- はじめに
- Chapter1 中学3年「知識&技能」の教え方ガイド
- 1 全国学力・学習状況調査では,「知識・技能」をどう測っているの?
- 2 指導事項を効果的に理解させるには,どうしたらいいの?
- 3 「話す活動」で終わっていいの?
- 4 説明したら,生徒は理解しているの?
- 5 既習の「知識及び技能」に課題が感じられたら,どうしたらいいの?
- 6 コミュニケーションの中で,「知識及び技能」の定着を目指すには?
- 7 英語の発想法をどう教える?
- 8 文脈を伴わせる意味は?
- Chapter2 「音声」の教え方ガイド&ワーク
- 1 発音表記を参考に,音素を区別して発音する
- 2 単語の正しい発音を理解し,正確に発音する
- 3 フラッピングを用いた英文を聞いて,音声がわかる
- 4 適切な場所で,自分で区切って音読する
- 5 世界には様々な英語があることを知っている@
- 6 世界には様々な英語があることを知っているA
- 7 メモをとって,情報を正しく取り出す
- 8 スピーチやプレゼンで,意味のまとまりで区切る
- Chapter3 「語彙」の教え方ガイド&ワーク
- 1 音素の正確な理解を確認する
- 2 接頭辞を理解し,単語の意味を推測する
- 3 接尾辞を理解し,単語の意味を推測する
- 4 表現できないことを,他の言い方で,言い替える
- 5 反意語で,語彙のネットワークを広げる
- 6 同意語で,語彙のネットワークを広げる
- 7 数えられない名詞を数える
- 8 実際のコミュニケーションにおいて,語彙を活用できる力
- ワークシートの解答
- Chapter4 「文法」の教え方ガイド&ワーク
- 1 現在完了@完了 肯定文
- 2 現在完了A完了 疑問文・否定文
- 3 現在完了B経験 肯定文・疑問文・否定文
- 4 現在完了C継続 肯定文
- 5 現在完了D継続 疑問文・否定文
- 6 現在完了進行形 肯定文・疑問文・否定文
- 7 tell/show+人+that ... 「人に…を教える」
- 8 間接疑問文 I’ll show you how we do.
- 9 現在分詞の前置・後置修飾
- 10 過去分詞の前置・後置修飾
- 11 関係代名詞@ 主格 that
- 12 関係代名詞A 主格 who/which
- 13 関係代名詞B 目的格 that
- 14 関係代名詞C 目的格 who(m)/which
- 15 原形不定詞 make/help/let+人など+動詞の原形
- 16 仮定法@ if ...
- 17 仮定法A I wish I ...
- ワークシートの解答
- 付録 「単語の活用形」ワーク
- 1 名詞の複数形(数えられる名詞)
- 2 名詞の複数形(数えられない名詞)
- 3 3人称単数現在形
- 4 現在進行形
- 5 過去形(規則動詞)
- 6 比較級・最上級
- 7 不規則動詞の変化表
- 付録ワークシートの解答
はじめに
外国語学習の目標は,コミュニケーション能力を育成することである。母語の異なる者同士が,意思疎通を図るために外国語を用い,互いの考えや気持ちを伝え合う。そのための外国語学習である。
よく,「通じればよい」と言う人がいる。単語を並べ,ジェスチャーや表情で伝えれば,お互い人間なので,相手の思いを理解することはできる。それも立派なコミュニケーション能力である。
しかし,「通じればよい」というのは結果論であって,コミュニケーション能力にも段階があると考える。「通じればよい」という段階から,「日常的な話題について,簡単な言葉で伝える」「様々な話題について流暢かつ正確に話せる」「専門的な話題について母語話者と対等に議論ができる」などの段階があるはずである。最初は,「通じればよい」段階でもよいが,学習が進むにつれ,正確な言語使用,適切な言語使用を目標にし,より高度なコミュニケーション能力を目指す。むしろ「通じればよい」というのは,小学校3年生,4年生での話と考える。
小学校第3学年及び第4学年の外国語活動の目標は,「コミュニケーションを図る素地」である。その段階は,とにかく,単語や語句,表現を用いて,自分の思いを伝えようとする態度を育てることが大事だ。しかし,小学校第5学年及び第6学年の外国語になると,「コミュニケーションを図る基礎」となり,言語材料の習得を図りながら,言語使用を行わせる。学習指導要領にも,「(2)に示す事項については,(1)に示す事項を活用して,例えば,次のような言語活動を通して指導する」とあり,「思考力,判断力,表現力等」は,「知識及び技能」を活用して言語活動を行うのである。決して,単語を並べ,ジェスチャーや表情で伝え合うレベルのことを言っているのではない。 ちなみに,ヨーロッパ言語共通参照枠(CEFR)では,コミュニケーション能力の段階を6つに分けている(表参照)。
(表省略)
さて,よりよいコミュニケーション能力に育てるためには,どうしても「知識及び技能」が必要である。水泳であれば,泳ぎ方を教えずに,水の中にいきなり入れても上手に泳げない。バレーボールであれば,レシーブの仕方を教えずに,試合をさせてもうまくレシーブできない。必ず最初に,最低限必要な「知識及び技能」があるのである。
そう考えると,現在の英語教育でも,改めて「知識及び技能」の指導は大切だと考える。「言語活動を通して」という言葉から,言語活動を重視する傾向があるが,「知識及び技能」と「思考力,判断力,表現力等」を行ったり来たりさせながら,身に付けるべきことはしっかり身に付けさせることが,やはり大事なのではないだろうかと思うのである。
中学校英語の「知識及び技能」は,@音声,A符号,B語,連語及び慣用表現,C文,文構造及び文法事項,の4項目である。これらの「知識及び技能」の指導事項を押さえ,身に付けさせ,確かなコミュニケーション能力を育てていく。
また,「知識及び技能」には,学年別の指導事項はない。3年間を通して指導することとなっている。しかし,生徒の学習状況をイメージした際,「各学年でここまでは指導したい」「ここは押さえたい」「ここは指導できる」ということが推測され,本シリーズで,3つの学年で分けてみた。
もちろん,学年を跨ぐ指導事項も当然ある。「2年生に入っているが,ぜひ1年生でこれを身に付けさせたい」という内容もあるだろう。どうか3巻を眺めていただき,「知識及び技能」の指導の系統性を,先生方の中で,つくり上げてもらえれば幸いである。
なお,Chapter2以降の「評価基準」の「十分に」とは8割以上,「概ね」とは約6割〜8割の習得状況を指す。
2024年2月 /瀧沢 広人
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- 明治図書