- まえがき
- 第1章 自己調整学習と出会う
- 自己調整学習・自由進度学習とは
- なぜ今、自己調整学習なのか
- 学校教育が直面している課題
- 1 特別な支援を必要とする児童生徒
- 2 教育格差
- 注目されているわけ〜2021年答申より〜
- 個別最適な学び
- 協働的な学び
- 「観」のアップデート
- 「観」の自覚
- 1 教育観
- 2 子ども観
- 3 学校観
- 4 教師観
- ぶれない「観」をもつ
- 第2章 自己調整学習、始めてみた
- 自己調整学習に迫る
- 学習者目線で捉える
- 0 自分の心理面を見つめる
- 1 学習環境の自己調整
- 2 学習内容の自己調整
- 3 学習方法の自己調整
- 自己調整学習を行う際の3つの段階
- 1 「見通す」段階
- 2 「実行する」段階
- 3 「振り返る」段階
- 具体的な自己調整学習の授業づくり
- 「自己調整タイム」の導入
- 授業づくりの留意点
- 1 自己調整タイム(活動時間)の確保
- 2 段階的な導入
- 3 スモールステップでの指導
- 4 教師による支援
- 1時間の自己調整学習:授業例
- 例1:第2学年 国語「どんなおはなしかをたしかめて、音読しよう」(光村図書)
- 例2:第5学年 算数「平均とその利用」(啓林館)
- 自由進度学習へ
- 第3章 まずはここから HOP!自由進度学習
- 自由進度学習に迫る
- 自由進度学習:3つの型
- 1 課題選択型
- 2 時間設定型
- 3 目標設定型
- 自由進度学習の導入
- 子どもたちの「やってみたい」を引き出す
- 心に火を灯し続けるための動機づけ
- 1 外的刺激がなく、自分の意志が全く働いていない状態
- 2 外的刺激が強い状態
- 3 外的刺激が弱い状態
- 4 外的刺激がなくても、自らの意志が強く働く状態
- 「計画」と「振り返り」が相乗効果を生む
- 子どもたち目線の計画と振り返りの価値
- 1 計画についてのアンケート結果
- 2 振り返りについてのアンケート結果
- 自由進度学習 1時間の基本的な流れ
- 自由進度学習の実践
- 社会科での実践
- 第5学年 社会「世界の中の国土」(東京書籍)
- 国語科での実践
- 第5学年 国語「物語の全体像を想像し、考えたことを伝え合おう」(光村図書)
- 単元進度表
- 作成のポイント
- 1 学習目標や評価の明確化
- 2 時間配分の計画
- 3 学習の順序や流れの見極め、多様な学習活動
- 4 関連性を意識
- 5 余裕をもった計画
- 実際の単元進度表
- 時間がないときの単元進度表
- 第4章 一人ひとりが育つ STEP!自由進度学習
- 単元内自由進度学習を安定させる土台づくり
- 環境設定
- 1 「場」の環境設定
- 2 「物(ツール)」の環境設定
- 3 「人」の環境設定
- 見通しの重要性
- 1 導入の工夫
- 2 ワークシート
- テストの分析と振り返り
- 保護者との連携
- 教師の関わり方が明暗を分ける〜伴走〜
- 子ども一人ひとりの思いや願い
- 1 ワークシート
- 2 コース設定
- 個別支援の見極め
- 語りと問いかけ
- 単元内自由進度学習の実践
- 第5学年 社会「低い土地のくらし」「高い土地のくらし」(東京書籍)
- 第5章 さらに広がる JUMP!自由進度学習
- 「自由」の可能性を広げる 複数単元・複数教科での実践
- 2単元以上の自由進度学習
- 第6学年 社会「今に伝わる室町文化・戦国の世から天下統一へ」(東京書籍)
- 第6学年 社会「江戸幕府と政治の安定・町人の文化と新しい学問」(東京書籍)
- 「学び飛ばし」を防ぐ
- 1 ミニテスト実施を設けるパターン
- 2 チェックポイントを設けるパターン
- 3 学びの共有場面を設けるパターン
- 複数教科での自由進度学習
- 第2学年 国語「町の『すてき』をつたえます」(教育出版)/生活「わたしの町はっけん」(大日本図書)
- 第5学年 国語「あなたは、どう考える」(光村図書)/社会「情報産業と私たちのくらし」(東京書籍)
- 複数教科実践のメリット・デメリット
- 1 メリット
- 2 デメリット
- 子どもたちの「自走」を生む
- 魅力あるゴール設定
- 1 楽しい系「魅力あるゴール」
- 2 力が付く系「魅力あるゴール」
- テストを受けるタイミング
- 自由進度学習のその先へ
- 事前準備
- 1 単元進度表づくり
- 2 週計画表づくり
- 3 ワークプリントづくり
- 授業中
- 1 教師
- 2 子どもたち
- 第6章 学級経営にも自己調整を取り入れる
- 学級経営の中にも自己調整の視点を!
