- はじめに
- 第1章 「発問」のデザイン ゼロからわかる発問の考え方とポイント
- 1 「発問」の考え方と4つの機能
- 1 「発問」とは何か,あらためて立ち止まる
- 2 発問の4つの機能
- (1) 思考を始動させる
- (2) 見方や考えの多様化を生む
- (3) 学習の道しるべになる
- (4) 子どもの問いを育てる
- 3 発問の4機能と「学びを動かす力」
- 2 発問づくりの基礎基本
- 1 「基礎」と「基本」は何が違うのか?
- 2 発問の「基礎」とは
- (1) 発問の機能を理解する
- (2) 発問のパターンと構造を理解する
- (3) 教材研究と学習目標を照合する
- 3 発問の「基本」とは
- (1) 子ども理解を土台に発問を構想する
- (2) 授業の流れに応じて問いを位置づける
- (3) 発問を伝える「技術」を磨く
- 4 “問いをつくる”とは,“問いの根と幹をつなぐ”こと
- 3 発問づくりの5つのステップ
- 1 問いを「感覚」から「構造」へ
- 2 教科と子どもをつなぐ問い
- 3 5つのステップ
- ステップ1 ねらいを見極める
- ステップ2 子どもをイメージする
- ステップ3 何を問うかを定める
- ステップ4 問い方を決める
- ステップ5 授業の流れを組み立てる
- 4 問いは,“この子”と“社会”をつなぐ編集のまなざし
- 第2章 「発問」のデザイン 国語科編
- ―多様な子どもと,ともに学ぶ国語授業
- 1 「国語科」の教材研究と発問デザイン
- (1) 国語科の役割
- (2) 国語科の指導内容
- (3) 教材研究と発問デザイン
- 2 国語科の発問の工夫と授業デザイン
- (1) 「多様性を包摂する」拡散的な発問
- (2) 「学びを明確にする」収束的な発問
- 3 3年「こまを楽しむ」(光村図書)の発問&授業展開プラン
- (1) 単元構想と発問デザイン
- (2) 授業展開モデル(第2次第4時)
- 4 2年「スーホの白い馬」(光村図書)の発問&授業展開プラン
- (1) 単元構想と発問デザイン
- (2) 授業展開モデル(第2次第7時)
- 5 おわりに
- 第3章 「発問」のデザイン 算数科編
- ―バラバラの知識がつながる〜統合・発展を促す単元を通した発問〜
- 1 「算数科」の教材研究と発問デザイン
- (1) 個別の知識をより汎用性の高い知識へ
- (2) 「死んだ知識」を「生きた知識」へ
- (3) 1から100を創り出す創造力を育てる
- 2 算数科の発問の工夫と授業デザイン
- (1) 抽象度が変わる場面を見定める
- (2) 思考や判断のもとを問い,統合を促す
- (3) 知識を「適用」し,範囲を広げる
- (4) 方向を定める「大きな発問」,個に寄り添う「細かな発問」
- 3 6年「ならべ方・組み合わせ方」発問&授業展開プラン
- (1) 単元構想と「大きな発問」のデザイン
- (2) 指導の実際
- (3) 「細かな発問」の構え
- 第4章 「発問」のデザイン 理科編
- ―理科は,子どもが問題を見いだし,問題を解決する教科
- 1 「理科」の教材研究と発問デザイン
- (1) 問題を科学的に解決する
- (2) 問題解決の力とは
- (3) 問題を科学的に解決するプロセスとは
- (4) 問題を見いだし,表現すること
- (5) 学年が進むにつれて問題を見いだす力はついてくる
- (6) 問題を見いだすための教材研究
- 2 理科の発問の工夫と授業デザイン
- (1) 「問題を見いだす」ことの大切さ
- (2) ズレが生じる授業デザイン
- 1 モノとモノを比較することで生じたズレを生かす
- 2 時間が経った後に生じたズレを生かす
- 3 想定とのズレを生かした授業デザイン
- 4 予想や仮説など考えのズレを生かす
- 5 うまくいかないを解消する授業デザイン
- 3 発問&授業展開プラン
- (1) モノとモノを比較することで生じたズレを生かす
- ―3年「身の回りの生物」
- (2) 時間が経つことで生じたズレを生かす
- ―3年「太陽と地面の様子」(日陰の位置と太陽の位置の変化)
- (3) 想定したことと実際とのズレを生かす
- ―5年「振り子の運動」〜振り子ボトルでアトラクションをつくる!〜
- (4) 予想や仮説などのズレを生かす
- ―4年 「電流の働き」(回路を流れる電流の向きや大きさ)
- (5) うまくいかないを生かす
- ―4年 「天気の様子」(天気による一日の気温の変化)
- (6) 知っていることとのズレが次々に起こり,連続して問いが生まれる
- ―6年「水溶液の性質」(金属を変化させる水溶液)
- 第5章 「発問」のデザイン 社会科編
- ―問いが社会とつながる授業
- 1 「社会科」の教材研究と発問デザイン
- (1) 獲得したい概念を見据える教材研究
- (2) 教材を“問いのタネ”として読み直す
- (3) 「この子に響くか?」という想像力
- (4) 教材研究は「問いの編集」である
- 2 社会科の発問の工夫と授業デザイン
- (1) 「問いの扱い方」が授業を変える
