしろい」と感じてほしい。そんな願いを込めて,私はこの本を書きました。
そのためには,何をどう変えていけばよいのか。本書では,その〈技術〉を全6章に分けて具体的な実践例と共に述べました。まずは手始めに,効率性も意識しながら退屈ではない道徳授業を実施してください。その先にあるのは,自分らしい楽しい道徳授業の創出と子供たちの笑顔です。
2024年8月 /佐藤 幸司
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- 明治図書
- 通常の道徳科授業をどのように工夫すればよいかが分かりやすく書かれています。短時間で効率的な方法のため,誰でも取り組みやすい。2024/10/550代・小学校教員