- 宿題で自己調整
- 係活動で自己調整
- 日常生活で自己調整
- 席替えで自己調整
- 第7章 自己調整学習&自由進度学習Q&A
- 自己調整学習では、子どもたちにどのような言葉かけをしていますか?
- 計画・振り返りのルーブリックは、どのようなものがありますか?
- 自己調整学習(自由進度学習を含む)は、どの学年でもできますか?
- 自己調整学習(自由進度学習を含む)は、どの教科でもできますか?
- この実践を、私の学級だけで取り入れてもよいのでしょうか。不安です。
- 自由進度学習で授業を進めると、時数の短縮になると聞きました。
- 友達コースにいるのに、ただ一緒にいるだけなのはよいのでしょうか。
- 「先生コース」のデメリットはあるのでしょうか。
- ワークシートには、どのような内容を入れているか教えてください。
- あとがき
- 引用・参考文献一覧
まえがき
コロナ禍の下、全国一斉臨時休業があってから4年もの月日が経ちました。急に奪われた、時間・空間・仲間。言葉にできない恐怖や不安。暗雲立ち込める日常生活を送っていたことは、その当時現場で奮闘していた我々には、今後も風化しない記憶なのではないでしょうか。
その頃の教育界は、官民学一体となって「学びを止めない!」を合言葉に、プリント学習やオンライン授業、分散登校……と、様々な面から子どもたちに学びの場を提供してきました。
教職員の学びの場も変容し、オンライン上の学びの場が多く立ち上がりました。今までは講演会に行かなければお話をうかがえなかった教育界を代表する著名人の方々との距離が縮まり、遠くへ行かなければ出会えなかった全国各地の先生方ともつながれるようになりました。
そのようなポジティブな変化があった時期でもありますが、「学びを止めない!」という言葉を聞いたとき、私はこう思いました。
子どもたちの学びを止めていたのは、コロナではなく、
私たちなのではないだろうか。
どうにかして手綱を握り、子どもたちを導くことをベターとする現場に蔓延する教育観は、子どもたちの、意欲的で豊かで希望に満ちあふれた芽を刈り取っていたのではないかと思うのです。
もちろん、私自身も例外ではありませんでした。自分の手中に収めているほうが、管理しやすいですし、教師側からすれば“安心”します。
教師には多くのことが求められ、仕事は山積。帰宅時刻も遅くなる毎日の中では、「できる限りトラブルがないように」という考えになるのは当然です。歪な安定を求めていました。
そんなとき、日本の教育を揶揄した有名な風刺画を目にしました。
その風刺画では、前を向いてイスに座る子どもたちの“まるい”考えを、大人がハサミで“しかく”に形を整えていました。
「人はみんな違って当たり前」なのにもかかわらず、そのような「みんな一緒」を求めている自分にハッとしました。
それからというもの、子どもたちが自らの力を発揮できる方法を模索してきました。特に学習面において、現状行き着いているのが自己調整学習です。
本書では、自己調整学習やその手法の1つである自由進度学習について、ストーリー形式を踏まえて紹介をしています。自己調整学習が初めての方にはスタートブックとして、既に実践をされている方には、実践を見つめ直したいときや困ったときなどに振り返れるサイドブックとして活用していただける1冊になればと考えました。
コロナ禍が明けてからも、不安定な国際情勢や世界経済の停滞、国際的分断の進行の懸念の高まり、我が国の研究力の低下が指摘されている現代だからこそ、一斉授業ではない授業方策の先に何が見えるのか、一緒に探っていこうではありませんか。
本書を手にした方々の学びが、またここから始まっていき、目の前の子どもたちが生き生きと自分の学びをデザインしていけることを願っています。
/栗田 潤平
-
- 明治図書