- (2) 発問の“タイミングと構え”を設計する
- (3) 問いの“主導権”を子どもに手渡す
- (4) 教室にレンズを置くということ
- 3 4年「焼き物のまち丹波篠山市」発問&授業展開プラン
- (1) 単元構想と発問デザイン
- @単元のねらい―地域の学びを「人」との出会いへ
- A教材化の過程―人の営みに光を当てる
- B発問のデザインにおける三つの視点
- (2) 「焼き物を生かしたまちづくり(丹波立杭焼)」授業展開モデル
- (3) 本授業の具体と発問
- おわりに
- 執筆者一覧
はじめに
前著『「発問」のデザイン 子どもの主体性を育む発想と技術』では,発問をめぐる歴史や思想,よい発問の条件,分類や組織化,さらには子どもの問いや学習者主体の授業まで,発問という営みをできるだけ広く,根本から捉え直そうとしました。そこでは,発問を単なる授業技術としてではなく,子どもの学びを動かす思想と技術として描こうとしました。
しかし,前著を形にしたあと,私の中にはもう一つの問いが残りました。
それは,「では,実際の教科の授業の中で,発問はどのように働くのか」という問いです。
前著では社会科を中心に,国語や算数の事例にも少し触れました。しかし,それだけで各教科における発問の働きを十分に描けたとは言えません。
そこで本書では,それぞれの教科の第一線で実践・研究されている先生方に執筆をお願いしました。各教科の授業の中で,発問がどのように生まれ,どのように子どもの学びが動いていくのか。その具体を描きたいと考えたことが,本書執筆の出発点です。
今,私は大学で学生たちと授業をしています。とくに社会科教育法では,模擬授業を中心にしながら,子どもにどう教えるかを学生たちと一緒に考える時間を大切にしています。すると,学生たちが強い関心を寄せるのは,教科内容そのものだけではなく,「どう学ばせるか」「どう授業を組み立てるか」,そして何より「どう問うか」ということでした。
学生の振り返りを読んでいても,発問へのまなざしはとても鋭いものがあります。教師の「なぜ?」「どうして?」という一言で,自分の見方が変わったこと。暗記だと思っていた教科が,考える教科として立ち上がってきたこと。そうした気づきが,何度も言葉になって返ってきました。
そのことを,私は社会科教育法の教室だけでなく,ゼミの時間にも感じています。先日,ゼミ生たちと和泉市久保惣記念美術館を訪れました。大学のすぐ近くに,モネやゴッホ,ルノワール,ロートレックがあり,北斎や広重,武蔵にも出会える。そう考えるだけでも,なんとも豊かな環境です。けれど,その日,私の印象にいちばん残ったのは名画そのものだけではありませんでした。作品の前で立ち上がる,学生のまなざしでした。
ある学生が,広重の作品を見て「なんか,誠実な気がするんです」と言いました。私はその言葉に,はっとしました。うまい,きれい,迫力がある,ではなく,「誠実」。その学生は,広重の線のあり方の中に,描き手の姿勢のようなものを感じ取っていました。さらに,《名所江戸百景 猿わか町夜の景》を見ながら,江戸の街の華やかさの奥にある人間の孤独や,誰かに認められたい,愛されたいという思いにまで想像を広げていました。
同じ作品を前にしていても,見えているものは同じではありません。
ある人は構図を見る。ある人は色を見る。ある人は技術を見る。ある人は時代を見る。ある人は人々の視線を見る。ある人は月を見る。そして,ある人は「誠実さ」を見る。
そのとき私は,問いとは,教師が用意して与えるものだけではないのだとあらためて思いました。目の前のものごとに出会ったとき,人の内側からふいに立ち上がってくる「なぜだろう」「どう見えるのだろう」「自分にはこう感じられる」という動きがある。よい学びとは,そうした学ぶ側のまなざしに,教師の問いが出会い直していくことなのだと思います。
おそらく,発問には,教師が思う以上に大きな力があります。それは答えを引き出すための技法というより,子どもの見方を開き,思考をつなぎ,学びの質を変える“節”のようなものです。しかし,その働き方は教科によって異なります。国語で生きる問いと,算数で生きる問いは違います。理科の問いと,社会科の問いもまた違います。だからこそ,理論の次には,教科の中で発問がどう息づくのかを描く〈実践編〉が必要だと考えるようになりました。
第1章では,発問の基本的な考え方と構造を整理しました。そのうえで,第2章以降では国語・算数・理科・社会の各教科において,発問が授業の中でどのように働くのかを具体的に描いています。
本書では,発問を一つの正解に収束させるためのものではなく,各教科の本質と結びついた授業デザインとして見つめ直したいと考えています。
各章には,教科らしさと執筆者それぞれの実践の息づかいが込められています。本書が,読者の方々にとって「問いから授業を考える」新たな手がかりとなれば幸いです。
/宗實 直樹
-
明治図書















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